見出し画像

女性のADHD は診断されにくい?

ニュージーランド在住で、総合診療科医、ライフコーチ、Havening technique ®️プラクティショナーなどをしています。

以前に、子供時代にADHDである事が診断されず、大人になって自分でそれに気がついたり、医者が指摘したりするケースについて記事を書きました。

近年は、私の「レンズ」も変化しつつあり、以前だったら、単に「不安症の人」「うつ病の人」と考えていた患者さんの中に、いわゆる「発達障害の人」が多くいる様だ、という事に気がついてきました。

(勿論、明らかな発達障害の方は、少し話をしただけで分かるのですが。)

日々お会いする大人の患者さんの中で、「この人は診断されていないけれど、ADHDだろうな」と思う人は、女性の方が多い印象があったのですが、
実際、女性の「ADHD」の方が診断が遅れがちという事実があります。

子供時代の「ADHD」と診断されている人の男女比は、約3対1。
それが大人になると約1対1になります。

「ADHD」は子供の時からある発達障害となので、
大人になって男女の比率が変わるのは
大人になってから診断される女性が多い、という事になります。


女性の「ADHD」の診断が遅れる訳

1. 多動が目立たない「不注意優勢ADHD」の子が多い

以前のDMS (Diagnostic and statistical manual of mental disorder  精神疾患の診断・統計マニュアル)では、「ADD 注意欠陥障害」という疾患名が載っていました。

最新のDMS-5では「ADHD」の診断の項には「ADD 」という分類はありません。
ただ、多動が多い「ADHD」と不注意が多い「ADHD」(以前は「ADD」診断されていたもの)とその混合した症状がある人、という形で分類されています。

女性の場合は、「ADHD」でも、この「不注意優勢ADHD」の方が多いというのが、まず1つの理由。(この記事では、利便のため。この「不注意優勢ADHD」を「ADD」と書くことにします。)

「ADD」の場合は、主な症状は「集中できない」「忘れっぽい」という症状なので、多動で衝動的な行動が多い「ADHD」の人のように、

  • 学校の授業中に歩き回って、他の子供や先生の迷惑になる、とか、

  • 静かにしている事が期待されているところで大声で喋る、とか、

  • 激しい感情をコントロール出来ず、他の人に暴力を振るう、とか

いう事が余りありません。

つまり、他の人には余り迷惑をかけないので、
先生や親が「この子は、なんか普通じゃ無いから、なんとかしなきゃ」と思って
特別の注意を払い、医者に連れて行ったり、誰かに助けを求める事が少ない。

また「多動」の要素があっても、他の人からは
「良く喋るチャーミングな女の子」とか「活発な女の子」
ぐらいの認識で終わってしまう事があります。

2. 「不注意」は親や周りの大人がフォローするので、幼い頃には大きな問題にならない事が多い

これは1の続きで、女の子の「ADHD」に「ADD」タイプが多いことに関係します。
子供が大人に頼れるうちは、周りの大人が先回りして助けるので、「ADD」の症状が大きな問題にならない事があります。

つまり、周りの大人が

  • 子供が忘れ物をしないように、学校に行く前にカバンの中身をチェックしたり

  • 子供が時間に遅れないように、何度も注意したり

する事で、あまり「ADHD」の問題が明るみにでない。
「ADHD」当事者が、大変だと思っている事には変わりがないのですが。

これが、

  • 大学生になり、家を出ると、親がフォローしてくれない、とか

  • 仕事を始めると、会社での仕事は他の人の助けなしでこなさないといけないから、とか

  • 結婚すると、仕事と家庭を両立させなといけないので、更に色々と計画して遂行しないといけない、とか

いうことで、「ADD」の注意力の不足が、生活そのものに大きな影響を与えてきます。

もしもあなたが、「ADHD」と疑われずに、今まで「生きにくい」人生を送ってきたら

子供の頃に「ADHD / ADD」と診断される機会を得られなかった
多くの「ADHD / ADD」の方は、
大人になるまでの間に、色々なスキルを身につけ
自分の「不注意」が見つからないよう、
また「不注意」が生活に支障をきたさないように
頑張っていらっしゃった、と思います。

子供の時には
「やる気がない子だ」とか「どこかが抜けている」とか
自分が価値のない人間であるかのような扱われ方をされたかもしれません。

それが原因で、いじめられたり、親に虐待されたりしたかもしれません。

または、「不安症」やら「うつ病」やら「境界型人格障害」やらの
診断名が付けられたかもしれません。
(もちろん、両方の診断基準を満たす人もいます。)

全ての関係者が、その時、その人ができる限りのことをしていた訳なので
あなたがそうなったのが誰のせいだ、という言い方はしたくありません。

しかし、強いて言えば、あなたの辛さに気が付かなかった、また、注意を払わなかった周りの大人(医療従事者や教師を含め)の責任であると思います。
だから、あなたが悪かった訳では、全くないのです。

ただ、今の時点であなたができる事はあります。それは

自分をもっと知り、自分の特性を受け入れ
自分が生きたい人生を生きるために必要なことをすること。

それは、自分の役に立つのであれば、専門家の意見を求めること(=精神科の受診)、そして薬を使ったりすることも含めます。

私も医療従事者として、「生きづらい」と感じる人を減らせるように
謙虚な姿勢で、勉強や実践に励んでいこうと思います。


今日も長文を読んで頂き、ありがとうございました。

「親も育つ子育て」を広めるために、私の持っている知識、経験、資料をできるだけ無料で皆さんに届けたいと思っています。金銭的サポートが可能な方で、私の活動を応援していただける方は、サポートをしていただけると嬉しいです。