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巨人の肩に乗るためには、体と頭を使う必要がある

 もたもたしていると本題に行きつく前に結構な分量になってしまうことを前回学んだので、今回はさっそく本題に入る。いきなり試合だ。ウォーミングアップは試合会場まで走ってくればいい。


最初に巨人の肩の上に立ったのは誰か

 (見出しを付けることを学んだ)

 田中泰延さんの著作「読みたいものを、書けばいい。」の第三章「どう書くのか」の中に「巨人の肩に乗る」という項目がある。

 ここで文章を書くことにおいて「巨人の肩の上に立つ」とはどういうことかを述べても本書の内容をなぞっているだけなので、その文脈は共有できている前提で話を進める。「いや、わかんないよ!」という方は、ぜひ本書を読んでほしい。決して適切な文字数をオーバーしてしまうことを恐れているわけではない。ましてや、めんどくさいから端折ったわけでもない。巨人の肩に乗ったのだ。あえて一言だけ言うなら、「換骨奪胎」という表現が近い気がする。

 本書の中でも触れられているが、「巨人の肩の上に立つ(standing on the shoulders of Giants)」というフレーズは、12世紀のフランスの哲学者ベルナールの言葉をニュートンが引用したことで有名になった言葉だ。この言葉自体について知りたい方は例の便利なやつを見てほしい。

 よし、本題から逸れるのを無事に回避したので先に進もう。

 このページを読んで思い浮かべた作品が二つある。


偉大なる名探偵は何度でも生き返る

 一つは「シャーロック・ホームズ」だ。ここではコナン・ドイルの原作ではなく、映像作品の話をしたい。私がまず思い浮かべるのはこれ↓

(ちなみに、こんな紹介の仕方で購入する人がいるとは思えないが、私はアフィリエイト申請をしていないので、読者の方が万が一上のリンクから購入したとしても私には何の得にもならない)

 少し古い作品なのでご存じない方もいるかもしれないが、1984-94年にイギリスで制作されたテレビドラマで、原作に非常に忠実で、ドイルが描いた19世紀のヴィクトリア朝ロンドンの雰囲気が再現されていることで名高い。主役のジェレミー・ブレットがホームズにしか見えず(もちろん実際のホームズを見たことはないのだが)、また日本語吹き替えの露口茂さんの声が渋くてかっこいい。数あるホームズを描いた映像作品の中でも不朽の名作だ。

 この作品は、「原作の雰囲気を忠実に再現した」ことにその価値があるのではないかと思う。


 見出しに「何度でも生き返る」と書き、上の段落でも「数ある」と記したように、シャーロック・ホームズを題材とした作品は多い。例えばこれ↓

(え、てか安くない? いま、DVDってこんなに安いの?)

 ロバート・ダウニーJr.がかっこいい。もちろん、ジュード・ロウも忘れてはならない。こちらは2009年の映画なのでご存知の方も多いだろう。この作品におけるホームズを特徴づけているのは、何と言っても激しいアクションと原作とまるで違う性格。神経質で突拍子もないところはあるにしても理路整然としている原作に対して、こちらのホームズはずぼらで自由奔放。だが、その設定こそがこの作品を良作にしていると感じる。

 私の感覚でしかないが、これを見て「なんだ、原作と違うじゃないか!(怒)」と目くじらを立てる人よりも、「素晴らしいアレンジだ!(喜)」と称賛する人のほうが多いのではないだろうか。つまり、この「原作とまったく異なる作風の中で、新しいホームズ像を作り上げた」ことがこの作品の価値であると思う。


 もう一作紹介したい。これだ↓

 こちらは紹介する作品の中では最も新しく、2010年以降数回にわたりBBCで制作されているテレビシリーズである。この作品の特徴は、舞台が「現代のイギリス」であるということ。現代なので、ホームズはスマートフォンやインターネットを駆使して事件を解決する。

 ドラマとしての演出も実に現代的だ。現代的であるだけではなく、それらによってホームズの思考や何が有力な手掛かりなのかということを視覚的に視聴者に伝えることに成功している。画面上にデカデカと浮かんだテキストをホームズが手で払うと、視聴者は「あー、いまその単語がホームズの脳内に浮かんだけれど、これは手がかりではないんだな」とわかるといった具合だ。

 余談だが、ホームズ役の俳優が好きなのだが、彼の名前を一度で言えた試しがない。ベネディクト・ガッパー……カンバー……なんとかバッチ。(例の便利なやつを見てくるので少し待っててほしい)……カンバーバッチだ。コピペしたから間違いない。しかも二回目に言いかけたのであっていた。クイズなんて、たいていそうだ。「あれかも」と思ったけど自信がなかったので口に出さなかった答えは、だいたい正解だ。また余計なことに字数を割いてしまったが、彼がまた素晴らしいホームズ像を演じてくれている。

 この作品は「舞台を現代に移し、最新のテクノロジーをストーリー・演出の双方に活用した作品設計」こそが最大の魅力と言えよう。


結局何を言いたいのか

 みんなそう思っているのは薄々気づいている。

 つまり、シャーロック・ホームズというコナン・ドイルが生み出した「巨人」をもとに、その肩の上でこれらの作品が作られているということだ。さらに言うと、最初に紹介したテレビドラマの「シャーロック・ホームズの冒険」もまた「巨人」であり、その肩の上に後の二作があるとも言えるかもしれない。同じように小説の世界を忠実に再現した作品をいくつ制作したところで、新たな価値を加えることは難しい。

 一つ付け加えておきたいのは、シャーロック・ホームズ、あるいはコナン・ドイルという「巨人」の肩に乗るということは、「ホームズというキャラクターやコナン・ドイルの書いたストーリーをどう料理するか」ということと同義ではなく、これから名探偵の出てくる作品を作る創作者は、誰もが「シャーロック・ホームズ」というキャラクターがこの世に存在することを念頭に置かなければならないということだ。一から考えたキャラクターがホームズに似てしまっては意味がない。


まだ言いたいことは終わってない

 みなさんはお気づきだろうか? 私は最初に「思い浮かべた作品は二つある」と言ってシャーロック・ホームズの話を始めた。「三つ紹介してるじゃん!」と思ったあなた、それは大きな間違いだ。二つのうちの一つ目がシャーロック・ホームズなのだ。つまり三作品で一つ。三匹の子豚と一緒だ。

「あーじゃあ、二つ目はまた次回に持ち越すのね」と思ったあなた、それも違う。持ち越さない。なぜなら、一回分を費やすほど深い話はないのだ。だから、いい加減みなさん疲れてきていると思うが、このまま続けたい。大丈夫、すぐ終わるから。「もう三ページやったらキリがいいんで、そこまでやってから休憩にしましょう!」という先生と一緒だ。あれは本当にやめてほしい。


休憩時間を先延ばしにしてまでする話ではない話

 私が好きなバンドに「オアシス」というイギリスのバンドがあるのだが(シャーロック・ホームズと言い、どうやら私はイギリスが好きらしい)、彼らのアルバムにこんなの↓がある。

「タイトルそのまんまじゃん」と思ったあなた、またしても不正解だ。よく見てほしい。ニュートンが書いた言葉は「standing on the shoulders of Giants」。「shoulder」の後の複数形の「s」がなくなっているのだ。これはノエル・ギャラガーが書き写したときに酔っ払っていたために、間違っただけらしい。

 この話は以上だ。


最後に

 まずはこの場を借りて謝りたい。3000字も書いたのに、本の内容にほとんど触れていないことを。どうやら私は本の内容をお伝えしたかったのではなく、シャーロック・ホームズとオアシスの話をしたかっただけらしい。

 しかも田中さんの本の中では、巨人の肩に乗るにあたっては「一次資料に当たれ」ということを口を酸っぱくして言われている。GoogleやWikipediaで調べる、YouTubeで見るのではなく、「これ以上は出典が遡れない」というところまで調べなくてはならないと。一方、この記事はGoogleとWikipediaとYouTubeしか使っていないと言っても過言ではない。半分は優しさでできている頭痛薬どころではない。ほぼすべてだ。典型的なダメな例だ。練習したことが試合で何もできていない。


タイトルで言いたかったこと

「さっきの見出し、『最後に』だったじゃん」と思ったあなた、いい加減気づいてほしい。私の記事はそういう記事なのだ。なんでもありなのだ。「もう三ページだけ」なんていうのは嘘なのだ。

「巨人の肩に乗るためには、体と頭を使う必要がある」

「体を使う」というのは先に述べた「一次資料に当たる」ということだ。また聞きのまた聞きの情報はネット上でも見つかる。だが、大元の出典となるとそうはいかない。やはり図書館でその書籍を読まなくてはならないのだ。つまり、立ち上がって、靴を履いて、歩かなくてはならない……待てよ、「足を使う」のほうがよかったな。「足で稼ぐ」って言うし、刑事っぽくてかっこいい。だが、すでに手遅れだ。
 とにかく、一番大切な部分で労を惜しんではいけないということだ。

「頭を使う」というのは、巨人をとことん調べつくしたうえで「何を足すか、どこを変えるか、どこで新しい価値を生み出すか」は自分で捻り出さなくてはならないということだ。それこそが、すべての創作者の使命であり、存在意義であると思う。


 3800字までいってしまった。いくらなんでも書きすぎではないか? 小説なら読み応えのある掌編一作分くらいある。noteの記事というのは何文字くらいが適当なのだろうか……。

 わからないことだらけだが、とりあえず記念すべき第三回の投稿はこんな感じだ。なんだか、こんなんでいいのか不安になってきた。


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