「何でそれをやるの？」「何でそうしたいの？」「そんなことして何になるの？」…こんな質問をされたときにどう答えるだろう？何について聞かれたかにもよるが、多分ほとんどの人は困るんじゃないだろうか？

こういう単純な質問ほど意外とパッと答えられない。多分「何でって……欲しかったから(したかったから)だけど…」みたいに答えると思う。ではハッキリ答えられないのは良くないのだろうか、というと僕はそうは思わない。むしろハキハキと「こうこうこうでこうだからです！」みたいにアレコレ理路整然と理屈を並べられる人ほど僕は「どうなの？」と思う。

嘘つきほどよく喋る。人は嘘をつくとき…つまり後ろめたいものを隠すとき、本心がバレたくないとき、自信の無さや後悔や負けや知識不足などを認められない悟られたくないときほど多弁になる。何だかんだ言って結局行動しない人ほど言い訳ばかり並べるように。

だからこそ、「何でそれをやるの？」「何でそうしたいの？」「そんなことして何になるの？」と聞かれたときにハキハキ理由を並べられる人を見ると「それ本心？」と思ってしまう。「男だから…女性として…社会のために…将来のために…これからは○○の時代だから…こうしなければならないから…△△である以上こうするべきだ…」と、何となく崇高っぽい感じに聞こえるようなワードを出されると余計に「それ本心？」って思ってしまう。

そもそも人が行動をするのにそんなに理由があるだろうか？細かい理由がヒョイヒョイと上手く並べられるものだろうか？

僕は子供が欲しいと思ったことは無い。だから子供が欲しい人の気持ちは少しも分からない。でも子供を持った人たちを見ると、子供を持つことに興味が無い僕までニヤけてしまうほど幸せオーラが伝わってくるのだから、ご本人らが子供が欲しかったのが間違いないことくらいは理解できる。

じゃあ幸せオーラだだ漏れの人たちに「何で子供を作ったの？」「何で子供が欲しかったの？」「子供育てて何になるの？」なんて聞いて(念のために言っておきますが僕はこんな
質問を直接人にすることはありません。最後の質問なんか絶対ダメでしょ！)「こうこうこうでああでこうだから！」などとアレコレと細かい理屈が出てくるだろうか？まして男としてだの社会だの将来だのするべきだのと聞こえのいいワードがスルスル出てくるだろうか？まず出てこないだろう。

「欲しかったから」みたいな、言葉にしたら凄く単純な理由しか出てこないと思う。質問の答えになっていない気すらするけど、僕には理解できないだけで本人にはちゃんと理由になっているんだと思う。

僕はこういう欲求こそ、その人が持つ『根源的な欲求』なんじゃないかと思っている。

世間体とか時代とか周りの目とか同調圧力とか成長する過程で周りの大人から受けた影響とか関係なく、『自分』が『心から』欲しがっている『根源的な欲求』だと。

高級車を例に上げる。

チヤホヤされたいから高級車に乗りたいAさんは、高級車を何台所有したところでチヤホヤされなければ満たされない。高級車がステータスにならない風潮になったらAさんにとって高級車はただの高いガラクタになる。高級車ではないステータスを所有してチヤホヤされれば満たされる。根源的な欲求は高級車ではなくチヤホヤだから。

けど、高級車がただ欲しいだけで別にチヤホヤなんかどうでもいいBさんは、高級車を所有すればチヤホヤされなくたって満たされる。ステータスにならない風潮になろうがBさんにとって高級車はずっと価値あるものだ。高級車ではないステータスを所有してチヤホヤされたって満たされない。根源的な欲求はチヤホヤではなく高級車だから。

『高級車の所有』という事実は同じでも、根源的な欲求が何なのかによって結果は真逆になる。

大切なのは自分の根源的な欲求が何なのかを知ることなんじゃないだろうか？いつの間にか社会とか立場とか、男らしさ女らしさとか周りの目なんかの外的要因で自分の根源的な欲求が分からなくなっている人が多いんじゃないだろうか？

根源的な欲求が分からなくなり、さっきのAさんが高級車を手に入れるために頑張ったら？Bさんがチヤホヤされるために頑張ったら？多分どちらも「周りからは上手く行っているように見えるけど実は幸せじゃない人」になるだけなんじゃないだろうか？

僕は自分の根源的な欲求が分からない。自分が何で満たされるのかが分からない。でも、何が嬉しかったのか、何が楽しかったのか、何を失いたくなかったのか、何を失っても何とも思わなかったのか、何を得てもつまらなかったのか、何に虚しさを覚えたのか、何に夢中になったのか…そんな自問自答を繰り返すうちに、少しずつ輪郭が見えてきた気がする。自分が何をすべきで何をしないべきかが分かってきた気がする。

あなたは「何でそれをするの？」「何でそうしたいの？」「そんなことして何になるの？」