2019年もやい展金沢 全体声明文

来年3月、金沢21世紀美術館にて行われる「もやい展金沢」の全体声明文が発表されました。プレスリリースもされる予定です。まずはこちらに転載します。

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もやい展 金沢

震災8年 13人の目が捉えた福島

 荒縄の強い結びである「もやい」。  
 それが転じて協同作業、さらには人々の結びつきやつながりをも意味する言葉です。
 東日本大震災に起因する東電福島原発事故はわたしたちが連綿と築いてきた人々との「もやい」、そして自然や大地との「もやい」を、ことごとく奪い去ってきました。目に見えない放射能は刃となって、わたしたちが無意識のうちに築き上げてきた大切な「もやい」を切り裂き分断させてしまったのです。原発事故の最大の災禍は、「もやい」の分断にあるのではないでしょうか。
 じつはこの言葉は戦後最大の公害病、水俣病の被害者の皆さんが社会運動をする上で生み出した思想が導き出した一つのキーワードです。水俣病の発生で切り裂かれた地域社会、被害者加害者を含めた人々の荒れ果てた人間関係、そして恵みを与えてくれた大切な海は荒れ果てなんとなく距離ができてしまった、、、反駁しあうことからは何も生まれないことに気づいたみなさんは再度「もやい」を直し、再び共生・協同の価値観を生み出せないかと道を探り一つの思想を生み出します。ただしその道を探り出すまでは長い年月の苦しみがあったことは言うまでもありません。
 東電福島原発事故から7年が過ぎました。表面上は復興が加速化されているように見えますが、切り裂かれた「もやい」が生み出した「分断」は深く潜伏し、人々は目を閉ざし口を閉じることによって横たわる大きな溝を未だ埋められずにいることは明らかです。
 その溝を埋めるための小さなきっかけは、電力という「近代」の象徴に依拠してきた我々が、原発事故が引き起こした様々な状況を「見て」、「知って」、「考える」、そして犠牲による繁栄を享受することの原罪性に気づくことかもしれません。
 表現を生業にしているものにとって、東電福島事故は避けては通れないテーマでした。あの日から7年が過ぎた今、各々が各々の手法で表現してきたポスト原発事故のメッセージを、まずは手を取り合ってひとまとめに出来ないか、、、表現者の「もやい」が分断の溝が生み出す沈黙を打破することができないか、、、。  そういった思いで今回の展示が実現しました。
 集まった表現者たちが各々の軸で捉えた福島を、様々な方法で表現した空間が、ポスト原発事故におけるみなさんの様々な思いや記憶を交錯させる場となり、未来へとつなぐ新たな価値観創出のゆりかごとなってくれることを願います。

2018年7月17日

もやい展金沢実行委員会                

中筋純
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僕も含めた出展者個人の声明文も後日発表予定です。
残り半年あまり、悔いのないよう制作に励もうと思います。
よろしくお願いします。

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