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低温調理にまつわる幻想を赤裸々に【後編】

こんにちは、Nickです。はじめまして、の方向けに軽く自己紹介をしますと、以下のような記事でぐるなびのインタビューを受けるような料理マニアです。

特に低温調理に関しては普及初期からかなり研究しており(ブログ参照)、プロのシェフからも時折問い合わせを受けたりしています。そんな私の低温調理に対する現状評価を一般ユーザー目線に合わせて書いたものが本稿です。

さて、皆さんご存知通り、Anovaなどの専用機が手軽に入手できるようになったこともあって、確実に低温調理ユーザーが増えて来ていますね。
その傍ら、ネット上や店頭では「プロ並の仕上がり!」など様々な持ち上げられ方をしていますが、やや誇張されている点があるように思います。

代表的な例に対して色々ツッコミを入れていき、低温調理の実際のポテンシャルを確認したいと思います。(一見すると)良さそうに思われる面ばかりが切り取られて強調されている現状に一石を投じる内容になっているかと思います。

本稿は具体的なレシピを紹介するものではなく、より良いレシピを考案するため、あるいは、どうしようもないレシピを見抜くための知識を提供するものです。(以上、前編の冒頭のコピペ)

さて、本稿は、メディアなどでなにかと持ち上げられがちな低温調理・真空調理の実際を丸裸にする記事の後編になります。前編はこちら。

前編に書いたことを頻繁に引き合いに出すので、ぜひ前編から通しでお読みください。

※なお、本稿は販売数の伸びに応じて販売価格も上がる予定。

真空調理ステーキの厄介さ

真空調理ステーキの定義とその狙い
本稿において、真空調理ステーキは「湯煎加熱→両面焼き付け(sear)」と調理された板状の肉、とします。

肉の厚みが増してカット厚が厚くなると見た目の上でローストビーフとの区別が曖昧になってきますが、厚みが5cm以下で食べる際に1~2cm幅にカットするものを想像してください。こういうやつ(↓)。

さて、sear前にどうして湯煎加熱という前段階を挟むのか、という点を一応確認しておきましょう。

ステーキと言えば、典型的には両面をフライパンで焼くだけのシンプルな料理。しかし、あの方法で表面に綺麗な焼き色を付けつつ(ミディアム)レアに仕上げるのは決して簡単ではありません。

焼き色を付けること自体は簡単なのですが、肉内部の状態まで両立させるとなると、フライパンでの加熱温度、肉の初期温度、肉の厚み(や水分量)などを計算に入れ、ソテー中の(あるいはソテーした)肉の表面の高熱が内部に伝わっていくスピードを感覚的に覚える必要があります。

肉の厚みによっては肉を休ませる時間やタイミングも調整が必要ですし、肉を触った感触から火の入り具合をチェックしたり、経験を要する作業のオンパレードです。

特にステーキは、加熱温度が高い(そうしないと綺麗な焼き色が付かない)割にローストビーフなどと比べて肉のサイズが小さいため、加熱の'止め時'を逃すとあっという間に過加熱状態になってパサパサの肉が出来上がります。

湯煎加熱の意図は、先に内部まで低温で火を通した上で後から焼き付けを行うという風に、本来1つである工程(の作用と副作用)を意識的に2つに分解し、前半を「肉の厚み×温度×時間」という変数を通してお手軽にコントロールするところにあります。そうすれば、経験を要する作業を経ずとも、仕上げに(内部まであまり熱が伝わらないよう手短に)表面をガンガン焼くだけでピンク色の断面のステーキができるだろう、という発想です。

これが真空調理ステーキの基本的な考え方ですが、いくつか厄介な点があります。

真空調理ステーキの厄介な部分

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低温調理にまつわる幻想を赤裸々に【後編】

Nick 数学畑の料理家

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Nick 数学畑の料理家

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