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リハビリで思考を押しつけるな!

こんにちは、和歌山の病院で理学療法士として勤務している傍ら、デザイナーとして修業と活動をしている、キッシーです。

今日は、約2年ちょっとデザインを勉強してきて、本業にどんな影響を与えてきたのかをお伝えしたいと思います。
回復期・維持期のリハビリと照らし合わせて説明していきます。
(急性期・外来リハの経験がないので…)

デザインとリハビリの共通点

共通点

何かに取り組むには、共通して
・情報収集
・評価
・実行
・改善作業

を繰り返しこなしていくものと思います。


私たちがリハビリテーションを進めるときの流れは
①事前の情報収集(カルテ情報、他院からの情報提供書)
②動作観察
③問診(患者が求めるもの、悩みごとなど)
※②と③に関しては前後することも
④理学療法評価(専門的な検査などでチェックしていく)
⑤治療アプローチ(訓練)
⑥再評価(②~④を再実施)
というのが基本です。

私がやっているデザインの作業であれば
①事前の情報収集(クライアントのSNSやHPを確認)
②ヒアリング(クライアンが求めるもの、何をしたいのか)
③評価(クライアントの価値観を共有していく)
④作業(ラフ案作成、Photoshopやillustratorでの作業)
⑤再評価(仮案を用いてクライアントと意見交換しブラッシュアップ)
と作業工程に若干の違いはあれど、おおまかには同じです。

デザインを学び、プロの話を聞いてると…
「デザイン=オシャレ=外側を綺麗にする」という訳ではなく、
「デザイン=問題解決=内側から作り上げる」と考えるようになりました。

デザインの意義

この思考は、リハビリでも応用できる考え方だと実感しています。
それを今から細かく説明していきますね。


あなたは人を見ていますか?

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リハビリではカルテや文書を読み、事前の情報収集をしていきます。
・現病歴、既往歴
・服薬情報
・家族構成
・生活状況など…

情報収集をする時に、何を考えていますか?

これはある程度の経験値を積まないと難しいことでもありますが、疾患から考えられる障害、本人の性格、病棟生活or退院後の生活で何が必要なのか?などを予想しながら、私は作業をしています。
ICF(国際生活機能分類)の考え方が重要になってきます。


デザインも同様で、クライアントのSNSやHPから
・何を目的に活動しているのか?
・好きなこと、嫌いなこと
・好みのデザイン(色合いやフォントなど)

その人が持っているであろう価値観を予想していきます。
こうしてみると、やっている事はほぼ同じなんですよね。


でも、2つの違うところは、「人を見ているのか?否か?」


人よりも、疾患・障害を見ているセラピストを度々SNSなどで見ます。
「関節可動域が悪いから出来ないんです。」
「筋力低下が起きているので、歩けないんです。」
「この手技を使う事で、ここの関節可動域が改善したんです!」

確かに改善させることは大事なことだと思います。
その人の生活や人生に、どんな影響を与えるのか?まで考えたことはありますか?

価値観や思考の押しつけは最もダメなこと

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ロゴは、理念・願い・将来の展望を考えて作成していきます。
良いものを作るためには、クライアントとのコミュニケーションが重要になってきます。
・かっこよくして欲しい
・アットホームな感じ
・インパクトを与えたい

よく言われる要望なんですが、人によってカッコいいと思う瞬間は違うし、アットホームな印象も人によって違う…。
要は、人によって価値観は違うんです。
表面的な感情でしかないので、何も確認せず作業をすると、深くにある欲求までは満たすことが出来ないんです。

価値観の違い

その価値観を共有するために、クライアントとのコミュニケーションを大事にしています。

私の場合は、
①DMで簡単なヒアリングを行ってから、情報収集する。
②価値観で気になる事や再確認しておきたい情報をまとめる。
③ZOOMやSkypeで、まとめた情報を元にヒアリングする。

こうすることで、クライアントが発する雰囲気を感じとり、より価値観を共有しやすくなります。

この時に大事なのが、相手の思考を引き出すこと。
「何故、そう思うのか?キッカケは?」と繰り返し聞いていくことで、クライアントは思考整理ができ、自己分析にも繋がります。
コーチングの様なもので、相手の思考を軌道修正する役割もあります。

この作業が、デザイナー側の勝手な偏見や、デザインの自己満足を防ぐキッカケに繋がり、相手の欲求を満たすことが出来ます。
クライアントの欲求を満たしていく階層を図にすると下記のようになります。

階層ー思考ー

スティーブン・ブラッドリーによるデザインの欲求階層説

機能性:基本的な機能に関する欲求が満たされると、ユーザーは満足を得る。
信頼性:継続的に使用したときに、動作が確実で一貫していると、信頼感が育まれる。
ユーザビリティ:使いやすさを実感すると、ユーザーは愛着を持つようになる。
上達:生産性が高まり統御感が強化されると、ユーザーは愛着を持つようになる。
創造性:新しい工夫を加えて自分なりに使いこなせると、ユーザーは代替製品に見向きもしなくなるほど惚れ込む。
『Design Rule Index 要点で学ぶ、デザインの法則150より引用』


では、これをリハビリの場面で、当てはめてみたらどうなるでしょうか?
価値観の共有は、リハビリでいうと患者さんに直接問診をすること。
「どこが辛いの?」
「どうなりたい?」
「何に困ってるの?」

と雑談を交えながら深く聞いていく。
その時の反応や雰囲気から、相手の求める欲求を調べていきます。

セラピスト:「リハビリを頑張って、どんな風になりたいですか?」
患者さん:「歩けるようになりたい」
セラピスト:「何故、歩けるようになりたい?何かしたい事があるんですか?」
患者さん:「よく通う、喫茶店に行きたい」
セラピスト:「なるほど、その喫茶店には何かオススメの物があるんですか?」
患者さん:「モーニングが美味しいんよ」
セラピスト:「良いですね~。居心地も良さそうですね、どんな雰囲気なんですか?」

と「歩けるようになりたい」とあっても、何故そう思うのか?何か欲求を満たす要因があるのか?動機を探りつつ、その人が好む何かを聞き出していく。

欲求が分かれば、今置かれている現状と照らし合わせ、何が最善かを提案する。患者さんの想いに対して、軌道修正をかけていくことで、初めてリハビリテーションのプログラムが立案できると、私は思います。

しかし、リハビリの難しいところは、患者さん本人の想いだけではなく、家族の想いにも配慮しなければならないことにあります。
偏った考えでは上手く成り立たない…いつまでも続く課題でしょう…

ただ、一つ言えることは勝手な思い込みで、患者さんに思考の押しつけをするのは、最もダメなことです。
物事を客観的にみる視点も重要になってきます。


想いを上手く繋ぐことが出来るようになれば、相手に寄り添うリハビリテーションになっているでしょう。

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約8年ぐらい前の実習生として、患者さんと関わった時の写真
良い関係を気づけて、多くを学ばせてもらい、理学療法士として誇りを持てるよう頑張ろうと思えた時でした。

レイアウトなどの表面的なデザインよりも、デザインの深い世界に入っていけば、ヒアリング能力は格段に上がります。
〇〇×〇〇=のような掛け合わせをすれば、本業のレベルアップも図れるので、是非色んなことに取り組んでみて下さい。

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