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【読んだ】生命式

おすすめ度 ★★★☆☆

noteでおすすめされていて、不思議だったので読んでみた。

死んだ人の肉を食べて、男女が受精して次の命を育むというのが常識になっている世界。死後の儀式は、葬式ではなく、生命式と呼ばれている。
短編小説なのだが、なんとなく全体的に共通しているところが感じられる。

常識や倫理観って、全然絶対的じゃないんだよな。
どの話も、少しずつ狂っていて、でもその世界からみたら、わたしたちの世界も十分に狂っているのだと思う。

主人公はこどもの頃、なにげなく「人間を食べる」という発言をして周りの人に糾弾された経験を持つ。しかし30年後には、人間を食べて、次の生命につなぐことは素晴らしいことだとされるようになった。

「わかるー。人肉を食べたいと思うのって、人間の本能だなぁって思う」
おまえら、ちょっと前までちがうことを本能だって言ってただろ、と言いたくなる。本能なんてこの世にはないんだ。倫理だってない。変容し続けている世界から与えられた、偽りの感覚なんだ。

ほんの数年前、マスクをしない人やコロナにかかった人を糾弾したり、人非人のような扱いをしていた人たちのことを思い出した。
他人事じゃなく、私の倫理観だってそんなもんなんだろうきっと。


短編なので、それぞれに好き嫌いがあったのだけど、後半は私には理解できないものも多かった。
単純に「どういうこと?」となるのもあったし、排泄や食べ物、性行為の描写が気持ち悪くて受け付けないものもあった。
食事前後に読むのはおすすめしない。

と同時に、これを気持ち悪いと感じる私の感覚は、一体どこから来るんだろう?と考えた。
生理的に?本能的に?そんな曖昧なものをふりかざして、この本を批判しようとしている。
そういう自分の中の「正常」が「異常」かもしれない、と考えさせられる。

書きながら意味わからなくなってきた。

でも、「自分の正義や常識を絶対視しない」というのは、これからの世界に必要な感覚だと思う。世界は変容し続けている。


余談だが、「この本ちょっと怖いから読まないほうがいいよ」と息子に言ったら、読んでいた。アマノジャク発動である。
「怖い怖い」と言っていたが、結構性的な話もあったし、難しい心理描写もあったから、どのくらい理解できてるのかわからない。
学校の怪談くらいしか読んだことないのに、えらいもん読んでしまったな息子よ。

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