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当たりは人によって違う

100年読み継がれれば名作、と言ったのは誰だっただろう。174年前に書かれたものはすでに古典で私にとっては、基本だ。小さい頃から何度も読んでいる大好きな重厚な世界。安心感がある。外れない。軽くない。

ジェーン・エア(上)(下) C・ブロンテ

「嵐が丘」からの流れで必ず読んでしまう。「嵐が丘」より好みで「嵐が丘」は読むのに時間がかかってしまったけど、こちらは上下巻あるというのに、一気読みしてしまうぐらい引き込まれる。

ドラマチックだし、メロドラマでもあるし、ミステリーでもあるし、ある意味シンデレラストーリー、サクセスストーリーだ。

いつもはロチェスターとの恋愛にドキドキハラハラするのだけど、今回はジェーンの少女の頃からの生き方に惹かれ圧倒された。

虐待、理不尽な環境って、現代の社会でもある。子どもでも、大人でも。そのときにどう生きるか。

不合理だ!不公平だ!と反骨精神で立ち向かっていく。激しすぎるジェーンに寄宿舎での友だちヘレンが言う。

もし全世界の人が、あなたを憎み、あなたを悪人だと信じたとしても、あなたの良心が、あなたの正しいことを証明し、無罪を言い渡すのだったら、あなたに味方がないわけでもないのよ。

死に近いヘレンだからか、宗教的なニュアンスもあるけど自分が正しいと信じる、自分と神様が知っていればよい、魂は肉体から離れるのだから、永遠に苦悩に打ち負かさて悲しみつづける、ということはないと。

悲哀と透明感があるヘレンの言葉が響いた。

テンプル先生の影響もありジェーンも成長していく。

どのような困難にあっても、わたしの進む道をきりひらいて行こう。

不合理に遭遇した場合、よき友、よき教師が近くにいると心強い。出会いは不思議で、大切だ。

歴史の重みが好きだけど、女性が生きにくい時代でもあった。ロマンチックですまされなかったようだ。女性から男性に好きとは言ってはいけないし、女性の感情(憤怒、悲嘆、情熱)をこのように赤裸々にさらけだすとうことは、非常識で破廉恥なとこだったらしい。「ヴィクトリア朝イギリスの保守的な文学伝統と社会常識への激しい抗議と反撃」だったようだ。

働くことは恥ずかしい、卑しい、とされ親の財産があるかないかが重要な貴族文化って、ある意味親ガチャなのかもしれない。ジェーンは、外れでも奮闘し自分なりのアタリがでるまで回しつづけた。

当たりは、人によって違う。

174年前、1847年。黒船来航まで6年。土方さんは12歳。

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