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つくりごと

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メロンソーダ (ショートショート)

メロンソーダ (ショートショート)

「のの、別れよっか」
「私の名前は『のの、別れよっか』ではなく、『ののか』だけど?」
「…知ってる」

目の前のジンジャーエールをストローで意味もなくかき混ぜながら、無意味な会話に答える彼。
あぁ、この人は私の答えなんて欲してないんだ。
それでも、私には聞く権利がある。

「なんで?」
「んー、ののってさ、みんなのマスコット的な存在じゃん? 愛されイジラレキャラ? で、ののもそれが楽しそうじゃん?

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海へドライブ

海へドライブ

なんだか、いっぱいいっぱいになって

なにもかもが、嫌になって

海にでも行きたいや

そう、つぶやいたら

黙って、海までのドライブへ

自転車の後ろは

座り心地は悪いけど

その背中があれば安心安全

イルミネーションがにじんでる

イルミネーションがにじんでる

キラキラと光るイルミネーション。
いろいろな人が、その光に吸い寄せられる。

くたびれた感じのあの人は、疲れた目をマッサージ。
ぼやけた光にちょっと癒されているみたい。
フッと口許がゆるんだもの。

手すりにもたれてボーっと見ているあの子の目には涙がにじんでる。
選ばれなかった自分を悲しんでいるのか、
選ばなかった相手を恨んでいるのか。
歩き出すには、もう少し時間がかかりそう。

あちらには幸せそ

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帰り道

急に寒くなった。

吐く息も白い。

って、マスクしてるから、見えないか。

手袋をしてない、むき出しの手が冷たそう。

思わず君の手を取り、ポケットに。

って、これはソーシャルディスタンスに反するから、よくないぞ。

心の中で、コロナを言い訳に、距離を取り、君の斜め後ろを歩く夜。

いつか、二人の、懐かしい一場面となるのかな。

催花雨

催花雨

東京に着いたら雨だった。
前日まで、「晴れて3月らしい暖かさ」とニュースでは言っていたのに、今日はちょっと肌寒い。

4月からの大学生活に、心踊らせて、東京への第一歩を踏み出したかったけど、この雨と寒さは、ちょっぴり不安の方が大きくなる。
そんなことはおくびにも出さないけど。

電車を乗り継ぎ、居候先の祖母の家まで歩いて向かっている時も、雨はまだ降り続いていた。桜の蕾も寒さに縮こまっているようだ。

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朝になったら

朝になったら

朝だよ

朝だね

起きなきゃ

もう少しこのままで

うーん それはよくないかな

やっぱり起きなきゃダメ?

そうだね

そっか

じゃあ…

…さよなら

「好き」にしがみつく

「おっ、満月じゃん」
「月、きれいだね」

頭に文学の「ぶ」の字もない奴に、こっそり伝える「好き」の気持ち

席が離れて、会話が減った

クラスが別れて、会わなくなった

「好きだったのにな」

それは、ほんとに過去形なのか

つぶやいたら胸が痛くなった

まだ「好き」にしがみついてる