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花島 綾乃/Organic farm AYAZEN-綾善

法人名/農園名:Organic farm AYAZEN-綾善
農園所在地:千葉県松戸市
就農年数:7年
生産品目:年間50〜60品目の少量多品目野菜(玉ねぎ、ニンジン、スイスチャービル、枝豆、白菜、じゃがいも、ほうれん草など)
HP:https://www.h-ayazen.com/
SNS:𝕠𝕣𝕘𝕒𝕟𝕚𝕔 🅵🅰🆁🅼 綾善𖦞【無農薬野菜】

no.188

農業を始めたのは食育のため。子供が食べたことのない野菜を少しでも減らしたい!

■プロフィール

 千葉県松戸市の農家に生まれ、幼い頃から弟と二人で畑で泥遊びをして過ごすような子供だったが、農業を継ぐつもりはなく、高校生の時に父が他界したことで、実家は離農。

 専門学校在学中に、子育て中の友人に勧められたことをきっかけに、無農薬の野菜栽培を目指そうと決意する。2017年2月、23歳の時に、父が残した畑で母と弟、飲食店に勤務していた婚約者の隼さんと3人で無農薬野菜の栽培を開始。

 2018年10月、長男を出産。2020年1月、長女を出産。2022年11月、次男を出産。未就学児3人の子育てに奮闘しながら、夫と二人で栽培から配送、配達に加えて、SNSを通じた情報発信を行なっている。 

■農業を職業にした理由

 〜友達の一言がきっかけで有機栽培の道に〜
 家政科の高校時代に父が他界したが、実家の農業を継ぐつもりはなく、専門学校に進学。そうしたなか、子育て中の高校時代の友人が「子供には無農薬野菜を食べさせたいけれど、入手が難しい」と悩んでいることを知る。

 当時、飲食店でアルバイトをしていたこともあって、あらためて本来の自分は、食べることや料理が好きだったと気づく。

 そこで専門学校を中退して、自分で育てた野菜でカフェを開きたいと夢見るようになり、父が残した畑で野菜作りをしよう!と思いつく。母親には猛反対されたが、それがかえって奮起するきっかけになった。

 父が残した農地は、叔父が管理していたものの荒れ放題だったので、まずは耕作できる状態に整えて、2017年2月に栽培を開始。

 〜無農薬野菜を身近なものに〜
 就農を決意したものの、専門知識は皆無で、市役所に相談に行っても相手にしてもらえなかった。子供の頃から、医者にかかったり、薬に頼る機会が少なかったこともあって、「野菜だって農薬や化学肥料を使わずに育てられるだろう」と、YouTubeの栽培動画を参考にしたり、父が亡くなる前から交流のあった近隣農家に教えられて挑戦を始める。

 消費者のニーズはあるものの、スーパーなど小売店が扱う無農薬の野菜は値段が高いため、子育て中のママが手に届くようにしたいと、カラフルで珍しい野菜を中心に少量多品目栽培でいく方針を決めた。

 とはいえ、雑草だらけの畑を開墾するのは苦労の連続。師匠として頼っていた近隣農家から譲られた古い農機と、鍬(クワ)一本の手作業を中心に、見よう見まねで少しずつ生産品目を増やしていった。

 現在、収穫した作物はすべて直接販売の形を取っており、レストランに卸したり、季節の野菜セットとして定期配達している。

〜ボランティアに支えられて〜
 基本的には夫と2人の家族経営だが、ホームページやSNSでの援農ボランティア募集を通じて、種まきや収穫、除草を手伝ってくれる人たちに支えられている。

 2023年現在は東松戸にも農地を借りており、父が残した20アールからスタートした栽培面積は、合計1ヘクタールに拡大。繁忙期は、1日15人近い援農ボランティアが集まり、学生から年配まで幅広い世代の参加者に人気だ。また近隣の学校と提携し、定期的に農業体験できるイベントなども開催している。

■農業の魅力とは

 私たちの農園では、市場を通さず自分たちの手で個人宅やレストランに配達しています。そこでのお客さまとのおしゃべりが何よりも楽しい!直接コミュニケーションすることが減っている時代に、顔をつき合わせて会話できる機会は大切です。

 「綾善さんの野菜を食べたら、市販の野菜は食べられないよ」と褒めていただいたときなどは、このうえなくハッピーな気持ちになります。農業は人と人を結ぶ素晴らしい職業だと思うんです!
 
 それに、メイクや髪型やネイルも自分が好きなスタイルを実現できます。どんな格好をしていても誰にもとがめられません。

 就農当初は、農業経験のないギャルだと注目される機会が多く、メディア露出が先行してしまいましたが、リピーターになってくれるお客さまのおかげで、今では正直、生産量が需要に追いつかないのです。とてもありがたいことですけれど、もっともっと頑張らなきゃ!と焦ることも…。
 
 高校時代に栄養学や料理を学んだこともあって、私たち家族は食べることが大好き。農業は自分で作った野菜を、採りたてのベストな時期に美味しくいただけるのが本当に幸せです。
 
 今は子育てをしながら、夫と二人で経営しているので、ママの仕事と農業の両立は、確かに大変です。特に2023年のような猛暑が続くと、援農ボランティアの皆さんの力がなくては成り立たない。

 でも私が農業を始めたきっかけは、子供の食育のためですから、本当は美味しいのに、子供たちが食わず嫌いの野菜を少しでも減らしたいという気持ちは変わりません。
 
 それと同時に「子ども食堂」への野菜の提供や、中学生、高校生の農業体験を受け入れたり、地元のお祭りやイベントへの参加など、地域との関わりも欠かせません。綾善の野菜を選ぶことに価値を感じてくれるお客さんのために、私たちはこれからも「お金じゃ買えない農業」を目指していきます。

■今後の展望

 まずはもっと、たくさんの種類の野菜を作れるようになりたい!
 
 ありがたいことに、綾善の野菜を欲しいという声をたくさんいただくんです。でも今は生産量が追いついていない。千葉県内の大手百貨店の青果コーナーにも卸していますが、野菜が足りなくて何ヵ月もお休みすることもあります。

 たくさんの人に待っていただいているありがたい状態。だから少しずつ、量も品種も増やしていきたいです。

 家の前に直売所を設けたこともありますが、その日によって売れる数が違ったりして、用意した野菜にロスが出るのが悲しくて、直売所は今、休業しています。
 
 その代わり、その時々の旬の野菜をおまかせで配達(毎週、隔週、月1回)したり、ネット販売しています。これだと食品ロスはありませんし、作り手と食べ手がお互いに顔を見ながらやり取りできる今の販売スタイルは、おしゃべりな私に合っているので今後も続けていくつもり…。
 
 「子ども食堂」や地域の活動にも関わっていますが、その根底には、私が生まれて育った松戸を、そして千葉をもっと元気にしたいと言う気持ちがあります。ここはとてもいい街です。農業で千葉をもっと盛り上げる、それは私たちの大切なミッションだと考えています。(記:沼田実季)

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