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おじいちゃん孫のペットを食べる。

「おじいちゃん!くんと、ちゃん、知らん!?」

僕はそう、おじいちゃんに尋ねると
台所で料理を作っているおじいちゃんは
ゆっくり振り向き衝撃の言葉を発する…


僕が小学校2年生の夏

近所の化学センターという
子供が化学を体験できる施設

そこでは、ヒヨコをペットとして
無料で譲ってくれるサービスがあった。

僕はどうしても、ヒヨコを飼いたくて
母親と父親に何度も何度も頼み込み
2匹のヒヨコを飼う事を了承してもらった。

毎日しっかりお世話をして
2匹のヒヨコの名前を
「くん」と「ちゃん」と名付けた。

〇〇くん、〇〇ちゃんの敬称の部分を
名前にすると言う
今でもそこそこ良いネーミングセンスだと
自画自賛している。

ヒヨコを育てるのは
とても難しい事である。

空き段ボールに、毛布を敷き詰め
上から電球で温度を調整して
糞もするので毎日掃除もしなければいけない。

鼻水垂らして冬でも半袖半ズボンの
典型的なバカな小学生が
飼うにはハードルが高過ぎる。

自分の体の温度調整も分かってないのに
ヒヨコの温度調整なんかできるのか。



僕はできた。
1ヶ月もしたら、体も大きくなり
ニワトリくらいのサイズになり

小さくトサカが生えてきている。

自分の手で動物を初めて育てるのは
凄く嬉しかった。



ただ、一つ問題が発生した。

ニワトリ特有の朝に
コケコッコーと泣き出したのだ。
住宅街だった我が家ではこのままだと
ご近所トラブルになりかねない。

お母さんと相談して
近くの、おじいちゃんの家で育てるという
結論に至った。


おじいちゃんは近所で
居酒屋を経営しており
お店兼、自宅の一軒家だ。

基本的には常連しか来ないので
大したお店ではないが

隣は大きな公園で、もう片方の隣は
セブンイレブンなので

まぁウチよりは朝に鳴いても
被害は少ないだろう。

おじいちゃんはちょっと嫌がっては居たが
猛烈に僕を可愛がってくれてたので
孫の言う事は断れない。

そこから毎日毎日、
おじいちゃんの家に行き
【くん】と【ちゃん】のお世話をする事になった。


ただ、更に問題が発生した。

おじいちゃんの家にニワトリが移住してから
エサはおじいちゃんがあげてくれていたのだが

数日経つと
餌の容器に公園の葉っぱが
切り刻まれて入っていてそこにマヨネーズをがかかっている。



そうです。
僕のおじいちゃんは
ネジが5.6本外れているのです。

「おじいちゃんこんなん止めて!!」

小学生の僕はブチ切れである。

そんな顔真っ赤かっかにして
怒り狂ってる僕におじいちゃんは

「調味料かけたってるやろ!!」


と、斬新な返しを繰り出してくる。


「そういうことちゃうやろ!」

完全に僕が正しい。
70歳の大人の主張より10歳のガキの方が
まともな事を言っている。

歳を重ねれば良いっていう問題ではない。

そんな事がありながらも
月日は流れ3ヶ月程が経った。


僕は学校帰りに
おじいちゃんの家に寄った。

おじいちゃんは台所で
お店の仕込み作業をしている。

【くん】と【ちゃん】に会いたくて
いつもいる庭のニワトリ小屋に行くと

【くん】と【ちゃん】の姿が無い。

あれ?どこ行った?
もしかして、脱走したのか?
やばい!!どうしよう!!


急いで台所にいるおじいちゃんに言った。

「おじいちゃん!くんと、ちゃん、知らん!?」

僕はそう、おじいちゃんに尋ねると
台所で料理を作っているおじいちゃんは
ゆっくり振り向き衝撃の言葉を発する…



「食うたわっっ!!!!」



「…。」

僕は完全にフリーズした。

…食った?
ん?どういう事だ?

あれは僕が大事に育てて
大好きなペットだ。

夏休みは、ほとんどお世話に徹した。


その姿をおじいちゃんは確かに見ていた。
そして、おじいちゃんは孫の僕を凄まじく愛している。


もう一回頭の中を再生する。


「おじいちゃん!くんと、ちゃん、知らん!?」

「食うたわっっ!!!!」



あかん!!ほんまに食いよった!!

ようやく事態を把握した僕は
ニワトリばりの声で
泣きじゃくった。

【くん】と【ちゃん】が
乗り移ったかの様な大きな声で
泣きじゃくった。

言葉なんか出ない。
泣くしかできない。

おじいちゃんはどういう気持ちなんだろう。

愛するペットを食われた。愛する孫。
自分のせいでこんなに泣かせてしまい
さすがに後悔するだろう。

おじいちゃんは泣いてる僕に言った。


「やかましわいっ!!!不味かったわ!!」


完全にとどめを指してきた。

僕はもう一ギア上げて泣いた。

正直そこからの記憶は全く無い。

ただただ、愛する孫のペットを食べた張本人が
ペットを食べられた孫よりキレていた。

ただ、それだけだ。


大人になった今、
当時の事を母親に聞くと

「ベロベロに酔ったおじいちゃんがお客さんに出す鶏肉が無くなったから、丁度ええわ言うて殺してその肉出したらしい。」

そう言われた。

そう、おじいちゃんは食ってなかったのだ。

食わせたのだ。

あれから18年経った
2022年11月
おじいちゃんは亡くなった。

そんなムチャクチャなおじいちゃんだが僕は
大好きだった。


おじいちゃん。


たぶん地獄にいると思う。

地獄から喉ぶち壊れるくらい使って

天国の【くん】と【ちゃん】に謝ってくれ。



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