百円の恋

主題歌:「百八円の恋」クリープハイプ

これだけで、底辺メンヘラやばめな20代後半の女が主人公、という予感をさせてくれる。偏見に満ちているね俺は。自分も20代後半彼女無し未婚なのにね。正解は「32歳職歴なし親のすねかじり女」でしたが。

予告はこちら。いかに主人公の安藤サクラが底辺であるとわかってもらえるだろう。


安藤サクラのことは「なんとなく知ってるし、ちらっと見たことがある」程度だった。あと柄本佑の嫁。

これを観て凄さがわかった。

序盤の暗さ、人として客観的に「どうしようもないヤツだ」というのが観てとれる。何言ってるか全然わからないし表情は死んでる。バイトの同僚にレイプされる時にはじめて表情が変わったくらいだ。それくらい社会的な人間としての機能が抜け落ちている。

そこからボクシングを始めて、動きに慣れ、家を出ていった男という殴りたい対象ができた後の変貌。ボクシングに取り組む目つきが完全に変わる。それからの安藤サクラの動きが凄いのだ。本当に同じ人か? と思うほど洗練された動きに驚いた。最初は汚い茶色プリンだったのが、最後にはほぼ黒髪に戻って、これからの人生の再スタートを予感させてくれる。

今は負けたけど、まだまだこっからだぞこの野郎! ってな感じの締め方も好きでした。

一番良かったのは、一人暮らしの住居にやってきたお父さんと居酒屋で飲むシーン。家を追い出された娘に対して、やりたいことはやれ、俺みたいになるな、家を出て変わったな、と優しい言葉をかける。このお父さんが優しすぎるせいで家庭崩壊したんやろがい! と内心思ったけど。このシーンでの安藤サクラの受け答えだけで成長がわかる。

ボクシングは人を変え、ムカつく登場人物を殴るのに良い舞台装置ですね。ちなみにこの作品で殴られるのは、クズだが比較的マトモな劇団ひとりである。かわいそうに。


あと、この映画自体で一番すごいと思ったのは、自分も同じ生活をしているような気持ちになること。序盤は崩壊した家庭の中でため息が出るし、バイトを始めて一人暮らしをするあたりで、気分が六畳一間のボロアパートに住んでいるような気持ちになった。



完全に蛇足ですが、主題歌「百八円の恋」は全然売れなかったらしい。結構好きな曲なんだけど、MVの最後にくっついているバレーの動画がまぁ「クリープハイプっすね」みたいな感じです。ファンの人がいたらすまん。



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