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『たゆたえども沈まず』

やふぅー٩( 'ω' )و
今回は、読んだ本の感想を書きます。

原田マハ著 『たゆたえども沈まず』 (幻冬舎 、2017)




ざっくり内容

本書は、4人がメインで話が進む。
日本人2人、林忠正(画商)とその弟子、加納重吉(架空の人物)。
オランダ出身のフィンセント・ファン・ゴッホとその弟、
テオドルス・ファン・ゴッホ。

フランスに憧れる重吉は、林忠正の後を追いかけるようにフランスに行く。
そこで、林と同じく画商として働いていたテオドルス(テオ)と会い、
4人の物語は進んでいく。

印象派が出てくるも、画商としての生業を勤めるテオの責任。
日本の絵画世界をも見据えている画商、林忠正。

浮世絵に憧れるゴッホ兄弟と、「日本人」である林と重吉。
19世紀のフランスを舞台に、4人が紡ぐアートフィクション。

感想

この本に出会うまで、私は恥ずかしながら「たゆたえども」という言葉を知らなかった。
辞書などで調べたら、ラテン語に行き着いた。
パリの紋章(旗)には、ラテン語でしっかり「たゆたえども沈まず」と書かれている。
美しくも、何度もセーヌ川の氾濫や、革命を駆け抜けてきたパリならではの言葉なんだろう。
最初は、覚えられない&言いづらかったこの言葉が今じゃ好きだ。

ところで、私はパリほど印象的な場所はないと思っている。
今まで行った場所でのベストプレイスは、正直ないというか。
その場所は、その場所にしかないので、どこが1番など、私には答えにくい。
10代の時にパリに行ったからなのだろうか。
どこを見ても、どの視界を切り取っても、絵画のような街並みは印象深い。
これが理由で、第二外国語をフランス語にしたくらいだ(苦労した)

本書では、英国留学への推薦を辞退した重吉に、林が理由をたずねるシーンがある。
その答えが、実に最高。

「……イギリスには、パリがないからです」

原田マハ著『たゆたえども沈まず』(幻冬舎 、2017)、32頁。

そうだよね!!
本を読みながら笑ったけど、私も超絶同感なのである。

改めて、原田マハさんの研究心と、知識量に驚かされる。
さらに、その文章力。
例えば、テオが印象派の絵画を売る時の客の言葉だ。

ーーなんてすてきなんでしょう。この絵を部屋の中に飾ったら、まるでもうひとつ新しい窓ができるようだわ!

前掲書、122頁。

部屋の絵画が、新しい窓になると!?
こんな表現ある?言語のなせる技?当時、こんな風に実際言っていたのだろうか?
この箇所を読んで、今まで悩んでいた絵画を、部屋に飾りたい欲が、
ググーン!!と強まった。
小学生の頃から、絵画を飾るような家に憧れつつ、実際は難しい。
今は、1枚の絵画しか飾っていない(´・ω・`)

フィンセント・ファン・ゴッホの生涯が、この話の時間軸にもなっているので、ゴッホの話は避けられないけど、最近ゴッホの話を結構読んでいるので割愛。

今回は、その弟のテオ。
あまりにも切ないし、苦労が多い。
兄にも負けず劣らずな感じは、壮絶な人生を歩んだ兄を、支え続けていたからだ。
1度、想像したのが、「もし生まれていた時が違えば」だ。
しかし、そうすると今、私たちが見ている絵画は存在しないかもしれない。

これで良かったんだ。
そうか?
それが頭の中で渦巻く。
人の人生や想いは、やはり分からない。

原田マハさんの、『ゴッホのあしあと』を読んで知ったが、本書に出てくる、日本人画商の林忠正さんも実在した人物だ。
アートフィクションといえど、ここまで書けるのは、色んな意味ですごいと思った。
めちゃくちゃ研究している上に、ある意味、勇気のある、小説家だから可能とされる勢いを感じる。

(参照)


私がゴッホの絵画を見て覚える、得体のしれない恐怖心に近いものが、一体なんなのか。
本書を読んで少しわかった(気がする)
フィンセント・ファン・ゴッホには、共感出来てしまうところが、恐ろしいことにいくつかあるからだ。
ぼんやりしていると、同期というか、絵画から感じる狂気じみた感覚や、彼自身の辛さが、自分の中に入ってくるようで怖いのかもしれない。
それでいて、絵画が素晴らしいのだから、やっぱり恐ろしい。

そして、もう1つ。
今も、全然分からないゴッホ。
それでも、1度絵を見れば他に類比させるものがないインパクトを持つ。
これって、シンプルに驚く。
XだのSNSだの、情報過多の現代社会では、いかにして人の目に留めるかが課題の1つだ。
あらゆる情報を秒で忘れていくような、膨大な情報が流れてくる速さの中を、我々は生きている。

それなのに、この情報だらけの2024年でも、ゴッホの絵画を見る人たちは、老若男女問わずに圧倒されている(声がゴッホ・アライブなどで周りから聞こえてきた)
彼の叫びは、今もなお人を魅了するということじゃないか。
単純に、それがすごいと思うのだ。
本気で描いてる人には、時間を超えて本気の対応が跳ね返ってくるわけか。


本書を読んだら、また「ゴッホ・アライブ」に行きたくなってしまった。

史実上の人物と架空の人物。
アートフィクションに抵抗がない方は、1つの読み物としてもおすすめ。
芸術や絵画を愛する者に、国境はない。

好きは国境を越えるんだ!!!!!!!!!!
労苦する芸術家にも、幸あれ!!


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