http://bookclub.kodansha.co.jp/bunko/fair/index.html … 今月の講談社文庫フェア「進撃の講談社文庫」に『千里伝』も入れていただいております。フェア対象本を購入すると特製マグネットしおりクリップがもらえるとか。
「ミカ、交替だ。お疲れ」 チェックリストの確認を行っていた私の背中に声がかかる。 「あら、もうそんな時間なのね」 「いま食堂に行くのはやめときなよ。“オヤジ”がいるぜ」 きれいな青い瞳を片方ぱちりと閉じて、相棒のサム・ダイソンが私の肩を叩いた。 気の張る当直勤務から解放されて、私は硬い席を立つ。この空間での仕事は時間の流れに鈍感になるようで、実は外にいるときよりも鋭敏にその経過を感じることがある。 人間の感覚は時間のわからない空間に放り込まれると二十四時間と
後立山連峰の主峰、雄山の頂を見上げる場所に位置する室堂平は山岳観光のメッカである。ひんやりしたバスの駅舎を出ると、眩いばかりの日差しだ。 標高二千メートルを超えるとはいえ、歩き出すとすぐに上着を脱ぎたくなる。二十代半ばまでは毎年のようにどこかの山に出かけていたものだが、忙しいからといってまた来年、また来年と延ばしているうちに五十も間近になってしまった。 室道平から、硫黄のにおいが濃く立ち込める地獄谷を抜け、雷鳥沢のキャンプ地に至る。 まだ三十分ほどしか歩いていないにもか
一度youtubeに上げるのがわりと面倒に感じるな……。
羽田から伊丹に向かう最終の日本航空1529便は、定刻通りにその洗練された機体を震わせ、ターミナルからその身を離した。誘導路をタクシーングし終え、東京湾に面したC滑走路の端に足を止め、管制官からの指示を待っている。 私はシートベルトを確認し、窓の外に目線を投げた。何もなく、ただひたすらに闇色の海面の向こうに、頼りない光がちらちらと瞬いている。夏の終わりの鬼火のように見えて、そこから何となく目を逸らす。 エンジンの回転数が上がるにつれ、腹の底に振動が伝わってくる。この瞬間
格闘技小説をこちらで続けるのもありかな……。