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車とタバコと真梨子


小さい頃、車に乗ると必ず気分が悪くなった。
わが家の車は5人乗りで、運転席に父、助手席に母、後ろに兄、私、姉と座るのがお決まりだった。兄と姉は年子で、当時はケンカばかりしていた。せまい空間でとなり合うとすぐもめてしまうので、真ん中に私という緩衝材を置いて座ることになっていた。

父はヘビースモーカーで、運転中も絶えずスパスパ吸っていた。カーステレオからは父の好きな高橋真梨子。特に「桃色吐息」という曲が流れるともうダメである。

<♪金色銀色桃色吐息~>
ああきもちわるい。けむりがくさい。しんせんな空気が吸いたい。
窓を開けてと頼むが、両サイドの2人はケンカの真っ最中でいそがしい。私のことは視界に入っていないようである。

<♪あなたに抱かれてこぼれる花になる~>
私の口からも何かこぼれそう~!お父さん!車とめて!
休日のよくある光景だった。

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