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リーダーシップ論(2):タテとヨコ

組織におけるリーダーシップを考えていく上で、前回述べた「マネジメントとの違い」「事業環境によるタイプ分け」とともに重要なことは、
「組織内の階層レベル」(タテ)「発揮するスキル幅」(ヨコ)だと
考えています。

タテ:階層別リーダーシップ

同じリーダーでも、大企業トップのリーダーシップ数人規模のチームを率いるリーダーシップは自ずから発揮するスキルやコンピテンシーは異なってきます。

これを企業内の階層別(昇進レベル別)に整理したのが、GEのリーダーシップ開発に携わったラム・チャタン教授やステファン・ドロッター氏が書いた「リーダーシップを育てる会社つぶす会社」です。

2004年に出版されていますが、いまでも階層別リーダーシップの考え方において、これを超える書籍は出ていないと思います。
グロービスのサイトでもこの書籍から一部引用したコラムがありますが、プレイヤー(担当者)から上級マネージャー(部長)へとリーダーシップ・パイプラインを一段ずつ昇格する際に必ず乗り越えなければならない難所(著書では転換点)が紹介されています。

本書では、この転換点を1)一般社員から係長、2)課長、3)部長、
4)事業部長、5)事業統括役員、6)経営責任者へと第6転換点
まで定義し、それぞれの階層におけるリーダーシップ発揮や役割の違いの解説ととともに陥りやすい課題を整理しています。

ところが多くの日本企業において、企業内の階層研修はせいぜい部長クラスまでで、事業部長や役員対象になると著名講師による講演会や半日から終日の幹部ワークショップが開催される程度。上級幹部が体系的に「リーダーシップや自身の役割」を学ぶ機会が少ないのが実態だと思います。

これは以前のnoteで、CEOと事業部長では経営に対して見る視点が異なり、利害対立が起きがちなことを組織設計面から書きましたが、経営チームの組成という意味でも、それぞれの階層でどんなリーダーシップを発揮するべきかは知識としても重要なのではないでしょうか?

また、企業ガバナンスの観点でも取締役と執行役員の間で「経営と執行」の役割責任が曖昧になっていると良く言われています。

これらはGEのように次期社長や役員クラスまで視野に入れたリーダーシップ開発を行っていない日本企業の根底に流れる大きな課題かもしれません。

ヨコ:リーダーシップのスキル幅

次にリーダーシップを発揮するスキル要素に関する良書を紹介したいと思います。

すでに絶版になっているようですが、現在、早稲田大学ビジネススクールの教授をされている菅野寛さんがBCG時代に書かれた「経営者になる経営者を育てる」です。(その後、日経文庫から「BCG流 経営者はこう育てる」を続編として出されていますが、こちらも絶版のようです)

この書籍が秀逸なのは、単にMBA的な経営テクニックだけでなく、人を率いるリーダーとしての人間的魅力についても合わせて整理しているところです。

始めに科学系スキルとしての①マネジメント知識 ②ロジカル・シンキング次にアート系スキルとして①強烈な意思 ②勇気 ③インサイト ④しつこさ ⑤ソフトな統率力を上げらえています。

読んだ当時、この本に書かれたことはしっかり覚えておこうと読後録を2頁にまとめ、システム手帳に挟みこんで時折、読み返していました。

また、私自身、後日、人事部で上級管理者研修を企画するときにこの本は参考にさせて頂きましたし、実際に一橋大学大学院国際企業戦略研究科(ICS)に幹部研修をお願いし、菅野教授や楠木健教授、竹内 弘高名誉教授・野中郁次郎名誉教授の講義を受けられたのは非常に刺激的で良い学びの場となりました。

ICSの教授陣が素晴らしいのは、単にMBA的な戦略分析に止まらず、戦略を立案・実行するリーダーのソフト面(野中教授や竹中教授の知識創造フロネシス、楠木教授の好き嫌い)などアート系スキルの大切をハード面(戦略分析や科学系スキル)と一緒に教えて頂けたのが、自身がその後、事業経営をリードする立場になった際の大切な礎になっています。


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