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「イノベーションとともにある都市」 研究会|vol.06 沖縄科学技術大学大学院 (恩納村)

諸隈 紅花
日建設計総合研究所 主任研究員
吉備 友理恵
日建設計 イノベーションデザインセンター

イノベーション空間のレシピを用いたケース分析第4号

日建グループの「イノベーションとともにある都市研究会」(略してイノベ研)では、建築や都市開発の専門家の立場から、イノベーションが起こる(または起きやすい)空間のレシピ(要素)やその関係性を明らかにしようとしています。今回は「イノベーション空間のレシピ」を用いたケース分析の第4弾となります。レシピ自体の解説は下記noteをご覧ください。

沖縄科学技術大学大学院(OIST)とは

OIST(Okinawa Institute of Science and Technology)は沖縄県恩納村に位置する5年一貫制の博士課程を有する大学院大学です。キャンパス内は英語を公用語とし、世界各国から教員や学生が集う国際的な教育機関であり、学部がないという珍しい運営形態をとっています。2009年に開学された比較的新しい大学院ですが、2019年にNature Indexが発表する世界の研究機関ランキングの、研究機関の規模で正規化した「正規化ランキング」において世界9位に入り、同ランキングにおいては日本の研究機関の最高位をとっており、国際的にも高い評価を得ています。
OISTが一般的な大学と異なるのは、沖縄振興の一環として整備されており、その予算が内閣府から拠出されていることです。2001年に内閣府特命担当大臣(沖縄・北方対策、科学技術政策担当)であった尾身幸次氏が、沖縄の発展を科学技術の振興により実現するという考えに基づき、整備が進められてきました。国際的な研究機関を目指し、OISTの機構の初代理事長には、ノーベル生理学・医学章を受章したシドニー・ブレナー(Sydney Brenner)博士が就任しました。ブレナー博士は科学技術の分野を横断した研究によりイノベーションを生む実践者としても知られています。
また、OISTが沖縄にあることは、OISTのミッションや運営にも深く結びついています。

図 1 OISTの位置
https://www.oist.jp/ja/campus/access-map

沖縄の豊かな自然に囲まれた広大なメインキャンパス内には5つの大学の校舎である研究棟に加えて、教員の住宅や保育園、フィットネスジム、ランドリー、スーパーマーケット等からなる利便施設棟、インキュベーション施設等があります。日建設計はメインキャンパスの第1から第4研究棟の設計に関わりました。
『沖縄科学技術大学 戦略計画2020-2030』によると、現在のキャンパスの北には「OISTイノベーションパーク」という企業と共同研究ができる場の整備も計画されており、研究を研究で終わらせずに、商用化まで結びつけることで、沖縄県に新しい事業を創出し、雇用拡大につなげるという意図も見られます。現在の計画では、伝統的なインダストリアルパーク(工業団地)を建設するというよりも、様々な沖縄や世界の社会的な課題解決を促進するためのテストベッド(実証実験)の展開に焦点を置いています。

図 2 OISTのメインキャンパスのマップ
出典 OISTホームページ
https://www.oist.jp/ja/campus/research-facilities

開学から10年が経過し、2023年9月現在、64か国からスタッフを含めた教職員1,092人、53か国から288人の博士課程の学生が集い、科学技術の分野を横断した学際的な研究が行われており、沖縄県におけるイノベーション拠点の一つとなっています。

写真 1 OISTキャンパスの航空写真 (2022)
出典 OISTホームページ
https://www.oist.jp/image/aerial-view-oist-campus

OISTに着目するポイント

OISTは今までに取り上げた都市部のイノベーション空間とは異なり、沖縄という離島にあり、かつ、公共交通機関のアクセスも容易ではありません。いわば、イノベーションは都市で生まれるという、昨今のイノベーション創出の場の一般的なセオリーには反しているのです。しかし、このような立地的なハンデを背負いながらも、OISTがどのようにそれを克服し、世界的な評価も高い、イノベーションの拠点となっているかという点に着目したいと思います。
またOISTには、イノベーションを生むためのコンセプトや取組が明確に空間計画に反映されているという特徴があり、設計事務所として非常に強い関心を持ちました。
なお、本調査・分析には、OISTの公開資料に加え、2020年10月の現地調査や、OISTの施設担当の副学長やイノベーション創出や戦略策定に関わっていた担当者の方へのヒアリングや2023年12月のeメールによる担当者からの回答を元に作成しています。

OISTのイノベーション空間のレシピ

イノベレシピを用いたOISTの分析結果が下図です。

図 3 OISTのイノベーション空間のレシピ

目的

OISTの目的は大きく2つあり、『沖縄科学技術大学院大学 戦略計画要約 2020-2030』の「本学のミッション」にも明確に示されています。1つは、研究機関そのものあり方を定めるものですが、科学的知見の最先端を切り拓く研究を行い、次世代をリードする研究者を育てるというものです。
 2点目は沖縄におけるイノベーションの拠点として沖縄の自立的発展を推進するというものです。先述の通り、OISTの創設と沖縄の経済振興ということは切っても切れない関係にあり、OISTのミッションにも明確に位置付けられています。いわばOISTは研究のための研究を行う場ではなく、地域の経済発展につながる実業に結び付くことを念頭にいれたうえで研究が行われているのです。

要素その1 寛容性と集積

多用途・複合
沖縄の豊かな自然環境に囲まれたキャンパスは都市型大学とは異なるため、キャンパス内で快適な生活を行うための環境も必要であり、教員用の住宅が整備されています。またキャンパスの入口近くには、物販店舗、事務、保育所、集会所等からなるコミュニティ施設があります。
また、研究に関する施設についても、研究室に加えて、同時通訳ができる施設を整えたホール、ちょっとした交流が行われるラウンジ的なスペースもあります。キャンパス内の交流の場ともなるカフェテリアエリアは沖縄の自然が背景に見える空間になっていたり、屋外でも食べながらいろいろな人と会話ができるような場所もあります。

写真 2 キャンパス内の教員用の住宅
写真 3 開放的なカフェテリア

OISTが沖縄の恩納村という、都市からは隔絶された空間であるというハンデを克服して、大学内で行われている研究を外部の研究者やビジネス人材と事業化を目指すために、2019年にはOISTイノベーション・インキュベーターというインキュベーション施設も整備されています。

多様な人材と業種
OISTの『沖縄科学技術大学 戦略計画2020-2030』の中にも明確に記載されていますが、世界の中でもトップクラスの大学院・大学であるOISTは国際的な大学として考えられており、多様性を尊重するという姿勢を明確にしています。学生と教員の半数以上が日本以外の国の出身で、2023年9月現在、教職員は64か国より、博士課程の学生は53か国から来ています。このようにOISTは様々な科学技術の分野の専門性を有する、国際的な人材が集う場所となっています。
また、キャンパス内に大学生や教職員だけがいる研究機関というだけでなく、計画の中にはR&Dパークを整備して、民間企業をキャンパス内に呼び込むことも考えられています。スタートアップ用のインキュベーション施設は既に整備されています。沖縄という島にあるキャンパスということで、都市のように様々な人々の往来が容易ではありませんが、このように企業やスタートアップを呼び込むということも考えられています。交通アクセスが容易ではないというハンデに対して、国際的な研究機関であるOISTの先進性を武器に、協業の場所を作り、先方をこちら側に呼び寄せる、という積極的な戦略を展開しています。

パブリックアクセス
公共交通機関のアクセスという面では、島内の各所を繋ぐ鉄道網がないという沖縄県の特殊事情があるため、ハンデがあることは否めません。主なアクセスは自動車が中心です。OISTのホームページによると、最寄りの空港である那覇空港から高速バスとタクシー或いは徒歩により、1時間半から2時間程度かかるとされています。
パブリックアクセスにも2つの意味があり、1つは上述の公共交通機関によるアクセスを意味しますが、もう一つの意味としては一般の人に開かれた存在であるか、という意味があります。後者においては、OISTのキャンパス自体は一般の人も入れるようになっており、カフェテラスも一般の人も使うことができます。また、OISTの活動を一般の人に知ってもらうための「サイエンスフェスタ」や子供向けで恩納村と共同で実施する「こどもかがくきょうしつ」等の活動も行っています。一般の人がOISTの研究の一端を知るとともに、研究の場を体感する機会も提供しています。

写真 4 一般の人も利用可能な、海が見えるカフェテリア

要素その2 連携・ネットワーキング

コーディネート・マッチング
コーディネート・マッチングの項目を語る前にまず、OISTは学部がない大学院であるという最大の特徴を説明します。学部がない大学院大学の中で研究者・学生同士の出会い、キャンパス内部と外部の人材の出会いをいかに組織化しているかという点を中心に説明します。
OISTには学部がなく、分野横断型の組織運営を⾏っています。今回インタビューをさせていただいたTechnology Development and Innovation CenterのAssistant Vice Presidentの Lauren Bic Ha氏によると、OIST初代理事長のブレナー博士は1990年代当時、科学の各分野がサイロ化していた弊害から、複数の分野を横断する研究の必要性を感じ、各分野の境界がない状態を再現しようとしていました。そこでブレナー博士は、1995年にフィリップモリス社からの多大な寄付金を元に、OISTの前進ともいえるMolecular Sciences Institute(MSI)をUCバークレー校があるバークレーに作りました。同研究所はOISTと違いリノベーションで整備されましたが、管理上の境界を置かない、研究者をグループわけしないという、オープンラボのコンセプトを導入しました。ブレナー博士にとってMSIはコンセプトの実証実験の場であり、OISTは同様のオープンラボの考えを反映して整備されています。組織運営上も、化学・物理といった各専⾨分野の学部⻑ではなく、教員・学⽣・研究をカバーする3人のディーン(⻑)がおり、全体を⼀気通貫で見ています。各研究棟には物理学・生物学・化学・コンピューター科学・数学・工学の研究室が入っています。

図 4 学部がないラボ(研究室)の配置とマネジメント

一般的な大学院の組織の在り方と校舎の建築計画と比べると、下記のような違いがあります。
OISTに進学した学生は、1年間は特定の研究室に所属せずに、様々な研究室をローテーションをします。この仕組みにより、学生の約30%が当初の研究テーマを変えています。
この考え方はキャンパスの建築計画にも明確に表れています。通常の大学院であれば学部ごとに建物が分かれています。しかし、OISTでは複数ある研究棟がブリッジや地下トンネルで連結された作りになっており、また建物内の各研究室の配置も専門性が異なる研究室が隣接するように、分野横断型の研究を空間的に誘発するように計画されています。
また、空間の話ではありませんが、OISTではハイテク機器の購買と管理を一元化しています。これにより最高の機器が研究室毎に独占されずに、学生や研究者が誰でもが共有できるようにもなっています。

図 5 OISTの研究室の構造
出典 OIST『戦略計画要約 2020-2-30』
写真 5 各研究棟間をつなぐブリッジ

実際にOISTの研究棟を歩いてみると、研究室の中が廊下側からも見えるようにガラス張りになっており、そのガラス張りの部分を活かして研究内容を外部に見せている研究室等も見られます。

写真 6 廊下側から中の様子がみえる研究室
写真 7 研究テーマを展示している研究室の例

研究室同士の交流を促すための工夫として、物理的に研究室同士の垣根を低くしています。従来型の研究室はそれぞれの部屋が壁によって区切られていますが、OISTでは下記の図6のように研究室同士が緩くつながるような設計がされています。これにより隣り合う研究室が連結部分で日常的に交流する機会が生まれます。

図 6 一般的な研究室とOISTの研究室の違い

上記の他にも、様々な関心や専門性を持った研究者や学生の出会いをコーディネートするための空間上の仕組みが見られます。
研究室の外でも、学生や研究者同士の出会いが生まれやすいようなラウンジ的な空間が研究棟内のいたるところに意図的に配置されていることです。キャンパス内を歩いていると、研究棟の様々なところにソファ・椅子、テーブル、ホワイトボードが置かれているラウンジのような空間が目につきます。これも先述のMSIにおける経験が生かされているもので、異なる領域の研究者が意図的に鉢合わせするような状況を作っています。Ha氏によると、当初はMSIでも異なる領域の研究者を共同させることが難しかったため、キッチンを共有するような些細なしかけで、「何をしているの?」というような日常的な会話を生じさせることから始め、それが重要であったということです。
また、OISTのラウンジ空間は、あまり無機質な印象を受けないことも特徴的です。壁の色彩等が暖色系のものを使っていたり、アートが飾られていたり、それらが空間に温かみをもたらしています。これにより、使う人もリラックスがしやすいのではないかと思われます。
その他にも職員がいるエリアと研究室の場所をなるべく近づけることで両者の垣根を低くし、また、教職員の部屋も研究室内に配置せずに、教職員同士での交流を図るために、集中的に配置を行っています。

写真 8 研究棟内のラウンジ(1)
写真 9 研究室棟内のラウンジ空間(2)

また、後述する「OIST Innovation Incubator」というインキュベーション施設内の実験施設を、OISTの学生や研究者が共有することも可能としています。これによる人材の交流も想定されているそうです。

仮説ベースでの実証実験
OISTは、研究機関として持っているシーズを元に、企業等と連携してキャンパス外での様々な実証実験を行っています。広大なキャンパス内の実験も実施されています。キャンパスは私有地であり、大学の裁量が高いという立地を生かして、ソニーコンピピューターサイエンス研究所と、キャンパス内電力の地産地消を目指す「オープンエネルギーシステム」の実証実験が行われました。キャンパス内の住宅棟の屋根にソーラーパネルを設置し、各戸に電力需給管理システムを搭載し、消費者自が生産者としてもエネルギーを供給するネットワークを築き、電力の需給状態を各戸で管理し、足りないところへは地域内で融通する仕組みも構築しました。高温多湿な沖縄の気候下での実証実験は、同様の気候を持つ東南アジアの都市での適用可能性を検証するのにも適しています。

ハイブリッドなネットワーク
OISTの周囲から隔絶された環境は、研究に没頭するのには理想的な環境ですが、外部の人との交流が容易ではないという課題もあります。そこでOISTでは、国内外の研究所や他の大学と連携協定等を締結し、人材交流を図っています。例えば理化学研究所とは、理研の研究者がOISTで講義を行ったり、OISTの大学院生を理研に受け入れてもらって研究指導を行ったり等、人材育成面での共同が見られます。

要素その3 アフォーダビリティとサステナビリティ

パトロン・民間資本・財団
OISTでは「OIST Innovationチーム」が存在し、スタートアップに対して最大1,000万円の資金提供や、OISTの最新のラボ機器の利用、OISTが持つ世界的なネットワーク等を提供する「OIST Innovation Accelerator」というアクセラレーションプログラムを提供しています。
また、研究シーズを活かしたスタートアップがOISTと協働しながら事業成長を支援するための施設である「OIST Innovation Incubator」を整備・運営しています。OISTが周囲と隔絶された環境ではありますが、このような施設を作ることでOISTの研究をビジネスへと昇華させることができるアントレプレナー人材が集まるコミュニティをキャンパス内に作ることで、彼らが持つ実世界での経験を学生らに伝える機会ができています。延べ床面積500㎡のプレハブの建物ですが、本施設の計画を行ったHa氏によると、施設内で試したかった3つのコンセプトを試すことができたということです。1つ目はオープンなコワーキングスペースを作ること、2つ目はウェットラボとモノづくり系のメーカースペースを同じ場所に作ること、3つ目は入居日からすぐに実験ができるような整った環境を作るということです。インキュベーション施設ということで、賃料は極めて安くしていますが、入居には審査があり、OISTに立地する必要があること、沖縄経済の振興に寄与するという視点を有するスタートアップを選定しています。2023年12月現在の最新の情報によると、同施設は今後4倍の規模に拡張されるそうです。

写真 10 シンプルな建物のインキュベーション施設
写真 11 内部が見える施設内のラボスペース

また、OISTの先進的な研究を支えるために2019年に米国でOIST財団が設立され、科学研究分野のリーダーでもある米国との科学連携を深めるとともに、OISTや沖縄への寄付金も募っています。

政策支援・PPP
OISTはその成立過程そのものが沖縄振興策の一環として整備をされていることから、現在もOISTの研究費を含む運営費用は内閣府から拠出されています。特に研究費については、ハイトラストファンディングという手法により、通常の国立大学の約2倍の研究費がOISTに投入されています。ハイトラストファンディングは予算の確保の段階で研究計画を出すというよりも、研究資金が初めに配分され、成果を報告するという仕組みになっています。これにより研究者がより自由度が高い研究を行うことを可能としています。

図 7 ハイトラストファンディングの特徴

リノベーション・ブラウンフィールド

OISTは新設のキャンパスであるため、この項目は該当しません。

要素その4 場の固有性

有形(自然環境・景観・歴史的建造物)
前述のようにOISTは新設の大学院大学で、キャンパスは一から計画・設計・建設されました。その建築設計の中には、地形に沿って建物を配置し、建物間をスカイウォークやトンネルでつなぎ、希少生物の多い沢を残す等、この地の自然環境への配慮を行った設計となっています。

写真 12 研究棟をつなぐスカイウオーク

無形(産業・歴史・文化)
建物の外装については、沖縄の気候や自然環境に配慮した建築の要素が導入されており、沖縄の建築において培われてきた手法が反映されています。例えば沖縄の強い日差しを考慮し、軒の深い庇や本部石灰岩や松の幹色の乾式タイル等を採用することで周辺の自然環境になじむような落ち着いた外観となっています。

新しい文脈の構築
もともと何もなかった場所に、国際的に通用する科学技術に特化した研究施設を作ることで、沖縄経済の振興に資するイノベーションの拠点を新たに整備する、ということ自体が新しい文脈の構築の取組と言えます。
また、国際的なレベルでの環境への配慮を示すために、LEEDのシルバー認証を取得し、先進的な環境保護の場としての新しい方向性も示しています。

OISTの意義:都市から離れた場にありながら外部との連携をオフサイト・オンサイトで行いながらイノベーション拠点として成立している点
オープンイノベーションの前の時代の研究開発施設は往々にして、人里離れた場所にあることが多く、その機能は研究開発に特化しているものが多い時代がありました。一方で、他者との協働や、社会課題解決のための方策が求められる近年のイノベーション拠点の議論のあるべき論の中では、イノベーションディストリクトに代表されるように、イノベーション拠点はアクセスが容易で、アメニティの整っている都市の中にあるべきだということが言われてきました。
OISTはその立地だけを見ると、現在のイノベーション施設のトレンドに反しているように見えます。しかし、それは沖縄経済を科学技術の振興により発展させるという別の目的のためであり、沖縄にあること自体に意味があります。そのような立地の制約とは裏腹に、大学院大学自体が様々な研究領域を超える学際的な研究を積極的に推進し、それがうまく機能するような空間計画を展開している点は、極めて組織的・意図的にイノベーションの場を作り上げている稀有な行為として注目に値します。また、研究がキャンパス内に閉じこもり、研究のための研究とならないように、研究をビジネスに発展させることができる外部の起業家人材やスタートアップを呼び込むためのインキュベーション施設をキャンパス内に作ったり、アクセラレータープログラムを提供したり外から人を呼び込むための様々な対策を打っています。さらには企業を招いて協働研究を行うためのR&Dパークをキャンパス内に作る計画があるなど、研究シーズの商用化を一気通貫で行おうとする姿勢や、本大学院大学のミッションである沖縄振興を実現するための新たな産業の創出までを行おうとする気概が見られます。
もちろんOISTが沖縄振興策という国の政策の一部として整備・運営されており、資金的に恵まれている点もありますが、OISTの事例はどのような場所にあってもやり方次第では現代的なイノベーション拠点となりうる、ということを証明しているのではないでしょうか。

<主要参考文献><Bibliography>
OISTホームページ, 「OISTが世界の研究機関ランキングでトップ10に ー Nature Index正規化ランキング」,
OISTホームページ, 「沖縄科学技術大学院大学と理化学研究所の科学・学術協力に関する基本協定締結について」
OIST ホームページ, 「専門家による検討会がOISTの10年の業績を評価、将来の成長を提言」,
OIST ホームページ,「OIST財団:科学の飛躍的な発展の促進や沖縄の持続的発展、日米関係強化をアメリカからサポート」,  
沖縄県(平成19年), 「沖 縄 科 学 技 術 大 学 院 大 学 周 辺 整 備 基 本 計 画 」,
事業構想HP, (2018年4月号), 「再エネ100%で快適な生活 世界を変える新技術、沖縄で育む」,

写真・図版に出典の記載のないものは「イノベーションとともにある都市研究会」による撮影、及び、OIST関係者へのインタビューや公開資料を元に作成したものです。なおタイトル画像はOISTの下記のURLの画像を使用して作成させていただきました。OISTの関係者の皆様にお礼を申し上げます。
https://groups.oist.jp/ja/conference-venues/access-oist-main-campus-jp

イノベ研の主要メンバーはこの4人です。

諸隈 紅花(執筆者)
日建設計総合研究所 都市部門
主任研究員
博士(工学)。専門は歴史的環境保全、公園の官民連携による活性化。古いものが好きですが、実は新し物好きでもあり、その最先端のイノベーションが都市にどう表出するかに関心があります。
 
石川 貴之
日建設計執行役員 
企画開発部門 新領域開拓グループ プリンシパル
専門は都市計画。大規模再開発やインフラシステムの海外展開業務を経験する中で、様々な地域と組織で人や技術が繋がり、新しい空間やスタイルが生まれる「イノベーション」の空間や仕組みに興味を持っています。
 
中分 毅
元日建設計副社長。40余年の日建グループでの勤務を経て退任。「工場移転跡地を研究開発をテーマとして再生する」プロジェクトに30年程前に参加したのが、イノベーションに関心を持ったきっかけで、その道の達人から教えを受けた「発展的集積構造」に関心を持ち続けています。
 
吉備 友理恵(共著者)
日建設計 企画開発部門 イノベーションデザインセンター
2017年入社。共創やイノベーションについてのリサーチを行いながら、社内外の人・場・知識を繋いでプロジェクトを支援する。
共創を可視化するツール「パーパスモデル」を考案(2022年出版)。

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