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【読んだ】山中伸弥 人体を語る

おすすめ度 ★★★★☆

山中伸弥さんと、彼が司会を努めたNHKスペシャル「人体」制作統括者との対談本。
科学者の対談本は好き。話し言葉なのでわかりやすいし、深すぎず浅すぎずで丁度いい。iPS細胞のことも、子どもに軽く教えられるくらいには理解できた(気がする)。

NHKの解説、わかりやすい

NHKのわかりやすい解説って本当にすごいと思う。CGや動画の構成、ナレーションのわかりやすさ、聞きやすさにいつも感心している。
我が家はあまりテレビを見ないのだけど、ディーガがNHKだけ自動録画してくれるので、NHK見る率が高い。
大抵子どもと見るので、チコちゃんとかダーウィンが来た!なんかをよく見る。

NHKスペシャルは極まれにしか見ないので、「人体」は見ていなかった。見ればよかった〜と本を読んで後悔した。めちゃ面白そう。
iPS細胞、再生医療の話がもっと知りたい〜子どもと見たい〜!
対談相手の方も、頭の良さと伝え方のうまさがにじみ出ていて、NHKの解説!という感じだった。

山中伸弥さん、カッコいい

そして、山中伸弥さんがカッコいい。見た目もスマートだし、言うこともスマート、それなのに謙虚。なんだろうね、本当に頭がいい人から漂う雰囲気。
自己顕示欲とか、承認欲求とか、他人への僻みとか、そういうネットに蔓延る言説とは全く違う、気品?のようなものを感じる。
確固として積み重ねてきたものがあって、それに対して過大にも過小にも評価せずありのままを見ているような、真摯な姿が言葉にも現れていた。
カッコいいなぁ、こういう人になりたい(けど、なれる気しない)。

ここからは、心に残った山中さんのカッコいい言葉を書いていく。

教科書にいかに束縛されないか

これまで、教科書で習ったことが間違いだったということが何度もありました。自分で習ってきたこと、見てきたことにいかに束縛されないかが科学者だけでなく一般的な話としても大事だと思います。

昔得た知識にとらわれず、時には否定して、常に学び続けること、新しい考えを入れていくことが研究者の素質だという。

日本は受験勉強が大変なので、教科書に書いてあることや、先生に言われたことに疑問をはさまない習慣がついてしまう人もいるようです。疑問を持ったら試験で良い成績を取れなくなりますから。とにかく覚えて覚えて、そのとおりに答えるという訓練を10年以上続けてしまいます。でも実際には、今回の『人体』でもお伝えしたように、20年前にはみんなが当たり前のように信じてきたことの多くが違ってきている。(中略)
立ち返ってみれば、与えられたものを疑問も持たずに丸覚えするという考え方を変えないと、時代についていけなくなると思います。

これは、研究者じゃなくてもすべての人にいえることだ。我が子にもいいたい。疑問を持つことって面倒だけど、大事なことなんだよ。

情報も技術も、一人で把握するのは不可能

1990年代のヒトゲノム計画では、10年以上の歳月と30億ドルの予算をかけてヒトの30億塩基配列を解読した。それが今の時代は技術の進歩によって1日でできるようになったのだという。

しかし、こんな時代になってくると、最初はどのような技術も原理を理解しようとしましたが、ハッキリ言って本質的にはわからないものも出てきました。(中略)
こうなると、考え方を改めるしか無いのです。僕たちは機械を完全に理解する必要はない。ただこの機械で何ができるのかを理解してそれらを適切に使い分ける。

IT技術でも同じだな、と思う。
私は20年弱こっちの業界をフラフラしているけど、新人の頃は「アセンブリでゴリゴリ書けないと職人とは言えぬ」みたいな人がまだいた。C++とかC#のようなラッピングされた言語は手抜きで、おもちゃみたいなもん、という人もいた。
今やノーコードで簡単なプログラムが作れたり、一方でディープラーニングのような超複雑で難解な仕組みがある世界で、彼らはどうしているんだろう。〇〇でないとダメ、みたいな頑固さは、自分の首を締めるだけになるんじゃないだろうか。


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