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よくある話

普段元気な人は病院行くのをためらう。これは私が勝手に抱いている印象である。
そう言っておきながら、思いっきり自分がその中の一人となっている。
有り余るほどの体力があるというのが、自他ともに共有する私への評価である。
病気にもあまりかからず、お医者さんにお世話になることは年1回あるかないか。
ちょっと風邪気味…と思っても、一晩寝れば元気になる。逆に寝込むと「鬼の霍乱」と言われるくらいである。
最近は歳のせいか風邪をひきやすくなった気もするが…

そうなってくると、病院に行くのが日常から遠く離れているので、病院に行くのをためらってしまう。
というより病院に行く選択肢を思いつかないというのが近いかもしれない。そしていよいよ病院に行ったほうがいいだろうなとなった時に、病院怖い…となるのだ。

去年、親指の爪のトラブルが発生した。
足袋をはいた時に、その縫い目が爪と肉の間にはまってしまって、気付いたらはがれている感じになったのだ。
ひえぇぇぇっとなって、絆創膏をつけて、爪と肉を合わせようとした。

それを続けて半年ばかり。
いっこうにこれまでの爪の形にならない。
むしろ絆創膏を貼りすぎたせいか、爪がガサガサになってきてしまった。
それならばと爪集中補正クリームとやらを買ってきて塗り、絆創膏の代わりに親指サックを履くようにした。

その頃には病院行かないといけないんだろうなと薄々感じていた。
でも何科に行けばいいのか分からないしなぁと、それをいいことにほっておいた。

また月日が経ち、どうやら爪のトラブルは皮膚科ということが分かった。
そうなると、変な病気を言われたらどうしようとか、治療が痛かったらどうしようとか、病院に対する恐怖心がむくむく湧く。
早く行かないと、病気だったらますます病状が悪くなるだろうし、治療も痛くなるだろう。そんなのは理屈で分かっている。

ついに、この爪の事情を知った母に、どの病院が良いという情報まで与えられた。
観念して予約することになった…

そして本日、その皮膚科に行ってきた。
問診票に症状を書くのもなんて書いたらいいかためらう。とりあえず「親指の爪がはがれそう」と書いた。
待合室で本を読んで待つが、ドキドキして同じページを何度も読むはめになった。

ついに呼ばれて中に入ると、先生が「じゃあここに足上げて見せて」と言われる。
靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、足を乗せると…
「爪、全然はがれそうじゃないじゃない」

え!?!?!?!?

「指の根本の部分もしっかりついてるし、はがれないですよ」
そう言って、棒みたいのを深さをはかるように差し込んだ。たぶん…怖くて見ていない。

曰く、爪が浮いている状態で、爪の切り方が角を尖らせて切ってしまっているため、隣の指にあたり、結果、ずっと爪が浮いてしまっている状態になっているとのこと。
「これに沿って丸く切れば大丈夫ですよ」
そう言って、処置室で爪を切ってくれた。
ついでに親指と人差し指の間に入れるクッションも着けてくれ、こうやって当たらないようにすればいいとのこと。
結局は、軽い外反母趾になっていることで、親指と人差し指がひっついてしまっているとのことだった。

待合室で水虫の写真などから想像を膨らませて、やばいことになっていたらどうしようと恐怖に震えていたのだが、なんとまぁ拍子抜けなことよ。
思わず「ありがとうございました」と何度もペコペコしながら診察室を出たのだが、先生も「はーい」とめちゃくちゃ軽い。


めちゃくちゃ心配していたのに、蓋を開けてみたら大したことがない―そんなことはよくある事である。
よくある事なのに、すぐ忘れてしまって、また同じようなことが起きた時に深刻にとらえてなかなか行動にとれない。これもよくある事である。
このよくある事がぐるぐる回っているのを感じた1日であった。

とりあえず、大したことあるかないかは行動しないと分からないのだから、まずは行動しようという、これまた毎度する反省をした。

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