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ストレスバケツ

ぶつけた、切れた、折れたなどの痛みの原因となる理由が明確な場合はその原因に対して適切な処置を受ける事は言うまでもないですが、それ以外の明確な原因が見当たらない慢性的な痛みや違和感などはどうでしょう?


アレルギー症状の代名詞とも言える花粉症の発症メカニズムを例える比喩でこんな話を聞いた事がありませんか?「身体の中には花粉の容器があって、その容器が花粉でいっぱいになると花粉症を発症する」それではこの「花粉の容器」があると仮定すれば、この入れ物から花粉が減ったり無くなったりすれば花粉症の症状が軽減したり消失する可能性も考えられます。


「学生時代は花粉症とは無縁だったのに社会人になってから花粉症を発症したが、転職して昔から憧れていた自然あふれる田舎でのスローライフを始めた途端に気がつくと花粉症に悩まされなくなった」友人や親戚にそんな話を聞かされてたら「穏やかなストレスの少ない生活のお陰だろうね」なんて思うのではないでしょうか?

ではこの身体の中の「花粉症の容器」を全てのストレスが入る「ストレスの容器」に置き換えて考えてみましょう。

年齢性別に関係なく、その人の日常の活動に見合った運動能力がなければ、日々の生活自体が身体的なストレスになり得ますし、就職や転職で新しい環境に入り、適応する知識や経験がなければ、精神的なストレスになるでしょう。言い換えれば、ストレスとは神経システムにとっての苦手なタスクです。

上図は、様々なストレスと原因不明な体調不良の関係をバケツとその内容物で表したものです。ここで言う内容物とは「我々の神経ネットワークが苦手とするタスク」なのですが、押さえておきたいポイントが「意識的に苦手と感じるか?」だけではなく、神経ネットワーク内の回路に最適に働けてない部位によって、自覚症状の有無に関係なく、そのタスクが苦手となっている事です。

例えば、壁にかかっている時計の文字を両目で見ている時の明瞭性と片目ずつで見た時の明瞭性に差があったとしましょう。遠近感を正確に認識するには両目から入ってくる情報に差が無い、又は差が少ない事が重要です。片目で階段を登り降りしようとすれば、遠近感が掴みづらいので、自然と動作をゆっくりにして安全を確保することからも、痛みとの神経科学的な関連性は想像できなくても、視覚情報が動作に影響を及ぼす事は想像できるでしょう。

しかし、我々の視覚に左右差があったとしても、脳は膨大な神経ネットワークの中のサブシステムによって、その差を日常的に感じないで済むよう調整してしまうのです、そして膝の痛みの原因が左右の視覚明瞭性の違いであれば、如何なるマッサージも、最先端の器具も、高価なサプリメントも、永続的な改善をもたらす事はできないのです。

表出している「症状」を消す方法ではなく、原因となっている「上手に働けてない回路」を特定して、リハビリやトレーニングによって正常化させる必要があるのです。

如何なるレベルの症状であっても、競技レベルのパフォーマンスの改善であっても「全員、これだけやっておけばOK」などと言う都合の良いものは存在しません。しかし、時間と労力という投資をするのであれば、効率性は重要視する必要があるでしょう。そこで、体の仕組みを司る神経システムの包括的な理解に基づいたアプローチが問題の解決策を見出す糸口となるのです。

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