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[ 自然の恵み ]:シロクマ文芸部(春と風)

↑↑こちらの企画に参加しました。
春の風は、けっこう大変ですよね〜
というわけで、同じみ「みゆう」と先輩たちのたわいのない会話です。


画像:ときゆみ/illustAC


[ 自然の恵み ]


「春と風なら……夏と雨?」

 と、私は言いました。

 部活の時間。
 大好きすぎる先輩と私は、たわいもない話をしています。

「えっ、なんで雨?」

「夕方になると、降ってくるじゃないですか、ザァー、って」

「あ、夕立ね、確かに」

「涼しくもなって、恵みの雨かなー、なんて」

「でもさぁ」

 って言ったのは、先輩にもれなくついてくる佐藤先輩。

「夏って言ったら、空じゃね」

「確かに、空もいいよね」

 と、先輩が相槌をうつ。
 う〜ん、相槌をうつ姿もステキです。

「でも、空だとなんとなくありがちだから、雨にしようか」

 わーい、先輩は私の提案を受け入れてくれた。
 ありがとうございます! 一生ついていきます!

「じゃぁ、秋は?」

「秋ですか〜」

 と、考えて「秋と葉、かなぁ」と答えると、

「歯?」

 白くて輝いてる前歯を見せてくる先輩。
 そんなステキな表情もできるのですね。
 そのままスクショして保存しておきたいです。

 でも、

「その歯じゃなくて、落ち葉の葉ですよ〜」

「あ、落ち葉かぁ」

 照れくさそうに若干視線を落として頬を人差し指でかくその姿、そんな天然なところもステキです、尊いです。

「確かに」

 と、佐藤先輩が「学校中落ち葉だらけになるもんな」

 あー、確かにと思いながらも、落ち葉に、もう少し秋の哀愁のようなものを想像していた私。

「本当だなぁ、落ち葉回収大変だもんな」

 先輩の返しに何度も頷いている私。

 そして気づいた、

「しかも、秋葉じゃ違う意味にもなりそうでしたね」

「あ、アキバかー」

 いろんな聖地に近づくね。

「なら……」

 と、佐藤先輩は「雲とかは?」

 あ、なるほど、と私は感心してから、

「雲かぁ〜、ひつじとかイワシとか、秋の雲は色々あってステキですよねぇ」

 さすがは、そこそこのイケメンの佐藤先輩、ステキな秋の哀愁です。

「佐藤は空が好きなのか?」

 という先輩に、

「うーん、ま、嫌いじゃないな」

 と、佐藤先輩が答えたので、私はすかさず、

「先輩は好きですか? 空」

 と、聞いてみた。

「そうだなー」

 先輩は少し考えてから、「嫌いじゃないけど、普通かな」

 その惚けた感じの表情が、また愛おしいです先輩!

「じゃぁ、秋は葉と雲、どっちにする?」

「雲の方がステキだと思います」

 うん、本当にそう思った。

「じゃ、秋と雲で決まり、と、次、冬はなんだろう」

 そうだなぁー、冬でしょう、雪かなー、氷かなー、北風かなぁ、なんだろうなぁ……。

 と、考えていると、ボソリとつぶやくように、
 先輩が一言。

「冬と蜜柑、は?」

 急にここへ来て蜜柑ですか先輩!
 日本の冬といえば、こたつに蜜柑、鏡餅にも蜜柑です!
 そのセンスさすがです、サイコーです!
 風とか雨とか空とか葉とか雲とか、自然のものをあげて来たところに、まさかの蜜柑。

「おまえ、急に食べ物はないだろう!」

 と、佐藤先輩。

「えっ」

 と先輩は軽く言ってから、直ぐに続けます

「だって、蜜柑は自然の恵だろ」

 あ、

 その通りです。
 確かに蜜柑は食べ物、でも果物、果実、自然の恵み、まさにそれです。
 私が浅はかでしたスゴイです、さすがです先輩!

「なるほど、自然の恵だな」

 と、佐藤先輩も納得するしかありません。

「私も、いいと思います!」

「じゃぁ、蜜柑で決まりだね」

 嬉しそうな先輩のささやかな笑顔が、宝石のようにキラキラしていて眩しすぎて直視できません。
 まさに自然が私に与えたもうた奇跡の恵!

「まとめると、春と風、夏と雨、秋と雲、冬と蜜柑、ってことで」

 ん?
 改めて聞くと、冬にちょっとした違和感を感じるけど………、まぁいいか。

「ではこれを、我が部の令和版「枕草子」ということにします」

 と、先輩は高らかに宣言し、佐藤先輩と私は同意しました。

 こうして、今日も、たわいもない幸せな一日が過ぎていくのでした。


おしまい

#シロクマ文芸部

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