仕事場での距離感についての理想

私は、部下というものを持った事がないので、
良い職場作りや結果を出す仕事の仕方がわかっている訳ではない。

だから、以下に書く事は全て、
仕事を成功に導くノウハウではなく、
こうなったらいいな、という
自分にとって願望に過ぎない事は、ご留意いただきたい。


無暗に思想信条に触れない


人から人に何かを教える際、
思想信条に触れる事は必ずしも物事をわかりやすくしないと思う。

人に見せるエクセル資料は、
選択セルの位置を一番左上にしておいた方が見やすい。

それを人に伝えるために必要な情報は本来、
「エクセル資料の保存時に、
選択セルの位置を一番左上にしておいた方が良い。」
だけである。

しかし、ここに何故か捨て台詞のように、
「読む人の事を考えるようにしようね」的な言葉を、
後ろにつける人が多いと感じる。

その余計な言葉がつくせいで、
「あなたは読む人の事を考えられていない人間です」という
ネガティブな情報が付加される事に気付かないものだろうか、
と疑問に思う。

これは「言った側に悪意がなくても、
受け取り手の中で、そういう意味を持ってしまう」という問題でもあるが、
実は言っている側のプライドがにじみ出てしまっている、
という側面もあるのではないだろうか。

本来であれば、コミュニケーションは、
「相手の心理的負担を最小限にして、自分の伝えたい事を述べる」、
というのを目標として行われるべきだと思う。

しかし、現実には、それがお題目と化し、
「自分の責任にならない範囲で最大限相手を傷つける」手段を探してしまっている人がすごく多いと思う。


成長は業務に含まれない


何故仕事場で人を指導する立場の人は、
上に述べたように無暗に思想信条に触れてしまうのだろうか、
と考えた時、
私は、「部下を成長させる大義名分」があるからだと思う。

上司が部下を成長させる必要などないと思う。

私は長い期間、広い意味で見た時、
人間は必ず成長するものだと信じている。

しかし、他人が、
どのタイミングで、どのような成長をするか決める、というのは、
非常にデリケートで難しい問題だと感じる。

その人の人生の最終目標が、必ずしも仕事に関わるものとは限らない。

会社がその人の成長を勝手に定義して、
その通りにその人が成長しても、
その人の人生が有意義になる事は保証されない。

まして、一上司が望む成長というのは、
その人が自分にとって使いやすい人間に成長してくれる事であって、
それが最終的に会社のためになるか、
という事すら保証されているものではない。

自分の思う「成長」のために、
相手の人格を傷つけたり、行動力を奪ってしまった時、
因果関係がはっきり分かる形で現れなければ、
法律で裁かれる事はないかもしれない。

しかし、そこに責任が持てないのに、
自分の立場を利用して、相手から精神的な搾取を行うような人間に
自分はなりたくない。


大切なのは、利害の不一致を受け入れる事


個人と個人の利害が完全に一致する事などあり得ない。

とにかく利害が完全に一致していないと、その人と仲良くなれない、
と考える人もいるが、
お互いの利害の違いを認識した上で、それを尊重しあえるようになるのが、
友情であり、愛情であり、信頼関係だと思う。

上司と部下の利害が完全に一致する事などあり得ないのと同時に、
その上司も別に会社と利害が一致している訳ではない。

「会社のため」、「相手を成長させるため」という大義名分を持つ事で、
自分は利害関係なく純粋で崇高な視点を持っているかのような錯覚をしてしまう事が、
不要な攻撃の原因である気がしてならない。

人である限り、自己顕示欲や競争心が消える事はないし、
何も気にせずに、
自分より弱い立場の人間とコミュニケーションを取っていれば、
自然と相手にマウントを取るような会話が多くなってしまう。

それはその人がダメな人間や悪い人間であるからではなく、
私を含め、人とはそういうものだと思う。

自分自身も会社や部下とは異なる損得勘定があり、
それが人に影響を与える事があると意識すれば、
自分に誰かを攻撃する大義名分がある、などとは思わなくなるのではなかろうか。

道をすれ違う人をいきなり怒鳴りつけたり、
その人にマウントを取る発言をしたら、だいぶん気持ち悪い奴だと思うが、
仕事場にいる人間でも、その原則は変わらない。

仕事というきっかけで出会って、
その後信頼関係を築くかどうか、というのは本人達が望むかどうか次第だ。

仲良くなる事が当たり前だと思ったり、
自分たちは仲が良いから利害が一致している、と勝手に思い込めば、
必ず弱い立場の人の心情が無視される事になる。

人と人は違う、という原則をもっと意識出来れば、
パワハラ、セクハラは少なくなるのかな、と思ったり、なんだったりするのである。


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