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【読んだ】トットちゃんとトットちゃんたち

おすすめ度 ★★★★★

これで4冊めのトットちゃん読書記録。
中学生の時に読んで衝撃を受けたので、息子にも読ませたいと思っていた。

恵まれない子どもたち、をリアルに知ったはじめての本

20数年前、この本を初めて読んだ時の話をする。

小さい頃から、ご飯を残したり水を出しっぱなしにして「世界にはご飯も食べられない子達がいるんだよ!」と叱られた。
そういう文脈で聞いていたからか、「あーわかったわかった」とひねくれた気持ちで受け取ってした。

この本で初めてリアルな状況を知った。
たくさんの写真と黒柳さんらしい細かい描写がショッキングだった。
「私は何も知らなかったんだ」と呆然とした。

忘れられない2つの話

今でも強烈に覚えている話が2つある。

一つはベトナム戦争の枯葉剤の影響で、生まれながらに目がない少女。当時持っていたハードカバーの本には彼女の写真が1ページどんと載っていた(残念ながら、新書の方には写真がなかった)。

失礼極まりないけれど、目の部分が皮膚で覆われたその顔がとにかく怖くて、トイレに行けないほど怖がった。
そして、それが枯葉剤のせいで起きたこと、戦争が終わっても負の影響をもたらしていることに強い憤りを感じた。

もう一つは、戦闘から避難するために家を離れた女の子の話。
避難する時に、大好きだったぬいぐるみを置いていかざるを得ず、戦闘が終わって家に戻ると、自分の部屋にそのぬいぐるみがおいてあった。

「ごめんなさいね、連れていかなくて。でも、待っててくれたのね」
たぶん、その子は、こんな風に思って、ぬいぐるみにかけよって、
ぬいぐるみを抱きしめた。
その時、仕掛けられた爆弾が爆発して、その子は、死んだ。

子どもの心理をわかったうえで、ぬいぐるみに爆弾を仕掛ける。
どうしてそんなひどいことができるんだろう、と涙が止まらなかった。
今でも泣いてしまう。

子どもたちにもこの話をしたのだけれど、娘は大泣きしてしまった。
なんでそんな怖い話するの!!とブチ切れながら泣いていた。
これが現実で、戦争はそんなに恐ろしいものだ、と学ぶには幼すぎる年齢だったんだろう。ちいちゃんのかげおくりだって、3年生だもんね。

刺激的なニュースに、慣れすぎた今

以前の記事でも書いたが、5歳未満で死んでしまう子供の数は、この本が書かれた時代と比べて半分以下に減っている。

インターネットが普及して、情報が手に入りやすくなり、支援もしやすくなった。
それは、確実に良いことだと思う。

一方で、情報の洪水の中に埋もれてしまい「あーわかったわかった」状態になりやすい面もある。

今でも、骨と皮だけになった子供の写真をみると、胸がえぐられるように辛い。
だけど私は大人になったから、なぜ戦争がおきるのか、その理由を昔よりは少しわかっている
政治、宗教、歴史、お金、色んなものが複雑に絡み合っていること。
世界平和を叫ぶだけでは、簡単に解決できないことも理解している。

そのためか最近ニュースを見ても「あーわかったわかった」になりがちだった。

今ネット上には、この本のようなストーリーが無数にある。
いろんな団体や個人が、BGMや動画付きで見やすくわかりやすく発信している。
多くはユニセフのように支援を目的にしているが、時に政治的な主張のダシに使われていることもある。
そういう情報に自分を晒しすぎると、疲弊してしまうから、最近はあまり見ないようにしていた。

言い訳だな。

疲弊するから情報を遮断するのは、時には必要かもしれない。
だけどネットで見ようが見なかろうが、現実は変わらない。

じゃあ、どうすれば良いのか。
ずっと悩んでいる。

少なくとも、評論家のように背景を語り、わかったふりをするのはやめよう。
きっと今もそこにいる、たくさんのトットちゃんたちのことを思って、できる行動をしていきたい。
(トットとはスワヒリ語で「子ども」という意味だそう)

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