物流における「2024年問題」について、耳にしたことがありますか？

　2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働は年間960時間が上限とされ、労働時間が短くなることで輸送能力が不足することを指します。

　それだけでなく、ドライバーの収入が下がるという問題もあります。
　それに対して物流業界は、ドライバーの離職を防ぐために運賃への転嫁を考えるわけですね。

　トラックドライバーの労働環境が改善されるとともに、運送料金の値上げが予想されます。

　ちなみに、「トラックがない時代の運送料金」はどんなもんだったのか。手がかりになる情報を見つけたので、見積もってみたいと思います。

中世の宅配便？　伝馬制度

　「戦国大名北条氏　合戦・外交・領国支配の実像　下山治久著」に、関東を拠点にした戦国大名、北条氏の伝馬てんま制度のことが書かれています。

　短い記述ですが、その中から具体的な情報を抽出してみました。

• 戦国大名に成長した北条氏は官僚機構を整え、氏康時代の永禄元年（一五五八）から伝馬制度を開始している

• 宿場ターミナルに馬クルマと口取り人足ドライバーを用意していて、宿場から宿場に荷物を運ばせる。原則的には人は乗せない

• 使役料は、一里で一文（当時の一里は600m）

　実例として、天正元年（一五七三）十二月、相模国中郡煤ヶ谷（現・神奈川県愛甲郡清川村）から小田原城（現・神奈川県小田原市）まで、大量の炭を運んだケースがありました。

• 奉者（取り次ぎ）は江雲

  • 同書によると、江雲は星谷寺別当や伝馬手形を担当した重臣

• 伝馬13疋で炭50俵を運ばせた。馬1頭で炭4俵を運送する計算になる。

現代の宅配サービスで運んだら？

　では、この荷物を現代の宅配サービスで運んだら、いくらかかるでしょうか。

　宅配便の料金を見積もるには、「運ぶ物品の量」を知る必要があります。

　一俵の大きさは、高さが約75cmで太さ（直径）は約40cmが標準的なようです。
　それを現代の段ボール箱に置き換えると、160サイズになります。

　ただし、重さが160サイズの基準をオーバーするかもしれません。（ゆうパックとヤマト運輸の160サイズは25kgまで）
　それには、「体積当たりの重さ（つまり、比重）」を知る必要があります。

　こちらのブログに、スギの木炭の比重を測定した結果がありました。

　はっきりした結論は書いてありませんが、ざっくり0.1ということにしておきます。
　また、今回の事例には木材の種類が書いてありませんが、いずれにせよスギと同じくらいだと想定します。

　そして、直径40cmで長さ75cmの俵の80%に木炭を詰め込んだと想定すると、一俵は約7.5kgとなりました。
　これなら大丈夫ですね。

　これらの条件の下で、宅配便大手のサービスを利用した場合の料金は、次のようになりました。（2024/4/1時点）

　なお、一括で同じ条件の料金を出すために、こちらのサイトを使っています。

• ゆうパック

  • 1個あたり：2,270円（税込）

  • 50個合計：113,500円（税込）

  • 条件：神奈川県から神奈川県、160サイズ、25kgまで、郵便局持ち込み割引、複数口割引あり

• ヤマト運輸

  • 1個あたり：2,310円（税込）

  • 50個合計：115,500円（税込）

  • 条件：関東から関東、160サイズ、25kgまで、営業所持ち込み割引、複数口減額あり

• 佐川急便

  • 1個あたり：2,340円

  • 50個合計：117,000円（税込）

  • 条件：神奈川県から神奈川県、160サイズ、一般荷物

　つまり大手の三社は同じくらいの価格で、約11～12万円という計算になりました。

中世の伝馬制度では？

　では、中世の伝馬制度はこれより安かったのか高かったのか。

　結論から書くと、実はほぼ同じくらいだったようです。具体的には、約10～11万円という計算になりました。

　この先の有料部分に、現代の通貨に換算する過程を書いてみました。どういう計算でこうなったか、興味がある方は確認してみて下さい！