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【佐竹健のカルトーク】第三夜 DQN高校の話

「DQN高校」と呼ばれている評判の良くない高校が、地域に必ず一つはある。YouTubeの動画では、漫画『クローズ』のように、極端に荒れているような描写がされていることが多い。

 DQN高校と呼ばれているところに通っていた私から言わせてもらうが、実態としては、そこまで荒れていない。たまに窓ガラスを割ったり、人間関係でトラブルになったりする輩が出てくるくらいだ。妊娠や喧嘩で問題になったような人間は、まずいない。ただ、マイルドヤンキーが多いのが実情と言うべきだろうか。

 マイルドヤンキーとは、地元志向が強い若者のこと。80~90年代のヤンキーのように攻撃的なところはあまりない。そのため、校内で気弱な生徒がカツアゲされたり、バイクで登校してきたりするような人間はいなかった。誰かに絡むことはよくあるが。

 DQN高校とひとくくりに言っても、YouTubeなどで語られるそれは、極端な事例というわけだ。

 テストはしっかり高校生仕様にできている。センター試験、大東亜帝国や日東駒専レベルの私大入試ほどの難易度はないが。ただ、高2のときの日本史のテストを除いては。

 そのときの日本史のテストの内容は、こんな感じだ。

「下線部Aの以仁王の読みを答えなさい」

 正解は「もちひとおう」。後白河院の第三皇子で、各地の源氏や反平氏勢力に令旨(正確には御教書)を出し、摂津源氏の源頼政と挙兵した人物だ。彼が出した令旨は、頼朝の挙兵にも大きく関わっている。

 ここで、「以仁王の乱の経緯について説明した文の中で正しいもの(または誤っているもの)を選べ」というものだったら、まだ話は分かる。だが、「読みを答えろ」というのを見たときは、私はとても驚いた。だが、この緩さによって救われていた私もいるので、悪いことは言えないが。

 私の通っていた高校は、周囲の評判は悪くとも、実態としては緩くて平和だった。


 DQN高校で思い出したが、私の住んでいた地域にもそう言われている高校があった。偏差値としては、私の通っていた高校とは6つか7つほど離れていただろうか。

 文化祭があったときに、友達を尋ねにこの高校に入ったことがある。見た感じでは、私の通っていた高校とさほど変わらなかった。だが、そこに通っていた友達から聞いた話があまりに強烈だったので、話そうと思う。

 朝のホームルームだか1限だったかのこと。友達の担任の先生が、まだ学校に来ていない女子生徒を電話で呼び出した。

 電話で先生に呼び出され、女子生徒は応答した。返答した声に混じり、パン、パン、と人肌を打つリズミカルな音。不審に思った友達の担任の先生は、

「○○、お前今どこにいる?」

 怒り口調で、担任の先生は聞いた。

 この質問を受け、回答に困る女子生徒。

 女子生徒が電話に受け答えている間、教室にいた男子生徒は、

「もしかしてだけど、○○今ラブホにいるんじゃね?」

 と答えた。朝から気まずい空気が教室中に広がる。

 話してくれた友達の話によると、このとき担任の先生のスマホ越しに、儀式の音が聞こえたらしい。

「お前今ラブホにいるんか!?」

 まさかラブホにいるとは思っていなかったのだろう。友達の担任の先生は、頓狂な声で問いただした。

 今いる場所がラブホだと担任にバレた女子生徒は、しばらく黙ったあと電話を切ったという。

 このような常軌を逸した人間は、私の通っていた高校にもいた。けれども、ラブホにいるときに担任からの連絡に応じる生徒は、さすがにいなかった(図書館にいますと担任に言った人間ならここにいるが。人のこと言えない)。


 DQN高校には、見た目ですぐにわかるような痛いヤンキーはいない。時々普通の高校生の格好をしていて、とんでもないことをしでかす人間がいるくらいだ。

 もしかしたら、評判の悪さは、時々現れる常軌を逸した人間の所業もあるのかもしれない。

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