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愛すべき運転士さん

最寄り駅までバスを乗るのが通常な距離に住んでいるので、よくバスを使っている。

大体乗りたい電車のぎりぎりのバスに乗っているので、また待ち合わせぎりぎりの電車に乗る予定をしているので、一番前に立つことが多い。
運転士さんによって、ゆっくり安全運転される方や、なかなか右折しない方もいて、やきもきする。
まっすぐの道で、車がまったくない時などは、心の中で「いけーーーーーー!!!!」と叫んでいる。
が、もちろんのこと、運転士さんはそんな私の心情などおかまいなしで、安全運転で運行される。

そんな運転士さん達の中には個性派もいらして、「あ、この人だ」と密かに思うこともしばしば。

例えば、車内アナウンスがとんでもなく丁寧で、もはや録音されているアナウンスはBGM並の運転士さん。
はきはきと明るい声で、「今日も◯◯バスをご利用くださりありがとうございます!」と言ってくれるばかりか、降車のボタンを押す人がいないバス停に近付くと「お降りの方、いらっしゃいませんか〜?」と聞く丁寧さ。
でも穏やかな物腰でも強い意思をお持ちで、降りるお客さんがまだバスが停まってないのに動くと、「バスが停まってドアが開くまでお待ち下さい」をそのお客さんが止まるまで言う。
安全への意識が強い素敵な運転士さんなのだ。

こんな運転士さんもいる。
どんなアナウンスも「しゃしゃしゃしゃー」にしか聞こえない運転士さん。
「ありがとうございました」も「次は◯◯です」も「しゃしゃしゃしゃー」にしか聞こえない。
よーーーく聞いたら停車駅の名前を言ってるのが聞こえるが、ぼんやり聞くと「しゃしゃしゃしゃー」。
その割にはというと失礼だが、録音のアナウンスに負けずと、ほぼアナウンスをご自分でされる。
その運転士さんの名誉のために言うと、「毎度◯◯バスをご利用いただきありがとうございます」みたいな長い文章だと、単語は聞こえる。ただし、「毎度、バス、ご利用しゃしゃしゃー」みたいな感じ。
勝手におしゃべりが得意でない運転士さんと見ているのだが、それでも律儀にアナウンスしてくれる素敵な運転士さんなのだ。

最後にご紹介したいのが、びっくりするくらい低温の運転士さんだ。
まるで地の底から這うような声というのがしっくりなくらいの「ありがとうございましたー」が響く。
夜のバスだと雰囲気抜群で、なんだかわくわくする。
「地獄バス」とか「妖怪バス」とか、はたまた「百鬼夜行バス」とか、妄想が膨らむのだ。
そうなるといつもの停車駅の名前が「暗闇一丁目」とかに聞こえて仕方がない。
それでいて、当たり前のことながら安全運転の穏やかさ。
案外、妖怪バスだって人に気付かれずに静かに運行されているんです、なんてね。
想像膨らむ素敵な声をした運転士さんなのだ。

私達の良き足となってくれるバス。
インフラとして重要であるだけではなく、愛すべき運転士さん達が運んでくれることで、愛着わくバスになるのであった。

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