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まわり道ばかり

「やりたいことが無いんです」という人がいた。
わたしよりも年下の、わたしと同じ、就活生だった。

会社の人は、「そんなもんだよね」と言っていた。
わたしは、黙って笑いながら、「そんなもんなのか?」と思っていた。

わたしは、やりたいことがなかったことがない。
大抵いつも、何かを目指している。

そんなわたしに、やりたいことがあって羨ましい、と言う人がいる。
ほめてもらっているのだろうけれど、ぴんとこない。
「人間に生まれてうらやましい」と言われているようなものだ。
わたしにとって、何かやりたいことがあるのは当たり前で、羨ましがられるようなものじゃない。

やりたいことがあると、なんで「いいね」と言われるんだろう。

やりたいことがあるからって、叶うわけじゃない。
振り返ると何かを渇望して、必死で頑張って、届かないことばかりだった。

頑張れば叶うなんて、うそだ。
そう思わざるを得ないくらい、これまで何度も打ちのめされてきた。

こんなにしんどいんだから、もうやりたいことなんていらないと思うのに、
気付くと心が動いている。
これからもきっとこうして、しんどいしんどいと言いながら生きていくんだと思う。

挑戦しても達成できなくて、傍から見たら、まわり道ばかりの人生だ。
時々、いちばん欲しいものは手に入らないのかもしれない、と暗澹たる気持ちになる。
挑戦することに価値があるのはわかっているけれど、そんな慰めいらないよ、結局何も成し遂げてないもの、と言いたくなる。

そうやっていじけていても仕方ないから、まわり道したことで出会えた人や得られたもののことを考える。
その美しさやいとおしさを思い返して、よしよし、やっぱりこれでよかった、と思い直す。

まわり道がいいとは、決して言わないけれど。
それなりには、楽しく生きている。
達成できなかった目標の意味は、問うていくしかないけれど。
きっと何か意味があるんだと、思いたい。


最後までお読みいただきありがとうございます。 これからもたくさん書いていきますので、また会えますように。