「わかりやすい」がしっくりこない

統一地方選の後半が迫っている。駅前やSNSで各議員の主張を見かける。その時に、あまりにも「わかりやすい」言葉で主張したり、1つの議題だけに絞り込んだ主張をしているのを見かけると、なんだかモヤモヤする。

「わかりやす」さには本質がない気がするからだ。
わかりやすくするために、わかりやすい言葉を選んでいて、本質の複雑さをそぎ落としてしまっている気がする。

世の中は本当に複雑で、様々なことが絡み合っている。それを「わかりやすい」言葉で、シンプルに伝えることは可能なのだろうか。

わかりやすい、と言えば池上彰さんのニュース解説を思い浮かべる人も少なくないのではないだろうか。

そんな池上さんが「わかりやすさの罠 池上流「知る力」の鍛え方」という本を出しており、まさにご本人が「わかりやすさ」に警鐘を鳴らしている。


「罠」とはつまり、「わかったつもり」になってしまうということです。たとえば、特にここ数年、「池上さんの番組で十分わかったから、もうそれ以上のことはいいよ」という声をよく聞くようになりました。つまり、私の番組だけをみて満足してしまい、その後、自分で関心を持ってニュースを見たり、新聞を読んだり調べようというところまでいかずに、「わかった」気になってしまっているのです。

わかりやすさの罠 池上流「知る力」の鍛え方

最近ではテレビも力を失い、「Twitterで見たからわかってる」くらいがスタンダードかもしれません。

Twitterなら基本は140文字、テレビも時間制限がある。その中で伝えるには複雑な言葉を使うのは難しい。
だから、池上さんの番組は、まずはわかりやすい入り口を作って、そこから興味を持った部分を自分で調べてみてね、という問題提起の意図で放送されている。
しかし実際にはニュースに詳しくないスタッフによって、肝心なところがカットされてしまうこともあるらしく、なかなかうまくいかない。

また、もっと調べてみよう、と思う人は少ない気がする。だって複雑だから。調べてみようとも思わないし、調べてもわからない。

けれども、それは非常に危険なことなんじゃないかと思う。
政治家にとって、「考えない国民」ほどありがたいものはない。

本著で池上さんは、「わかりやすい」政治家として小泉元首相をあげている。

シンプルなキャッチフレーズを繰り出す小泉氏の手法は、「ワンフレーズポリティクス」の典型です。「郵政民営化こそが改革の本丸だ!」と繰り返す小泉氏に、国民は熱狂しました。しかし、一見、単純でわかりやすいフレーズの裏側には、さまざまな政治的計算がなされていることを忘れてはなりません。

わかりやすさの罠 池上流「知る力」の鍛え方

小泉元首相の実施した郵政民営化は国家公務員の削減をうたい、節税できるように見せかけていたが、その実郵便局員の給与は税金で支払われてはいなかったので、国民を意図的に誤解させたと言えるだろう。

郵便局員の給与がどこから支払われているか、をいきなり調べるというのは現実的ではないが、少なくともワンフレーズだけの主張なら怪しい、と思うことはできる。

SNSの使い方も問題だ。

また、そうしたネットの仕組みでは、SNSで目にするのは自分と同じような意見ばかりになりがちです。それにどっぷりと浸かってしまい、現実には他の意見を持っている人も大勢いるのに、「世の中はみんな自分と同じような考えに違いない」などと、勘違いしている人もよく見かけます。その結果、違う意見がそこに混じると、「なるほど、そういう考えもあるんだな」と冷静に受け止めることができず、「自分の意見こそが正しい」とばかりに、過剰に攻撃的になったり、排除に走ったりしてしまうのです。

わかりやすさの罠 池上流「知る力」の鍛え方

この「過剰に攻撃的になったり、排除に走ったり」がとても問題だと思う。私自身は国民は政権を批判的にチェック機能を持つべきという考えであり、フェミニストでもある。
でもSNS上には政権を批判することは非国民だ!とかフェミニストに対する過剰な嫌がらせなどが存在している。
そしてこれからが、主義主張に基づくものもあるだろうが、相手を傷つけるためだけの言葉を生み出している人もいる事実も無視できない。

世の中の問題は複雑で、シンプルに言い切ることはできない。
「わかりやす」い言葉に騙されていないか、少しでも疑問があればちょっと調べてみようかな、と立ち止まりたい。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

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