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日本の夏は、避難の夏

◯もうすぐ一番危ない季節です
5月13日に与那国島で豪雨、18日には気象庁が「50年に一度の記録的大雨」と表現した雨により、屋久島で土砂災害が発生しました。26日の北海道で最高気温39度という記録を見ても、今年も「例年にない」夏になりそうだと、災害支援関係者の間ではヒヤヒヤしています。

前線が停滞する初夏と秋、海水温が高くなる夏、台風が発生しやすい夏から秋…
そう、梅雨〜10月ごろまでは、気象条件から見て一年で最も風水害が発生しやすい季節です。実際に毎年6月〜10月には全国のどこかで水害や土砂災害など甚大な被害が発生しています。
そして昨年2018年は皆さんもご存知の通り、平成最悪の被害を生んだ西日本豪雨が発生しました。

◯風水災害は、予測できる
 実は、その西日本豪雨の発災前からこの事態を「予知」していた人たちがいました。予知と言っても別に変な人達ではありません。気象庁です。気象庁は、発災する数日前から「異例の」会見を何度か行い、記録的な大雨が降り災害が発生する危険性が極めて高い、と警告していました。

その気象庁の異例の対応にも関わらず、多くの犠牲が出てしまったのは大変残念なことでした。もちろんこの数には障害者や高齢者など「災害弱者」と呼ばれる、一人では避難が難しい人たちも多数含まれています。情報さえあれば全員が避難できたわけではなかった、という点は考慮すべきですが、あの200人を超す犠牲者の中には、助けられた命もあったかもしれないとも思います。

 発災後にはSNSで#救助要請が使われたのも話題になりました。このタグで自分の居場所を発信し、それが救助につながったという事例でした。救助要請を身近なSNSを活用してできたことはとても良いことだと思いますが、SNSを活用できる若い(≒災害弱者に当てはまらない)世代が要請を出していたということでもあります。*もちろん、外部から誰かが要請を代行して発信していたというケースも有り、すべてが当てはまるとはいえませんが。

話が少しそれましたが、あの西日本豪雨の雨は予想されていたのです。特に水害、どのくらい雨が降るのかは、科学技術が進んだ現代ではある程度予測できるのです。実際、ハザードマップ通りの被害になったと言われる地域もあります。
気象庁や自治体からの情報、ハザードマップなどの情報を元に、もっと多くの人が自力で避難できるはずなのです。


◯避難情報が変わる
 そして昨年の西日本豪雨などを受けて、この夏(出水期6月頃)から、水害・土砂災害の防災情報の伝え方が変わります。
もうまた色々新しい用語を色々出して混乱するやん、と思う人もいらっしゃるかもしれませんが、行政側も混乱させたい訳ではありません。如何に分かりやすく、危機が迫っていることを伝えられるのかを模索した結果、これまでに何度か変更されているのです。

大きく変わる点は、「自らの命は自らが守る」という意識のもと、それぞれが取るべき適切な避難行動を知らせる、という点です。
今回の変更では、市町村が出す避難情報と、国や都道府県が出す防災気象情報が5段階に整理されました。これは一人ひとりが情報を直感的に理解できるようにという整理です。

ただ、注意が必要なのは、警戒レベルは5段階でも、レベル5はすでに災害が発生している場合を指す、という点です。従来の避難勧告や避難指示はレベル4に振り分けられています。レベル4が発表されたら、ダッシュで安全な場所まで飛んで行くこと、飛んでいけない人はレベル3から移動を開始すること、ということです。


*警戒レベルについて詳しく知りたい方はこちら

◯大切な人の命を守る、ための防災情報リテラシーを
 年々巨大化、深刻化する自然災害。災害大国日本に住む以上、上手くかわしていかなければなりません。避難の空振りが続いてもいいのです、いちばん大切なことは、犠牲者を出さないことです。

そのために、先程の警戒レベル情報や、地元ハザードマップ情報などを参考にして、それぞれが考えて適切な避難行動を取ることが理想的です。もちろん、災害の性質(風水害・土砂災害・地震・津波など)やあなたの置かれている環境(家族構成・建物の状況)によってもその判断は変わります。 

また、発災する時間帯にも注意が必要です。2017年の九州北部豪雨では昼過ぎから夕方までにかけて大規模な土砂崩れが発生し40人が犠牲になりました。子どもたちは学校にいた時間帯、昼間の明るい時間帯に発生したからこそこの人数だった、夜間だったら3桁を超えたかもしれないという意見もあります。下校後だったら子どもの犠牲が増えていたかもしれないし、真っ暗な夜中だったら、流されそうな人に声をかけて家に呼び込んだなんてエピソードも聞けなかったでしょう。

 自分の命を自分で守るために、総合的に判断して安全な場所に身を置く、ことは簡単なことではありません。簡単でないからこそ、普段からこの時期はお天気や防災情報に注意してほしいなと思っています。
そして、自分の命を守ることは、大切な人の命を守ることにもつながります。自分のためじゃなくて、誰かのために、行動できるように。

今年もきっと「まさか」が起きてしまいます。できるだけ小さな被害であってほしいと願ってやみませんが、願っているだけでは何も変わらないので、こうして文章にしてみました。


最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。 少しでも、災害現場の課題が伝わっていたら嬉しいです。 いただいたサポートは、被災地の現在を伝えるための活動資金にさせていただきます!