見出し画像

モラトリアム

そこに踏み入る勇気がなかった
ぐずぐずしていたら 違う路を歩くことになってしまった
もう君の顔は思い出せない

1番後ろ 1番窓側の席
人気のある席だけど 逃げ場のないところ

夏というには、まだ早く
春というには、もう遅い

チャイムが鳴る中 まだまだ眠い目をこする 
しばらくしてから 君は颯爽と現れた

クーラーをつけるには、まだ早いかなって言いながら
窓に向かう
ゆっくりでもなく早くもない
背が高いから 歩幅が大きい方だったのかもしれない

わずかな間 その独り言のような言葉
その声の心地良さ 一瞬で酔ってしまった
迷い込んでしまった

姿を見たいと起きてみると
窓から入った風が 真っ白いカーテンを舞い上げて君を隠す
不思議と少しの間 君はその場にいた

眠気がまだ残っている それでも十分だった
夢ならば醒めなくても良い
ずっと聞いていたい そう思わせる声

このまま酔っていたいと願う そんな声を持つ
きっと忘れることが出来ない
白いシャツ 黒いパンツ

幻影は必ず消える 
だから時間が過ぎないで欲しいと願い 目を瞑る
路を踏み外したんだろう
理性が吹き飛ばされた 夢現の時間
いつまでも夢の中で見ていたかった その姿

先に進みたい
止まっていたい

最初に願ったのはどちらだったっだろうか
今はもう分からない

いつでもキレイな思い出ばかりを映す 夢の中
また酔いしれてしまう 夢の中でも願ってしまう
醒めなくて良いのだと

再び杯を交わすのであれば
踏み入れた先を知る 次の一歩は軽くなるだろう
踏み入れる足は重く 踏み外すその足は軽い

夢の中では いつまでも続いて欲しいと願い
現実では 終わりを願う

先にも進めず 後にも引き返せない

今度はどちらが窓を開けようか
風が再びカーテンを舞い上げたら
時計の針も酔狂し 夢の中にも風と時間を運ぶだろう

その声ではなく 無音が終わりを知らせる
モラトリアムが 終わるとき
何の音も立てずに 心地良い声は聞こえない


∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽

読んでくだり心から感謝します。 サポートいただけたら、今後の記事に役立てたいと考えております。 スキしてくだるのも、サポートもとても喜びます!!!!