【短編】『尾行族』(前編)
尾行族(前編)
都心の一等地に身構える巨大ビル群の隙間にひっそりと佇む古い建物の5階に我々のオフィスはあった。なんだか出勤するまでは一端の大手企業勤めの会社員といった心持ちで駅からの道を歩くも、それも束の間建物の入り口に入った途端に、定員5名のレトロなエレベーターが我々を出迎えてくれる。階を過ぎるごとに大きな振れを味わいながら、とりあえずは社長と出会さなくてよかったと安堵したのちに、今日も今日とて過酷な一日が始まるのだと心に楔を打つ。扉が開くと目の前には「日の丸地所」と大