貧しい猫

お金がないと、話すらきいてもらえない?

僕の迷惑メールボックスには、時々、見ず知らずの人からメールが届く。

だいたいはお金の話だ。初月から30万円アプリで稼ぐ方法だとか、FXの裏案件だとか、新時代の稼ぎ方だとか。

なぜ僕のアドレスを知っているのだろうかと思うが、そうしたメールは削除しても削除しても、手を変え品を変えやってくる。

「お金がないと、話すら聞いてもらえないのか」

これは、先日の円坐で奥さんが漏らした嘆きだ。
前後の脈絡を忘れてしまったから、どういう趣旨だったかは思い出せない。
でも、僕にとっては衝撃的な一言だった。

どこに行くにも、なにをするにもお金がいる。
そして、お金がない人の前では、ばたんと戸が閉められてしまう。
都市の中で、身寄りもなく、ひとりぼっち。誰も助けてくれない。

たった一言で、そんな光景が目に浮かんだ。鮮明に。

それは僕の中にあるディストピアだった。

父もよく同じようなことを言った。

歳をとると、働けなくなって、年金しかなくなって、お金がないと介護も受けられないし、病院でも死ねない。

僕から見ると、父には十分なお金があるのに、こぼれる愚痴は止まなかった。

一方、僕の所属しているNPOや福祉の世界では「お金がなくても話をきいてもらえる」世界をつくろうと頑張っている。でも、実際のところ、お金がなくて大変だ。

もう一人職員がいれば手が届くかもしれないけれど、雇えない。
寄付や会費もそんなに簡単には集まらない。

それでみんな時間を削ってがんばっている。
でも、そのせいで支援に必要なゆとりがなくなることも多い。

スピリチュアルの業界では「お金の流れをよくする」ことをいろんな人が教えている。

これだけたくさんの人が教えられるんだから、僕が思うより簡単なことなのかもしれない。実際よくなる人もいるのだろう。でも、彼らがそれなりの収入を得ているということは「お金の流れがよくない」お客さんのほうが多いということだ。

そして、ニュースではまた児童が虐待されて亡くなってしまった。

僕は難しいことを考えすぎなのだろうか。
なんだか世界がちぎれてしまいそうに思える。

「お金がないと、話すら聞いてもらえないのか」

あの一言にこたえる言葉が、僕にはない。

僕は閉められた戸の前で絶望する一人であり、仕事をして対価を得る者としては、戸を閉める人にもなりうる。

地獄、というのは、もしかしたらもうここにあるのかもしれない。

そんなことを言いながら、また忘れて、僕は日常の暮らしに戻っていく。

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