見出し画像

【読書記録】障がい者だからって、稼ぎがないと思うなよ。

おすすめ度 ★★★☆☆

ちょっと煽るようなタイトルだけど、ソーシャルファームという新しい障害者雇用の選択肢をわかりやすく示している、良い本だった。


第三の選択肢 ソーシャルファーム

SocialFirm(社会的な企業)とは、障害者雇用にビジネス視点=収益性を考慮した取り組みのことを指す。

現状、障害者が働く選択肢はとても少なく「一般企業の障害者雇用」か「作業所」のほぼ二択。
一般企業は狭き門な上、理解が進んでいるとはいい難い。
作業所は福祉的要素が強く、「工賃」という名のもとに月に数千円程度の賃金しか得ることができない。日給ではなく、月給数千円。低すぎて目を疑った。
(家の近くにもNPOが運営する食堂があり、就労継続支援B型の事業所になっている。美味しくておしゃれなので、時々ランチに行くのだけど、HPで調べたら本当に賃金は月に3,000円ほどだった。ショック…)

理想と現実

本では、ソーシャルファームの成功例を4つ紹介している。予約の取れないフレンチ、年商2億円のクッキーなど、プロジェクトXになりそうなすごい話だ。すごいんだけど、すごすぎて「皆がこうして働けるわけではないよなぁ」と思ってしまう。

障害者雇用に批判的な人は一定数いる。理由は「自分は優遇されてないのに」という僻みの気持ちじゃないだろうか。
もし、誰もが満足に働いて、やりがいをもてる社会なら、批判はグッと減ると思う。
だけど現実には、障害者手帳はないけどグレーゾーンの人、シングルマザー、介護や育児を抱えた人など、生きづらさを抱えた人がたくさんいる。

あんまり障がい者だけが集まりすぎるのも異常な世界やと、ずっと言ってるんです。(中略)障がい者だけやないんやで、しんどいのは、って声が聞こえるようになった。障がい者はええなあ、まだ医療費控除とか年金とかもらえて、とかね。でも考えたらそうか、皆しんどいもんなぁって。

Case2 がんばカンパニー所長のことば

みんなしんどい。「優しさが足りない」なんて単純な問題じゃない。

障がい者福祉は「与えられる」ものなのか

印象的だったのは、障がい者に関する法律に注目したところ。

「すべて障がい者は個人の尊厳が重んぜられ」「その尊厳にふさわしい生活を保証される権利を有する」「参加する権利を与えられる
と、判を押したように受身の表現が用いられているのだ。障がい者が誰かに何かをされる存在であることを示し、権利主体として捉えられていない(後略)

言われるまで考えもしなかったけど、確かにそうだ。
というか、福祉という考え方自体にもそういう思い込みがあるんじゃないか。何かをしてあげなきゃいけない、与えてあげなきゃいけない、みたいな。


福祉関係の本を読んでいると、希望と絶望がない交ぜになった複雑な気持ちになる。こういう志の高い取り組みを応援したい、世界は少しずつよくなっているはずだと思う一方で、これでうまくいくのはごく一部だろうな、美談に過ぎないんじゃないかという気持ちも湧いてくる。
とりあえず、がんばカンパニーさんのクッキー美味しそうなので、お取り寄せしてみようかな。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?