結局、彼は何も語らなかったけれど
その日はそれまで続いていた寒さが少し緩み、いつもなら寒風に耐えながら自転車で通り過ぎる通勤途中の公園内では、風景を楽しめるくらいの余裕があった。年が明け、成人の日を過ぎてからは、街の様子も、私自身の気持ちも徐々にお正月気分が抜けて、いよいよ日常が戻ってくるように思えた。私は午前中に年度末までにやらなければならない業務の計画を立て、お昼休みを挟んだ午後からは、監査対応のための書類整理に着手し、パソコンで整理した書類の中身を上司に相談しようとして席を立った時、携帯に妻からの着信