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なぜ私はなかなか受賞できなかったのか

小説を書き始めてから新人賞に受賞するまで、かなりの時間が掛かりました。
(恥ずかしながら5、6年は掛かったと思います。受賞したのは長編11作目だったと記憶しています笑)

同期作家に聞いてみると、2、3作目で受賞している人が多く、愕然としました。

私はかなりの劣等生だったようです……

今回は、私がなかなか受賞できなかった原因をご紹介します。



大本の原因と負の連鎖

思い返してみると、おそらく大本の原因があり、その原因が次の原因につながって、いわば負の連鎖のようになって受賞を阻んでいたのではないかと考えられます。

たぶん大本の原因はこれです。

  • 自分のことを優秀だと思っている
    (才能があると思っている)


そして、そこから次の原因に繋がります。

  • 優秀だからジャンルの勉強をしない


ジャンルの勉強をしないので、そのジャンルの「新しさ」がわかりません。

ですので、最後は本質的な原因である、

  • 勉強しないから作品に新しさがない

というところにつながって落選し続けていたのだろう、というのが私の推測です。


つまり、

  1. 自分が優秀だと勘違いする

  2. だから勉強しない

  3. だから新しさがない

という連鎖ですね。


それぞれ簡単に説明していきましょう。


1.自分が優秀だと勘違いする

1つ目の原因「自分が優秀だと勘違いする」がすべての元凶です。

恥ずかしながら私は「すぐに受賞できるっしょ!」くらいに考えていました。

なぜなら「私は優秀だから」ですね笑

もうちょっと言えば「才能がある」と勘違いしていたのだと思います。


自分が優秀だと勘違いすると、必然的に、自分本位の作品を書くことになります。

するとどうなるかというと、こんなことをやらかすのですね。

  • 誰も望まないひねりを加える

  • アッと言わせるためだけにどんでん返しを仕掛ける

  • 驚かせるために登場人物を全滅させる

  • 前半と後半でまったく違う話にする


自分本位の作品とは、作者が自分の優秀さを示すためだけに書かれる作品です。

読者に対する配慮はなく、そもそも、読者を想定していません。

自分が満足すればそれでいいからです。


そこには「俺の作品が分からないやつは馬鹿だ」くらいの傲慢さがあります。

読者のために書かれていないので、そういった作品はほとんどの場合、一次選考で落とされます。

私も長らく一次落ちを味わっていました。


2.だから勉強しない

さて、1つ目の原因から導かれる行動が、2つ目の「勉強しない」です。

優秀だし、才能があるし、新人賞も読者も舐めているので、勉強しません。

勉強しなくても、自分のオリジナリティを出せばなんとかなるはずだと考えていました。
(オリジナリティ笑)


実は内心「このままだとまずいな……」と思っていたりするのですが、勉強すると負けた気になるのでやらないのです。

私は実に質の悪い作家志望者でした。


勉強のやり方がわからなかったということもありますね。

何から手をつければいいのか分かりませんでした。

受賞作くらいは読んだと思いますが、それくらいでは圧倒的に量が足りないということも分かっていませんでした。


ある程度の量を消費しないと、ジャンルの雰囲気は掴めません。

雰囲気が掴めないと、「こんな感じの作品を書けばいい」という仮説も作れません。

仮説がないと、ただ当てずっぽうに思いついたものを書くことになりますが、それで上手くいくことは稀です。
(的外れのものを書きがちです)


このように、「才能があるので勉強しなくていい」、「それに勉強の仕方も分からない」という理由で、ほとんどジャンルの勉強をしませんでした。

こんな調子で受賞できるはずがなかったのです。


3.だから作品に新しさがない

2つ目の「勉強しない」の結果として、受賞できない本質的な原因である「新しさがない」に繋がっていきます。

「新しさがないと受賞できない」と気づくまで、かなりの時間を費やしました。

思いついたものを書くだけで精一杯で、新しさが必要だとは思いもしなかったのです。


当然ですが、それぞれのジャンルには歴史があり、過去の作品を乗り越える形で、常に新しい作品が提案され続けています。

新人賞とは、そういった新しい作品を募る賞です。

新人賞の「新人」とは、「新しく入った人」ではなく、「新しさをジャンルに持ち込んだ人」のことだと考えるといいでしょう。


ジャンルを勉強しない限り、過去の作品でどういったことが試みられたのか分かりません。

過去に何が試されたのか分からなければ、新しさを出しようがありません。

当然ながら、新しさとは「過去の作品とは違う試み」のことだからです。


ですから、当時の私が書いていた作品は、

  1. 過去の作品と同じような作品(勉強しないので)

  2. 自分本位のぶっ壊れた作品 (才能があると思っているので)

の両極端だったと思います。

これでは受賞できないのは当然のことでしょう。


さて、このように、

  1. 才能があると勘違いする

  2. ゆえに、勉強しない

  3. ゆえに、新しさがない

という負の連鎖に陥っていたことで、なかなか受賞できなかったのだろうというのが今のところの私の考えです。


これを正の連鎖に変えるのは簡単です。

まず、自分には才能がないのだと認めることです。

才能がないとわかれば、勉強せざるを得ません。

勉強すれば、過去の作品で試されたことが分かり、そこで初めて、過去作とは違うアプローチを取ることが出来ます。


つまりこうですね。

  1. 才能がないと認める

  2. ゆえに、勉強する

  3. ゆえに、新しいアプローチができる


私はずっとこの連鎖に入れず、落選ばかりしていました。

負の連鎖に陥っている限り、受賞するのはほぼ無理だと思います。


ご自分でもちょっと立ち止まって考えてみるといいです。

もしかして、自分には才能があると思っていませんか?

一度でも新人賞に出したことがあり、その際に一次選考も通れなかったようなら、絶対に才能はありません。

安心して諦めましょう。

凡人は「才能がない」と諦めてからが本番です。

ぜひ、私がたどった茨の道ではなく、もっと早く、もっと楽に受賞できる道を通ってもらえたらと思います。


今回のまとめ

「私がなかなか受賞できなかった原因」でした。

  1. 負の連鎖に陥ると受賞できない

    1. 自分が優秀だと勘違いする

    2. だから、勉強しない

    3. だから、作品に新しさがない

  2. 自分が優秀だと勘違いする

    1. 自分本位の作品を書きがち

    2. 読者不在の作品が受賞することは(ほぼ)ない

  3. 勉強しない

    1. ジャンルの勉強をしないと雰囲気が掴めない

    2. 雰囲気が掴めないと仮説が立てられない

    3. 仮説もなく思いつきで書いても受賞するのは至難の業

  4. 新しさがない

    1. 新人賞とは、過去作とは違う新しい試みをした作品を募る賞

    2. 新しさがなければ受賞することはない

  5. 正の連鎖に変えれば受賞の可能性が上がる

    1. 自分には才能がないと認める

    2. ゆえに、勉強する

    3. ゆえに、過去作とは違うアプローチが出来る

本当に優秀な人は、自分のことをことさら「優秀だ」とは言わないものでしょう。

つまり、私は、本当はそれほど優秀ではないとどこかで分かっていたので、逆に「自分は優秀だ!」と主張していたのかもしれませんね。

それではまたくまー。


(2023.9.11追記)

たいせいさんに記事をオススメしていただきました!
いつもありがとうございます!


おー!

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