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もしかして、ADHD?

ニュージーランドで総合診療科医、ライフコーチなどをしています。

今日は「どんなレンズ」でものを見るか、によって、いろいろな事が大きく変わりうる、という話です。
大人の「ADHD」の話でもあります。

皆さん、「ADHD」ってご存じですか。
多分多くの方は聞いたことがあると思いますし、
ご自分やご家族が、その診断を受けたという方もいらっしゃると思います。

以下は厚生労働省のウェブサイトからの引用です。(実際の診断基準は、もっと細かく症状や、年齢が書かれています。)

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ADHD(注意欠如・多動症)は、「不注意」と「多動・衝動性」を主な特徴とする発達障害の概念のひとつです。ADHDの有病率は報告によって差がありますが、学齢期の小児の3~7%程度と考えられています。ADHDを持つ小児は家庭・学校生活で様々な困難をきたすため、環境や行動への介入や薬物療法が試みられています。ADHDの治療は、人格形成の途上にある子どものこころの発達を支援する上でとても重要です。

ADHDの診断

ADHDを持つ子どもの脳では、前頭葉や線条体と呼ばれる部位のドーパミンという物質の機能障害が想定され、遺伝的要因も関連していると考えられています。

ADHDの診断については、アメリカ精神医学会(APA)のDSM-5(「精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版」)に記述されており、下記などの条件が全て満たされたときにADHDと診断されます。

ADHDの診断基準

  1. 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること

  2. 症状のいくつかが12歳以前より認められること

  3. 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること

  4. 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること

  5. その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと

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以上です。


世界中の多くの国で、ADHDの診断を受ける人の割合が増えています。

信州大学医学部から出た論文によると、医療データベース(National Database [NDB])を用いて、日本におけるADHDの新規診断数を調査したところ、ADHDの年間発生率は、2010-2019年度の間に0-6歳の子どもで2.7倍、7-19歳で2.5倍、20歳以上で21.1倍に増加した、との事です。(2022年9月30日付でJAMA Network Openに掲載。)


「ADHD」の発生数が増えた原因としては、様々な要因があります。

一つは「過診断」、つまりADHDではない人にADHDの診断がつけられている事、が関与している。

また、本当にADHDの診断基準を満たす、脳の発達に問題がある人口が増えている可能性もあります。

ただ、この記事で取り上げる「大人のADHD」は、今まで「ADHD」であるのに診断がなされていなかった人達が、「大人になってから診断がつけられた」訳です。

「ADHD」は、子供の頃からの脳の発達の問題であり、大人になってから「ADHD」を発症する訳では無いのです。

世の中に「ADHD」がより知られるようになり、
「ADHD」、「精神科」への偏見のようなものが減った結果、
大人の中に「もしかして私、ADHDなの?」と自分で思ったり、
周りの人に「もしかして、あなたADHDじゃないの?」と言われる機会ができて、精神科を受診する大人が増えたと考えられます。

ADHDは、遺伝の関与があるとされており
子供が「ADHD」と診断された機会に、親が(もしかして私もADHDなのではないか)と気がつくこともあります。

つまり、世の中の「レンズ」がかなり変わったため、「ADHD」と診断される人、特に大人が劇的に増えたと思われます。

ニュージーランドでは、大人になってADHDの診断を得るには、プライベートの精神科にかかる必要があり(公立医療で対処できるだけの数の精神科医がいないとか、公立の医療費が足らないため)、自費で精神科を受けるお金がなければ、「ADHD」であろうと思われても、診断はつけられません。

「ADHD」は脳のある部分の発達の遅れ/違いによるものなので、
年齢が上がると、症状があまり目立たなくなったり、
自分でなんとかマネージするスキルを学び、普通の生活をしている人も多いです。
そのため患者さんが大人になると、子供の患者さんに較べ、私が観察したり話したりしただけで、「ADHDかな」と疑えることは少なくなります。

ただ、殆どの「子供の頃にADHDの診断を逃した大人」は、
子供の頃、学校で勉強をいくら頑張ろうとしても集中できず、
家でも落ち着かないので、親に怒られ
「とても苦労した子供時代」の思い出を持っています。

親や先生に「悪い子」だとか「バカだ」とか「出来損ない」とか言われ
トラウマになっていることも多いです。

そこから、仕事に就いたり、ビジネスを始めたりした人達は
ずっとある意味の生きにくさを感じてきた事が多いようです。

こういう人達が大人になって
(自分が「ADHD」かも知れない)と分かると
感情が湧き溢れてきます。

診断名にショックを受けると共に
「自分の生きにくさ、苦労」がこの診断名で説明できた、という
ある意味の安堵感があるのだろうと思います。

もしも彼らが子供の時にADHDの診断を受けていれば
「わるい子、バカな子」というレッテルを貼られることなく、
サポートを受けられていたでしょう。


大人になって「ADHD」と診断される人の中には
その診断の可能性に誰かが気づく前に
「うつ病」とか「双極性障害」とかの診断をつけられてしまう可能性もあります。(もちろん、ADHDでうつ病に人もいますが。)

更に恐ろしいのは、ADHDで使われる中枢刺激薬(コンサータなど)と似ていて、更に効果が強いメタアンフェタミン(ヒロポンとかシャブとかスピードと呼ばれる)という依存性の強い覚醒剤を使う人も出てくる事。

普通はメタアンフェタミンを摂ると、興奮してハイな気分になるのですが
ADHDの人が摂ると、頭が落ち着いて、色々なことに集中しやすくなるようです。
(これは限られた数の私の患者さんの観察から得られた私見ですが。)

もしも彼らが子供の時に、世の中の「レンズ」が違っていて
「落ち着きがない子供」も
「ぼーっと夢見ているような子供」も
「何度言っても、忘れ物や遅刻が減らない子供」も

「彼らは彼らの、発達障害のある脳力を使って
できる限りのベストをしている」
と周りの大人が認識し、サポートし、必要なら薬を処方し
彼らの特性を活かすような子育てや教育をしていたら
多分彼らの人生はもっと生きやすいものに変わっていたでしょう。

医師の1人として責任を感じます。

そんな思いも込めて、
自分の「レンズ」が効果的なものか常に省みて
次の世代を効果的に育て、サポートしていけるように努力を続けたいと思います。

本日も長文を読んで頂きありがとうございました。😊






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