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【読書記録】教養としての精神医学

おすすめ度 ★★★☆☆

精神医学や発達障害、知的障害に関する本はけっこう読むけど、体系的な理解ができてるか怪しいなぁと思ったので読んでみた。
イラストも多く、文章も簡潔なのでわかりやすい。分厚いけどあっという間に読める。
ただ「教養」と冠してるだけあって、内容は広く浅い。
下手につまみ食いの知識があるからか、ちょっと物足りなさを感じてしまった。


広くあまねく理解を

本の大半は、精神医学にかかわるあらゆる症状や用語の説明だ。

・精神科と心療内科は何が違うのか?
・統合失調症に含まれる症状は?
・自閉スペクトラムと自閉症の違いは?
・強迫症・不安症・対人恐怖症とは?

など、広い範囲でカバーされている。

著者は、精神障害者が社会に出ていく時のいちばんのハードルは「周囲の無理解」であり、他の障害と比べてもノーマライゼーションが進んでいない、と語る。だからこそ、多くの人に知識を広めよう!というスタンスなのだ。
広く浅いとしても、これだけたくさんの知識がまとまっている入門書は他にないんじゃないだろうか。

ミュンヒハウゼン症候群や、カサンドラ症候群など、聞いたことある程度の言葉も理解できて良かった。

物足りなかったところ

病気の症状は書かれているものの、じゃあなぜその症状が現れるのか?がないものが多い。

本人の気質によるのか、外的要因なのか、はたまた原因不明なのか、そこが1番気になるのに!というところで終わってしまう。

特にパニック障害は、以前読んだ「夜明けのすべて」で突然発症した普通の人が出ていたので、知りたかったのに…!

治療法も書かれていないものも多い。
ミュンヒハウゼン症候群は、周囲の関心を集めるために嘘をついてしまう「作為症」のことだが、「薬物治療の対象ではない」と書かれているだけだ。
パーソナリティ障害やサイコパスについても言及があるが、やはり精神科の治療対象ではない、で終わる。じゃあどうすればいいんだー!

なぜそうなるんだろう?そういう人にどう接したら良いんだろう?そもそもサイコパスを理解してノーマライゼーションしちゃあかんのでは…などなど疑問が渦巻く。
そのあたり議論を入れると一冊じゃ追いつかないんだろうけど、原因と対策がないのはちょっとモヤモヤする。

精神医学の歴史

おまけとして書いてあった、精神医学の歴史は興味深かった。

まだまだ差別や無理解はあるものの、魔女や呪いのせいにされたり、座敷牢に閉じ込めたりしていた時代と比べると、世の中は確実に良くなっている。

それは、臨床にあたっている医師や、研究者の努力の賜物だ。そして、私たちのような一般の社会からも偏見が減り、少しずつ理解が広まっているからだと思う。
こういう本を読んで、理解の裾野が広がることにも、きっと意味があるはずだ。

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