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【読書記録】傘のさし方がわからない

おすすめ度 ★★★★★

これで岸田奈美さんの既刊本コンプリート!
「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の続編。
今回もたくさん笑かしてもらった。

笑いは前半に寄っていて、スズメバチをルンバで撃退したり、自由が丘でマルチに狙われたりと、岸田さんの凶運を掴む才能に驚かされる。凶運を強運にできるから、物書きでよかった(のか?)

後半はじわじわとじんわりくる話が多い。好きだったものを備忘録。


私は、特に岸田さんと弟の関係が好きだ。

弟は昔から、みんなが上手にできる大抵のことは、みんなより下手だった。うまくしゃべれない、はやく走れない、文字を覚えられない。それでも弟が、まったく悔しそうでも、さみしそうでもなかったのは、とにかく弟がいいやつだったからだ。(略)
そんなわけで、いいやつの弟は「競争すること」「比べられること」「ふつうでいること」から限りなく遠ざかって生きていた。弟はいいやつとして元気に生きているだけで、世界の期待にこたえている。本当はみんな、そうなんだけどね。

弟さん、ほんといい人なんだろうなぁ、とほっこりしてたところに、最後の言葉に泣かされる。
元気に生きてるだけで、世界の期待にこたえてる。そうだよな。


笑い部分でも、泣き部分でも、岸田さんのワードチョイスの巧みさには驚かされる。

「私の自尊心がすこしだけモチャッとなった」という表現。
初めて聞いたけど、なるなる!自尊心がモチャッとなることある!と共感できる。
モヤッとじゃなくて、モチャッとなんだよね。

それから、これも。

救いは、人それぞれに、みにくい形をしている。

その前段に、過去に頭の先からつま先までブラック企業に染められた自分の「拗らせた救いの形」が語られている。友達から手を差し伸べられても、それを救いだと受け取ることができない。

救いは、人それぞれに、みにくい形をしている。
他人にとっては不条理で身勝手極まりないから、みにくい。自分にしかわからない時と場合であるから、みにくい。
「よかったら、うちに泊まりなよ」
パッとみて救いのそれを、「ありがてえなぁ」と受け取れる日もあれば、「邪魔せんといてほしい」と受け取れない日もある。

みにくい、が平仮名なのは、「醜い」と「見にくい」をかけているんだろうか。自分の心の中のみにくいところをズバッと言語化されてしまったような、繊細な部分がザワザワする感覚になる。

ただ、プククと笑いながら読んでいたら、ポロッと泣かされて、ズバッと心を刺してくる。
岸田奈美さん、やっぱ唯一無二のエッセイや。


ここで岸田奈美さん既刊制覇記念に、個人的好きな本ランキング〜!!

1位 もうあかんわ日記

2位 家族だから愛したんじゃなくて愛したのが家族だった

2位 傘のさし方がわからない
同率2位!

3位 飽きっぽいから愛っぽい


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