先日のMTGで、大人しめな仕事できる系後輩に言われた言葉が印象に残っている。

「shinさんってかわいいとこありますよね」

「かわいい」と呼ばれること。一度だけなら「その人の個性・価値観」と考え、特に気にすることはない。
しかし、先日ボランティアで修学旅行女子高校生4人組を案内した際にも、出会った瞬間、初対面の状況から「かわいい～」「優しそう～」の洗礼を受けた。

年増、あるいは大人びていると言われることも多い僕には正反対ともとれる「かわいい」。この概念は何なのだろう。

考えてみれば、これまでにもちょくちょく言われることがあった。
特に意識しているわけではないのだが、なぜ僕は「かわいい」と言われるのだろう。一番僕のことを知ってくれている人に相談しても「言語化できないけどなんかわかる（笑）」と言われるのみ。

ということで、今回は「かわいい」についてのお話。
辞書の引用も含むため長めの記事になりましたが、最後までお付き合いいただければ幸いです。

１、「かわいい」のイメージ

「かわいい」という言葉を聞いて「赤ちゃん」「子犬」「女性アイドル」あたりが脳内に再現される方も多いのではないだろうか。人によっては「職場・学校の後輩」「社会を知らない若者」を思い浮かべる人もいるかもしれない。これらは「小さいもの」「幼いもの」であり、特に後半は「知らないもの」「（言い方を変えれば）自分より下の者」を指している。

先日「かわいいって違和感感じるよね」という話をしていた際には、パートナー以外の異性から、行為や所作、身なり、例えば髪飾りや衣服などの外面的・後天的で、かつ一定程度意図していること以外のこと、例えば知らないおじさんに顔や存在自体を「かわいい」と言われることへの抵抗という考え方に共感する部分があった。「自分もかわいいと思っている」、かつ「相手もそれに気づき、それをかわいいと言ってくれる」ことには違和感は感じないが、「自分は特に何もしていなくても、相手がかわいいと言ってくる」ことに違和感を覚えるということだ。

僕自身、「かわいい」という言葉を使う場合には特に注意している。「君、かわいいね」といった言葉はまず使わないけど、「今日の○○さんの△△かわいいね」等と使うようにしている。経験上、「かわいい」は誉め言葉かもしれないが繊細であり、誤解や不快感を生み出すこともあると思っている。だからこそ、この誤解を生まない・与えないためにも、今回の記事を投稿してみようと思う。

３、「かわいい」の多様性

さて、ここまで僕の経験や思いを書いてきたが、結局僕の何が「かわいい」のだろうか。そのヒントを探るため、最後に今回も、改めて言葉の意味を辞書で引いてみた。

【デジタル大辞泉】

「かわいい」

１ 小さいもの、弱いものなどに心引かれる気持ちをいだくさま。
㋐愛情をもって大事にしてやりたい気持ちを覚えるさま。愛すべきである。「―・い孫たち」「出来の悪い子ほど―・い」「誰だって自分の身が一番―・い」
㋑いかにも幼く、邪気のないようすで、人の心をひきつけるさま。あどけなく愛らしい。「えくぼが―・い」「―・い声」
２ ほかと比べて小さいさま。
㋐物が小さくできていて、愛らしく見えるさま。「腰を掛けたら壊れてしまいそうな―・い椅子（いす）」
㋑物事の規模が小さいさま。程度が軽いさま。ややあざけりの意を込めていう。「校内で威張っているだけだから、まだ―・いものだ」
３ 無邪気で、憎めない。すれてなく、子供っぽい。「生意気だが―・いところがある」
４ かわいそうだ。ふびんである。

１だとすると僕は弱弱しそうに見えるのだろうか。㋐にはやや心当たりがある。自信を持てない僕は「愛情をもって大事にしてやりたい」対象なのかもしれない（自分で言うと何となく気持ちが悪くなってくるが一旦続けてみる）。大人っぽい、しっかりしているといわれることも多いがたまに抜けていることもあるので㋑無邪気感があるのかもしれない。ぴょこぴょこしているとも言われたりもするし。自覚ないけど。身長は低くはないはずだから２㋐は違う。さすがに２㋑や４と思われていたら傷つく。お前は俺の何を知っとんや。笑

これだけでも盛りだくさんな意味なのに、続きにはこんなことまで書いてあった。

［補説］　（一部略）
2013年10月に実施した「あなたの言葉を辞書に載せよう。」キャンペーンでの「カワイイ」への投稿から選ばれた優秀作品。
◆女の子の間での潤滑油の言葉。◆本人の演出によらぬ、自然な愛くるしさ。◆特筆すべき長所の無い人、物、動物、仕草に対して肯定的である旨を伝える際に使用する言葉。◆1 語彙に乏しい者が様々な愛らしさを表現する言葉。2 もっとも平凡で無難なお世辞。◆女性の中に、永遠に存在するもの。◆自分の感性に共鳴する対象物。◆子犬、子猫を見たときに、胸がキュンとなる心の変化のこと。◆子供の寝顔。一番かわいいと思える瞬間。◆英語に翻訳するのが最も難しいコトバ。◆男性の場合は、愛おしく見える物・存在を指す表現。女性の場合は、前述の意味とは別に、自分よりも美的格付けが下だと認識した際に発する暗喩。◆カタカナの可愛いは、表面上の虚偽の愛らしさのこと。本質的な愛らしさは可愛いという。◆顔の目鼻立ちが整っていて愛嬌があり、こちらまで心がほぐされそうになる容姿。また仕草において言う場合もある。◆「好き」の表現違い。

語用論を軽く学んだ僕は「辞書には慣用化された意味しか載っていない」という考え方を知っている。つまり、「いつ・どこで・だれが使ってもほとんど同じ」意味しか辞書には載っていないのだ。

だが、それにしてもこの解釈の多様性には驚いた。なかなか辛辣な言葉も並ぶ。「かわいい」恐るべし。なんとなくわかったようでわからない。

目指すとするならば、

「本人の演出によらぬ、自然な愛くるしさ。」

だろうか。

（いったん）おわりに

男性が女性にかわいい、と言われて気分を悪くする人もいるにはいるだろうが、僕は率直な嬉しさと共に、どこかもやもやを抱えていた。

その結果、僕に適応するものをぴったり探せたわけではないが、それでもなんとなく「かわいい」と言われるゆえんが分かってきた。

ただ、感覚は人それぞれ。

個人的に気にしていた「親しみにくさ」を克服できたように感じたけれど、別のひとにとってはそれは親しみにくさなのかもしれない。

「万人受け」を目指すわけではないが、自然な愛くるしさを目指し、少なくとも悪印象を与えないような身なり・ふるまいに気を付けていきたい。