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ある日、机の引き出しが開いて連れていかれたんだ#『あの日、選ばれなかった君へ』読書感想小説

未来の国からはるばると

のほほんと部屋で横になってくつろいでた私は「のどかだなあ。今日はいいことがありそうだ。フフフン♪」と、いつものように楽観的に呟いていた。なんの根拠もないのだけれど。

「いやあ、ろくなことがないね」

どこかから声が聴こえた。

「アナタは30分後には首をつる」

え?

「だれだっ!?」

言われたことにムカっ腹が立って、立ち上がってあたりを見渡すが誰もいない……

「だれだ、へんなことを言うやつは!?」
「でてこいっ!」

ゴト ガタ ゴト

部屋の隅に置いてある仕事用の机から音がして、ひとりでに引き出しがガラリと飛び出した。

「ワッ!!」

ヌンと出てきたのは、爽やかな青のラガーシャツを着たジーンズ姿のガタイの良い男だった。

机の引き出しから人が出てくるという現実を受け入れきれず、私は驚いてその場にへたり込んでしまった。

「やあ。ボク阿部広太郎。ボクはアナタを恐ろしい運命からすくいにきたのです」

「とにかくアナタに見せたいものがあるので、ちょっと一緒に付き合ってもらえますか?」

柔和な表情でにっこり笑って、手を差し伸べてきた。

その丁寧な言葉づかいと温かな笑顔に惹かれてしまい、私はなぜだか不思議な「青い人」の手をおそるおそるつかんで立ち上がっていた。

GO TO タイムトラベル

「ボクは未来の世界から来たんです。この引き出しの中にあるタイムマシンに乗って」

開いた引き出しの中を覗き込んでみる。

美術の時間に使っていた水彩絵の具を広げていたパレットを思い出した。
知らない間にごちゃっと混じり合っているような色彩が歪んだ空間がそこに広がっていた。

フワフワと揺れて停留されたモノがある。
(こ、これがタイムマシン!……)

「本当はこのタイムマシンに乗って行きたいんですが、初心者だと危険が伴うので今回は別の道具を使いますね」

青い人がシャツの前を掴んでまくり上げると、腹巻きが現れて……(アレ? お腹弱いの?)
内側に手を突っ込んでナニカを高らかに掲げた。

「タイムブック〜〜〜」

〜♪(なぜか効果音が聴こえた気がした)

手にしていたのは空色に包まれたPOPなイラストが描かれた本のようなモノだった。

表紙に大きな文字で

『あの日、選ばれなかった君へ』

と書かれてある。

「今からボクの子ども時代に行きますが、これから起きることに驚かずそのままじっと横にいてくださいね」

そういって青い人はページをめくりはじめた……

はじまりはじまり

そこから私に起きた出来事は、信じられないことの連続だった。

大きなドラの音が聴こえたと思ったら、とても心地よい声で『第一章 卒業アルバムの君は「ひとりぼっち」だった』と、どこからともなく聴こえてきた。

私を取り巻く部屋一面は徐々に360度知らない世界になっていった。空の上だ。私たちは重力がなく宙に浮いている状態だった。

向こうの方から突然グングンと建物の方が近づいてきた。いや、私たちが近づいているのだろうか?(なんて不思議な感覚! )

どこかの学校のようだ。

さらにグンと近づき、教室の窓から中を見渡す位置につくと授業中のクラスが見えた。

教壇に立っている先生が対面する生徒たちに対して喋り出す。

「みんなの中学生時代の写真を集めて、卒業アルバムの中に見開きのページをつくります。なので、載せたい写真を卒アル委員に提出してください」

沸き立つクラスメイトたちの影で、メガネ姿でひょろひょろの体格をした少年が不安げな表情を浮かべている姿が見える。

私の横で一緒に宙に浮く青い人は温かい目で見守りながら、少年のことを「キミ」と呼んで当時を思い出すように語り始めた……

タイムブックのふたつの機能

この「タイムブック」には、簡単なブックマーク(付箋)機能があった。

気になった箇所があれば指をパチンと鳴らす、それだけだ。

右手でパチンと鳴らせば「自分にとっての気付き、発見、気になる客観的事実」、左手でパチンと鳴らせば「エモーショナルで詩的な気に掛かることば」として分類していつでも参照可能になる。

私は気楽な気持ちでこの機能を使った。

つい調子に乗ってしまい往年の芸人"ポール牧"師匠も驚くほどクルクル回ってパッチンパチパチ。気づけば103個もブックマークしていた。

(タイトル「紫」は付箋の色。文末はページ数。ええ、これは現実世界の話です)
(「青」は付箋の色。エモいイメージに合わせて「赤」にするとか融通は効かない男w)

※ブックマークしたそれぞれのお気に入りBEST3はまた別の機会にご紹介させてください

旅の終わりに

青い人が見守る小さかった「キミ」の成長を、大人になっていく姿を、私たちはこの目で見た。

ときに涙を流しながら、ときに自分の中にある心のわだかまり・理解できない感情に触れられたし、感情を揺さぶられてドキドキした。

青い人が最後のページを閉じた。

景色が歪んでめまいがしたような気がした後に、元いた自分の部屋に戻っていた。

「長い時間一緒に付き合ってくれて本当にありがとう。お礼にアナタを恐ろしい運命からすくってくれるモノをお渡ししますね」

青い人はジーパンのポケットに手を突っ込んで何かを私に手渡してくれた

金色の小さなメダルだった。

表面に【勇気】の文字が刻印されている。

「もうひとつ……」と今度は左のポケットから銀色のメダルを取り出して手渡してくれた。

表面に【優しさ】の文字が刻印されていた。

長い時間タイムブックを使って青い人と一緒に少年時代からの「キミ」を見てきた。
とても不器用だった「キミ」は、ピンチに陥っても必ず【勇気】と【優しさ】をグッと握りしめて自ら状況を変えていた。

それを私にくれるというのか……
とても大切なものを受け取った気がした。

エンドロール

もしもこの「タイムブック」をみんなが手にすることができたなら、きっと同じような体験をするんだと思う。

青い人はこう言って、机の引き出しに飛び込んで元の時代に戻っていった。

「このタイムブック、誰でも近くの本屋さんに行けば購入できるようにしておきますね」

……

読み終えたときのこの感覚を、あなたにも体験して欲しい。

開いた部屋の窓からは書籍の表紙と同じような真っ青な空が広がっていた。

ふと衝動的に叫びたくなって空に向かって叫んだ。

「阿部広太郎さーーーん!!」

〜♪(なぜかオープニング音楽が聴こえた気がした)


おわり

【ふりかえれば私がいる】

(←あとがき、とストレートに言わなくて意味不明になって迷子なう)

阿部広太郎さんの著書「あの日、選ばれなかったキミへ」は、ダイヤモンド社から2023年3月29日に発売されたものでした。

当初、読書感想文を書こうと思っていましたが勝手に自分でハードルを上げてしまって書けず終いになり……

今まで読んだことのないタイプの素晴らしい本でした。何度感情を揺さぶられたことか。

この本を誰かに紹介したい。書きたいし伝えたいけれど書けない。そんな時期を乗り越えてなんとか公開にこじ付けました。細かい推敲も含めてマジで50回くらい書き直してるはず。長かった……(T ^ T)

最後に阿部広太郎さんに謝りたいです。勝手に「ドラえもん」にしちゃってごめんなさい!笑って許してくれると信じております。


結論……「阿部広太郎さんは、ことばの秘密道具を使うドラえもんである」コレどうでしょうか? 広太郎さん、よかったら今度美味いどら焼きがあるので一緒に食べましょう!いや、ホントなんです!(笑)

【おまけのケ】

私は藤子不二雄先生をリスペクトしています。
(「ドラえもん」が私の細胞の中で生きている……)

本作のスタートは「ドラえもん第一話」から始まっているんです。

記念すべきドラえもん(小学館)第一話はこちらのBookLiveから無料購読ができます。
※ぜひ読んでみてください!

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