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【掌編小説】「思い出屋」

 遠くに祭囃子、参道に並んだ提灯と屋台。
 俺は、薄暗い杜の中にいた。
 頭がぼうっとして、何も思い出せない。
「兄ちゃん、どないしたんや。」
 不意に背後から声をかけられ、心臓が飛び上がる。
 振り返ると、そこにぽつんと屋台があった。
 25歳くらいの派手な格好をした、愛想の良い男が店番らしい。
 看板は「思い出屋」とある。
「思い出屋って、何です?」
「そのまんまや、思い出を売り買いさせてもらってるんや。」
「…思い出を?どうやって?」
「やってみるか?」
 男の笑みに薄気味悪さを覚え、俺は首を横に振り、慌ててその場を立ち去った。
  「毎度あり」
 気のせいだろうか、男が小さく言ったのが聞こえた。



 随分と昔に書いた、短い物語です。
 今の名前ではなく、他の名前でとあるところで発表した作品で、動きのないホームページにも載せてます。
 400字原稿用紙一枚で、どこまで表現できるかというのをやっていました。
 ふと思い出して、ここで晒してみます。

    掌小説かなと思っていたのですけど、掌編小説と呼ぶのが正しいのかな?
    創作からは遠のいてしまっていたので、よく分からないのですが

 自分自身の刺激にもなるし
 こういうのも、また書けたらなぁと
 と、ぼんやり考えています。


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