映画評「パパはわるものチャンピオン」

少し前になるのですが、娘3人を連れて「パパはわるものチャンピオン」を観に行きました。

「パパはわるものチャンピオン」の主人公は、客席からブーイングを浴びる「悪役レスラー」大村孝志。ただ大村は、かつて人気も実力も兼ね備えたエースレスラーでした。妻の詩織は変わらず応援してくれるのですが、孝志は自分の仕事を9歳になった息子の祥太に打ち明けられずにいました。

だがある日、偶然から祥太にバレ、「わるもののパパなんて大嫌いだ」と言われてしまう。しかし、そんな孝志に、名誉を取り戻すチャンスが訪れます。かつての孝志に憧れていたトップレスラーのドラゴンジョージが、孝志をタイトルマッチの相手に指名します。自らのプライドと家族への愛のために、全く勝ち目のない戦いに立ち上がる孝志。果たして、孝志が決意したすべてを賭けた危険な技とは? そして息子との絆を取り戻すことは出来るのか──?

ストーリーを知っていたので、「子供と一緒に楽しめる映画だろう(実は子供と一緒に楽しめる映画は少ない)」と思っていったのですが、予想通りでした。3歳の娘も退屈せずに最後まで見てくれて、「面白かった!」と言ってました。連れて行ってよかった。

この映画のテーマは、2つあります。いずれも映画のテーマとしては普遍的なテーマです。

誰もがいくつもの顔をもって生きている

1つ目は「二面性」です。

「家庭と仕事」「学校と家庭」「プロレスファンと仕事」といった、誰もがかかえている「二面性」を、主人公だけでなく、息子、映画に登場するプロレスファン、プロレスラー、登場人物それぞれの立場で描いています。人は1つの顔だけで生きているわけではありません。そして、いくつもの顔があるから人は生きていけるのであり、葛藤をかかえるのかもしれません。

僕は映画を見ながら、「映画でこんなに泣いたことがない」というくらい泣いてしまいました。たぶん、「家庭と仕事」「学校と家庭」「プロレスファンと仕事」といったモチーフは、僕にとって普段から悩んでいることでもあります。映画のシーンと自分自身の状況がシンクロしてしまい、ぐっときてしまいました。

今を生きる

2つ目は、「今を生きる」です。

印象に残っているのは、自分が悪役レスラーであることが息子にバレ、悩む主人公に対して、妻の詩織が語ったこんな言葉です。

「(息子は)昔のあなたなんて知らないんだからね。」

この言葉をきっかけに主人公は大きく変わり、昔の自分にとらわれることなく、今の自分を肯定し、今の自分を精一杯生きることを選択します。

変化が大きな時代は、過去の自分にとらわれていると、なかなか前に進めませんし、変化に取り残されてしまいます。ありのままに、今の自分を受け入れ、今の自分がやれることをやる。その大切さを教えてくれます。

棚橋弘至は「今を生きる」男の象徴

主人公は新日本プロレスの棚橋弘至選手。ただ映画で描かれるのは、明るく、かっこいい、普段の棚橋弘至の姿ではなく、家庭や仕事で悩む、一人の人間としての棚橋弘至の姿です。棚橋さんの人間としての姿をそのまま切り取ることを選んだ演出によって、棚橋さんの人間としての魅力が作品に反映されており、光と陰をより際立たせています。

実は撮影当時の棚橋さんは、怪我で欠場が続き、満足なコンディションで戦えない状態が続いていました。悩み苦しんでいた棚橋さんも、もしかしたら映画の撮影を通じて「今を生きる」ことの大切さを思い出したのかもしれません。現在は新日本プロレスのマットで、「今の自分ができること」を最大限に発揮し、会場に集まったファンを喜ばせています。

家族で観に行って、親も子供も楽しめる作品は実は少ないのです。でもこの作品は、親子で楽しめる作品です。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

サポートと激励や感想メッセージありがとうございます! いただいたサポートは移動費や機材補強などにありがたく遣わせていただきます!!

目を揃えよう
28

西原雄一

note編集部のお気に入り記事

様々なジャンルでnote編集部がお気に入りの記事をまとめていきます。