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実写版『理由』の愛を大林宣彦監督への弔辞に変えて

Photo by Matthew Henry on Unsplash

おはようございます。のえるです。

note書こうと思って開いて、大林宣彦監督の訃報を知って驚きました。
こんな情勢だと貴重な人財の喪失まで埋もれてしまうのか…
怖いなあ

と言っても
監督の作品を余すところなくチェックしている熱烈なファンというわけではありません。
何なら代表作の『時をかける少女』ですら観ていない。
試しにWikipediaを開いて作品一覧を見たけど
ほぼ観たことがなかった。

では何故、大林監督のお名前に反応したか。
一つだけ、強烈に印象に残っている作品を知っていたからです。

宮部みゆきさん原作の『理由』の映像化です。

今回はちょっと真面目に(いつも真面目のつもりだけど)
大林宣彦監督の喪に服して
実写版『理由』の魅力をお伝えしてみようと思います。

※本当は11日に公開するつもりが、内容が濃くなって1日延びました

原作小説『理由』

原作となる小説『理由』は、宮部みゆきさんの長編ミステリーです。
宮部みゆきさんというと有名な作品は多いけど、『模倣犯』あたりを思い出す方が大半かなと思います。

過去記事で全然違うの推してますが。

名著が多い宮部みゆき作品の中では『理由』は知名度が低めかもしれません。テーマが重いし…
でも私の中では上記の記事でもサラッと名前を出しているくらい印象に残る作品だったりします。実は直木賞受賞作です。もっと広まって欲しい。

どんなお話なのかざっくり説明すると、とあるマンションで起きた殺人事件とそれを取り巻く人々を描いた群像劇。
それをルポルタージュ風に書いています。

特筆すべきはその登場人物の多さ。
そして物語の重厚さ。
私は文庫版で読みましたがなかなかに分厚い。

それがリアリティがあって良いんです。
実際、ひとつの事件の関係者を細かく見ていったら、これだけの人が関わってくるんでしょうね。
複雑に入り組んだ事件であるとはいえ。

リアリティを感じさせる要因のひとつが、登場人物たちの作り込みです。
一人ひとりに人生があって、感情があって、人間は多種多様であることを思い出させてくれます。
相容れない思いがあり、悲しいすれ違いがあり、だからこそ一緒にいられることのありがたみを知る。

宮部みゆきさんの作品はどれも単なるミステリーに終わらず、ヒューマンドラマとしても読み応えのあるものばかりですが、『理由』は登場人物が多い分、より評価されて欲しいなあと感じています。

実写版『理由』の魅力

『理由』は2回実写化されています。
1番最初に実写化したのが大林監督です。
2004年にWOWOWでドラマ化したのが最初ですが、その後劇場公開もされたようですね。
調べたら2012年にも他の方が実写化されていました。私は見ていないですが、キャストが福士蒼汰くんとか菅田将暉くんとか結構豪華だな…

しかしながら2012年版には申し訳ないが、大林監督作品には遠く及ばないのではなかろうか(見ていないのにすみません)
多分そちらはそちらで楽しめると思うけども。

大林監督の『理由』の魅力はたくさんあるのですが、大きく3つご紹介します。

1.原作に忠実

小説好きな方はこの気持ちをわかってくださると思う。
小説の実写化って、得てして原作通りにはならないものです。
そりゃあまあ、文章で表現するのは結構幅が広いし、作者の想像力とか知識とか努力で割となんとかなると思う。

しかし実写化は違います。
それも映画となると、表現できる時間も制作費用も制作期間も限られる。
だから、原作通りにいかないのは致し方ない。

でも思ってしまう。
「そこカットしないでほしかった…」

大林監督の『理由』にはそれがないのです。
(人によってはあるかもしれないが)
映像化に際する不自然な改変がなく、登場人物のビジュアルも忠実。
複数の人の思惑が絡み合う殺人事件、というテーマの重さを反映したかのようなダークな雰囲気。情景描写がそのまま飛び出してきたような下町感。

原作小説を読んだ人なら『理由』の世界がそこにある、と思うに違いない。

2.キャストのすごさ

前述したように、『理由』はとにかく登場人物が多いです。
確か名前のない人も含めて100人くらいはいたはず。
実際100人まではいかないかもしれませんが、大林監督はそこにもこだわっています。
キャストを見直してみて気づいたのですが、ちょっとした端役に大物役者さんを配置していたりする。

通りすがりのおばさんに大山のぶ代さんて…(笑)
石橋蓮司さんとかもいらっしゃるんですが割と一瞬である。
しれっと宮崎あおいさんや宝生舞さんもいる。
寺島咲さんは本作がデビュー作だったんですね。

特筆すべきは加瀬亮さんが出ていること。
確かこの作品で初めて加瀬さんを知った気がします。
これが原作のイメージ通りで、すっごく感動したことを覚えています。
宮部みゆき作品特有の若者の危うさみたいなものがにじみ出ている…。

3.耳に残るエンディング

原作本来の重厚なストーリー、つくりこまれた世界観が印象に残る作品ですが、恐ろしいのがエンディングです。

映画の主題歌とかエンドクレジットの曲って、みなさん覚えていますか?
モノによっては覚えていますが、映画の名前を聞いただけで曲を思い出せるのは少ないのではないでしょうか。
映画を見直して、エンドクレジットまで来て「そうそうコレ!」ってのが大半だと思います。

音楽大好きな私でも、映画名を見て曲まで思い出せるのは『理由』と『レレモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』くらいです。
(後者もとってもダークで耳にのこるのである)

どのくらい印象に残るかは、ぜひ一度観ていただきたいなと思います。
歌詞と呼べるかどうかも怪しいくらいシンプルで、かつ作品そのものを端的に表した言葉と音楽は、脳内でエンドレスリピートすること間違いなしです。

エンディングに入る直前の岸部一徳さんの表情とセリフは今でも忘れられないなあ。。

まとめ

実写版『理由』の魅力を語り始めたら尽きなかった。
特に映画に詳しいわけではない私が語れる、数少ない作品のひとつです。
「好きな映画」を聞かれたら真っ先に答えたい作品のひとつでもあるけど、そもそも劇場で観ていないし、これまで「観たことある」という人に会ったことがないくらいマイナーなんだろうなと思って言えていない。

その思いが溢れてとても500字に入りませんでした。

自粛のチャンスに是非観てみてくださいね!
と言いたいところですが内容が重くてダークなので。。
メンタルの強い方、ダークな作品が好きな方、大林監督を知りたい方は観てみることをおすすめします。
私も見直そうかしら。その前に『時をかける少女』かなあ。

最後に、大林宣彦監督のご冥福をお祈りします。
最高の作品をありがとうございました。

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