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【イベントレポート前編】NEXCHAINオープンセミナー ~これからの環境を考える~持続可能な未来を創る

こんにちは、NEXCHAINです。

2024年2月13日(火)に、「~これからの環境を考える~持続可能な未来を創る」と題し、通常のイベントとは異なり、NEXCHAIN会員の方以外も参加可能なオープンセミナーを開催しました。また、Green Transformation(以降、GX)や資源循環に知見のある有識者(以下参照)をお招きし、ご講演・議論いただいた、大変貴重なイベントです。
会場は48名、オンライン配信には198名の皆様にご参加いただきました。

●経済産業省 産業技術環境局 GX金融推進室長(兼)GX推進機構設立準備室長 梶川 文博 氏
●経済産業省 産業技術環境局 資源循環経済課 総括補佐 吉川 泰弘 氏
●旭化成株式会社 デジタル共創本部 インフォマティクス推進センター 情報・戦略部 主幹研究員 小西 美穂 氏
●株式会社日立製作所 水・環境ビジネスユニット GX事業開発本部長 
新開 裕子 氏

本イベントのプログラムは以下の通りです。


各セッションの内容は前後編にわたりご紹介予定ですが、この記事では、経済産業省 梶川氏による基調講演内容を中心に、ご紹介します。


基調講演『GX実現に向けた政策展開について』(経済産業省 梶川文博 氏)


はじめにご登壇いただいたのは、経済産業省 産業技術環境局 GX金融推進室長(兼)GX推進機構設立準備室長の梶川文博 氏です。
カーボンニュートラル実現に向けた世界の動向や、GX 経済移行債*1による20 兆円規模の先行投資支援策トランジション・ファイナンス*2の推進施策など、直近の日本政府の取組みについてご講演いただきました。

*1 GX経済移行債:2050年の温暖化ガスの排出実質ゼロを実現するため、国による支出を確保する目的で発行する新しい国債。2024年2月14日に8,000億円を初回入札し、同月27日にも8,000億円を入札予定。詳細は、本記事後半にも記載。

*2トランジション・ファイナンス:脱炭素社会の実現に向けて長期的な戦略に則り、着実な温室効果ガス削減の取組を行う企業に対し、その取組を支援することを目的とした新しいファイナンス手法


梶川氏 プロフィール

-GX実現の重要性


近年、期限付きのカーボンニュートラル(以降、CN)目標を表明する国や地域が急増しています。そのような環境下で、金融市場の動きも相まって、あらゆる産業が脱炭素化社会に向けた大競争時代に突入しており、環境対応の成否が企業や国家の競争力に直結していると言えます。
GXは、コストではありますが成長へのチャンスでもあるので、経済産業省としても、その負担をなるべく軽減できるような施策を推し進める方針です。

また、世界各国においても、アメリカのインフレ削減法、EUのグリーン・ディール産業計画等に加え、規制だけではない新たな投資促進政策の動きも加速しています。

梶川氏 講演資料より抜粋

日本では、再生エネルギー導入が進む一方で、化石資源のほぼ全てを海外輸入に依存しており、エネルギー自給率は依然として11%と低いです。更に、電気・ガス等のエネルギー価格の高騰や、エネルギー源の不足が懸念される状況が続いており、こうした状態からの脱却が求められています。
また、近年の世界のCO2排出量の増加は、新興国の経済成長に大きく起因しています。そのため、先進国だけでなく新興国を含めた排出量削減に取り組まなければ、世界全体でのCO2排出削減は進みません。

ところで、「日本でのCNに向けた取り組みは進んでいない」という声もありますが、2050年にCN達成、そこから逆算し、2030年度には2013年度比約46%の温室効果ガスの排出量削減を達成する目標を掲げています。そして、この2つの目標同士を繋げる直線(下図赤線)を引くと、現在は計画通りに進んでいることが分かります。

梶川氏 講演資料より抜粋

-GX実現に向けた政策イニシアチブ


昨年、排出削減と、産業競争力強化・経済成長の同時実現に向け、今後10年間に150兆円超の官民GX投資を実現・実行するための「GX推進法」が成立しました。
その中で、GX経済移行債を発行し、排出量取引制度の本格稼働、CO2排出量に応じた輸入事業者等に賦課する化石燃料賦課金制度の導入、電源の脱炭素化を加速する発電事業者向け有償オークションの導入を行うことを目指しています。

このGX経済移行債を活用した投資促進策として、まずは政府が今後10年間で20兆円規模の資金を調達します。その上で、各分野が持つ事業リスク・環境に応じて、適切な規制や支援を一体的に行うことで、産業競争力を強化し、経済成長や排出削減のいずれの実現にも効果の高い民間投資を引き出すことで、150兆円超の官民投資を目指します。

施策の具体化に向けては、排出量の多い部門から重点的に取り組む方針です。定めた重点分野ごとに専門家による議論を行い、分野別投資戦略としてブラッシュアップすることで、国内のGX市場を確立し、サプライチェーンをGX型へと革新していきます。

なお、GX経済移行債は一般会計とは異なる位置づけで処理されるため、複数年の支援に関する方針を示すことができます。これにより、投資の予見可能性を確保することも可能です。

-GX経済移行債


GX経済移行債は国債であり、世界初の国によるトランジション・ボンド*3です。2023年12月頃には、国内外の投資家に対して説明を行い、2024年2月に初回発行します。

CBI(Climate Bond Initiative:気候ボンドイニシアチブ)という、低炭素経済の実現に向けた大規模投資を促す国際的なNPOがあり、グリーンボンドに係る独自基準であるCBS(Climate Bond Standard:気候ボンド基準)を策定しています。
GX経済移行債は、このCBS基準を満たしている旨の認証を取得しており、この認証を重視している多くの欧州の投資家に対する訴求力が高まりました。

*3トランジション・ボンド:脱炭素化社会に移行するためのプロジェクト等の資金調達を目的に企業が発行する社債。

-GXリーグ(排出権取引)


GXリーグとは、CNへの移行に向けた挑戦を果敢に行い、国際ビジネスで勝てる企業群がGXを牽引する枠組みです。日本の温室効果ガス排出量の5割以上を占める企業群が参画しており、その他多くの企業が2030年度までの削減目標設定に留まる中、GXリーグの参画企業は、2025年度までの野心的な削減目標を設定しています。

主な活動としては、自ら設定した目標達成に向けた排出量取引の実施と、GX市場創造に向けたルールメイキングです。
排出量取引については、2023年度の試行的実施を通じて各産業の基準を踏まえ、競争力の強化と排出量取引を両立できるような仕組みを考えていく方針です。

また、カーボンクレジット市場については、J-クレジット*4等のカーボンクレジットや、GXリーグの参画企業が創出する超過削減枠を取引する場として機能します。東京証券取引所と共に行った実証においては、炭素価格の表示方法や価格公示機能としての役割が確認できたため、2023年10月より、J-クレジットの市場取引が開始しました。

*4 J-クレジット:省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2等の排出削減量や、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を、クレジットとして国が認証する制度。

-トランジション・ファイナンス~新たな金融手法の活用~


社会全体でCNを実現するには、電力部門では脱炭素電源の拡大、非電力部門(産業・民生・運輸)では脱炭素化電源による電化、水素化、メタネーション、合成燃料等を通じた脱炭素化を進めることが重要です。2050年に全ての排出量をゼロにすることはできませんので、排出+吸収により実質ゼロにしていくことが求められます。

製鉄業における水素還元製鉄技術をはじめ、新技術開発等による大幅な排出削減や、段階的な排出削減を進める取り組みも対象とする「トランジション・ファイナンス」を、国内外で推進していくことが重要です。

トランジション・ファイナンスの市場環境整備のため、政府としては、基本指針の策定、分野別技術ロードマップの策定、モデル事業・補助事業、資金供給後のフォローアップガイダンスを実施してきました。
また、海外でもトランジション・ファイナンスに対する注目が集まっており、G7広島サミットでは、G7として初めてトランジション・ファイナンスの重要性について確認されました。

GX推進機構は、株式会社ではない認可法人として設立する機関で、2024年の夏頃から業務開始予定です。設立当初からGX投資推進のための債務保証等の金融支援を行い、その後、排出量取引制度の運営、化石燃料賦課金・特定事業者負担金の徴収等の業務を、順次開始する予定です。

本講演内容の詳細は、オンライン配信のアーカイブ動画からも参照いただけますので、ご興味のある方は、是非覗いてみて下さい。

また、次回(後編)では、パネルディスカッションの内容についてご紹介予定です。

NEXCHAINの活動にご興味のある方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。

※以上の文面は、当日の講演内容をもとにNEXCHAIN事務局が執筆したものになります。

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