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フォークロア 13 つづき②

使用人『おかえりなさいませ。旦那様。』

ブラグ『ああ。』

ブラグは、被っていた帽子と鞄を使用人に渡して
玄関へと歩いて行った。
その途中で庭を通る。
庭の古屋に目を向けるブラグ。

ブラグ『・・・』

使用人『旦那様、体が冷えてしまいます。
早く家の中へ。』

ブラグは古屋から視線を外して
玄関へと向かった。
靴を脱ぎ、そのまま自分の部屋へ向かう。

部屋の中へと入ると、服を脱ぎ、部屋着に
着替えるブラグ。
使用人も部屋に来て、
ブラグの身のお世話をする。

ブラグはソファーに腰かけて
テーブルの上に用意された
ウイスキーを飲んだ。

ブラグ『ベラ。』

使用人のベラ『なんでしょうか?』

ブラグ『私の横に座れ。』

使用人のベラ『はい。』

ベラはブラグの横に座った。
ブラグはベラの肩を引き寄せた。

ブラグ『お前は美しい。』

使用人のベラ『旦那様、
もう酔っているのですか?』

ブラグ『何を言っている?
いつもこうしてるだろう。』

使用人のベラ『旦那様は、お酒を飲まないと
こうゆう事はしてくれません。』

ブラグ『そうだったか?』

ブラグは、ウイスキーを飲み干した。

使用人のベラ『今日の昼間、グレースが
奥様に毛布と服を持って行かれました。』

ブラグ『そうか、もう寒くなってきたからな。』

使用人のベラ『旦那様は、この先、奥様を
どうなされるおつもりですか?』

ブラグ『なぜ、そんな事を聞く?』

使用人のベラ『私は旦那様を愛しています。
だから気になるのです。』

ブラグ『・・〝レオがいる限り〟アイリは
この家には入れん。邸宅の外にも出る事は
できん。』

使用人のベラ『では、ずっと庭の古屋に
おられるのですか?』

ブラグ『それも難しい。もしも〝紅の眼〟を
持った子供が生まれたと、教団本部に
バレれもしたら、必ず〝法の執行官〟を
送ってくる。そうなれば、レオとアイリと私は
殺されて、ネルソン家も解体される。
役所の名簿からも、消されるだろう。』

使用人のベラ『そんな恐ろしい事・・
なら奥様とレオ様は、この家に居ては
ならないという事ですか?』

ブラグ『生まれてしまった以上は、
〝死〟しかない。』

使用人のベラ『レオ様を処断・・奥様は?』

ベラはコップにウイスキーを注いだ。

ブラグ『アイリは、レオがいなくなれば
この家に帰ってこれる。』

使用人のベラ『そうですか。でも
もう居場所がありません。』

ブラグ『アイリはレオに取り憑かれてるのだ。』

ブラグはまたウイスキーを一気に飲んだ。

使用人のベラ『奥様は、
レオ様を愛しています。旦那様よりも
愛しています。』

ブラグ『・・わかっている。』

使用人のベラ『レオ様を処断したら
奥様も必ず後を追います。』

ベラはまた、コップにウイスキーを注いだ。

使用人のベラ『自殺は、神から禁じられた行為。
もし自殺をしてしまえば、奥様のご遺体は
首を刎ねられ、晒されます。
同時に、奥様の魂は、上へも下へも行けずに
この世を彷徨い続けます。首のない体のままで。』

ブラグ『・・どうしたらいいんだ、、私は』

苦悩するブラグ。

使用人のベラ『奥様が苦しまずに済む方は』

ベラが、そっとブラグの顔を引き寄せた。

使用人のベラ『レオ様と一緒に奥様も
処断するしかありません。』

ブラグ『アイリを苦しませたくはない、、』

ベラ『安心して下さい。
旦那様の側には、いつもベラがいます。』

ブラグ『・・』

ブラグはソファーから立ち上がって、
ベッドに座った。
コップの中に入ったウイスキーはそのままだ。

ブラグ『ベラ、こっちに来い。』

使用人のベラ『はい。』

ベラは服のボタンを外して、ベッドへ歩いていった。

つづく。

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