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金と芸術とカワイイ女の話

「贅沢な暮らしをする必要はないから、

必要最低限食べるお金さえ稼げるのなら あとは自由に生きていたい」

将来の話をしているとそんな意見を、少なからず聞く。
たぶん我々美大生は特にそういう選択がわりと現実的で
・アルバイトをしながら作家活動を続ける とか、
・収入は多くはないけれど自分の思うような活動ができる会社に就職する
だとか、自分のものづくりのためにお金を犠牲にする(かもしれない)選択をすることは、全然珍しくない。
良くも悪くも『とりあえずお金を稼ぐ』より、『とりあえずお金は最低限でいい』と思ってる頭数が多いんでないかと感じる。
実際就職率、一般大より低いし。

そういう話をする度に思うのだけど

いや自分お金は欲しいわ。しこたま欲しいわ。
何はともあれお金欲しいわ。

「なにかものが食べられて、住むところがあるならそれで」ってあっけらかんと割り切る学友を見てるとまじかあ、と感心してしまう。
贅沢ってなんだ?って話をすると個人差大きいからすごく難しい話なんだけど、でもたぶん彼らはデパコスを買ったりネイルやマツエクをしたりしないし、月末にはもやし生活するかもしれないし、終電ないけどタクシーに乗るのはもったいないからって平気で1時間歩いたりもするかもしれない。
そんなん幸せじゃないじゃん、とかそういう話をしたいわけでは決してないので言い方がすごく難しいんだけど、
お金って、わかりやすくエンタメだったり便利だったりを提供してくれるから、自分にはやっぱり必要だなあと思ってしまう。手放すという決断をするイメージがわかない。


「ふつうの女の子」コンプレックス

わたしがいちばん仲の良い10年来の友人は、いまピカピカのOLをしている。
彼女は出会ったときからそうだったけれど、(どえらい熱が入ったヲタクであることを除いては)大層ふつうの女の子である。
……本当か?……ほんとうに本当なのか???
どえらい熱が入ったヲタクである時点でおそらく普通ではないのだが、一般社会への擬態がプロフェッショナルなので、そういう意味で便宜上「大層ふつうの女の子」ということにしておく。
(読んでも怒らないでね、褒めてる。)

そんで、その彼女がいわゆる女の子が好きなものをきちんと好きで、それがとってもとっても可愛いのだ。
髪色が落ち着いたブラウンでふんわりウェーブ(年々まとまりが綺麗になっていることもわたしは知っている)。優秀なコスメの知識があって、きちんと良いものや肌に合うものを惜しまず使う。旅行が好きで、ディズニーランドが好きで、美味しい食べ物が好き。きちんと綺麗で品のあるものを着ていて、いつも傷んでいないヒールを履いている。
賢くて頭の回転が早くて、誕生日プレゼントは毎年わたしが「あーほしいなー」って思ってたりぼやいてた物がやってくる。

なんやそれ!!

これは高収入・高身長マイホーム持ち2児のパパ野原ひろしの家庭がふつう扱いされている現象とたぶん同じなんだけど
わたしは高校生の頃からこの「ふつうの女の子」に憧れ散らかし、コンプレックスを抱き続けている。


かたやわたしはといえば髪の毛金髪にするわ、前髪ピンクにするわ、黒髪青メッシュ入れるわやりたい放題のギシギシアホ毛で、日焼け止めはすぐ塗るのサボるし眉毛の描き方はようやく最近覚えたし、インドア引きこもりだし、あでも最近パンプス(GU)履いて出かけることを覚えたよ……!!!!!!

そんな感じでわたしは、昔からちょっと羽目を外すことも好きだし、どちらかと言うとどちらかと言わなくてもおサボり気質だ。
そのくせ綺麗な女の子に憧れていて、あろうことか片足を突っ込んでいる。
どろんこ遊びが大好きなくせに近所のカワイイお姉さんに憧れるがきんちょと、思考回路はだいたい一緒なのだ。遊ぶことをやめるつもりはないし、そうやって楽しんでいる自分のことも好きだし、なんなら、もう汚れながら遊べないお姉さんにある種の優越感を抱いていることも、自分で分かってやっている。


‘いつか’そうなれるつもりで、‘いつまでもたっても’そうなる努力をする気がない。


結局、偉いのは腹くくってるやつ

彼女は、わたしが決められないでいる覚悟を決めている。わたしがしない努力をしている。

そしてそれは、別の‘彼女ら’も同じことだ。
食事よりも美容やファッションよりも芸術が好きだと腹をくくってる彼女たちもまた、「近所のカワイイお姉さん」だ。


結論、腹をくくっているひとはみんな偉いしすごい。
どっちつかずでいる自分のことをだっせ、って思うし、結局言うてるだけなのしょーもな、と思って落ち込んでみたり反省するなどもしている。
ただ、半分くらいはね。
小綺麗なものが好きで、ちょっとミーハーで短絡的にかわいい好きー!って思ってしまえる自分の感性に期待している。
「ふつうの女の子」にはものは作れないし、贅沢な暮らしをするつもりがない子に、暮らしを豊かに彩るものは作れないと思うから。
だからわたしは今日もめそめそ「いいなあ、いいなあ」と言いながら、内心「いいだろう、いいだろう」と思って生きている。


どうかいつまでも、届かないくらい憧れでいてほしい。
わたしはわたしで、贅沢なやつだと憧れられたい。
親友に悔しいほど憧れられたいというのが、ずっと人生の目標です。


#エッセイ #美大生 #大学生 #女の子 #コンプレックス #親友

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