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ブランド定義からはじめる「ブランドづくり」 #マープス

今日の無料のマーケティング勉強会「マープス」は、「超実践的ブランド構築論」です。教科書のうわべだけのブランド論ではない、本当の実務家によるブランド論です。

本日の講師は、ダイキン一筋35年の片山義丈さんです。

新聞広告をやり、ホームページをやって、「デジタルくわしいんちゃう?」と言われ「デジタル広告」をやられたそう。大企業でありながらも、タレントを使うような潤沢な広告予算がなく、キャラクターを作って、育てたりもしたそう。

(キャラクターには、スキャンダルがないので、今の時代、ありがたいですよね)

「ブランドって何ですか?」と質問しても、その答えは人それぞれ違います。片山さんは、25年間、教科書的な「ブランド論」をやってきたそうですが、それは間違っていたと言います。それは「ブランド」の定義が間違ってたからじゃないか? と考えたところからのスタートです。

今日の講義は、「ブランド」の定義を見直すところから、始まりました。

「ブランド」の定義

まずは、”教科書的な” ブランドの定義を確認しましょう。

アメリカのマーケティング協会の定義:

ブランドとは、ある売り手あるいは売り手の集団の製品およびサービスを識別し、競合他社のものと差別化することを意図した名称、言葉、シンボル、デザイン、あるいはその組み合わせである

(日本マーケティング協会訳)

ブランディングの父、Aaker(アーカー)の定義:

ブランドとは、ある売り手あるいは売り手のグループからの財またはサービスを識別し、競争業者のそれから差別化しようとする特有の(ロゴ,トレードマーク,包装デザインのような)名前かつまたはシンボルである。

(Aaker, 1991, 陶山・中田・小林訳)

「ブランド戦略論」の田中洋先生の定義:

ブランドとは「特定の商品とその表象について消費者がもつ認知システムとしての知識である」(ブランド戦略・ケースブック)

※この「認知システム」が持つ、という部分が理解できるまで、脳内の仕組みにアプローチするということに気づくまで、片山さんでも、3年はかかったそうです。

実務者として片山さんが行きついた「ブランド」の定義:

消費者の頭の中にできた企業・商品に対するイメージ

ブランド=妄想

『(ブランドを)思い出すきっかけになるもの』にふれたときに『頭の中に自然に浮かんだイメージ』こそが、ブランドの正体

消費者の妄想なので、必ずしも、正確な妄想、企業側の都合のいい妄想が消費者に構築されるわけじゃありません。一方、少なくとも、想像されるものなので、知られてないものはブランドとは呼べません。

ブランドを作る「ブランドづくり」とは、「何もしなくても勝手に頭の中のイメージを、企業の意図をもって効率的につくる活動」ということになります。

なぜブランドが必要か?

製品の品質が横並びになってきた現代、「機能」的価値よりも「情緒」的価値が、より評価される時代です。だから、企業は「情緒」的な価値を高めようとします。ここで問題となるのは、ブランド価値を作るために、ブランドスローガンでつくることで終わってしまう(ブランドづくりという手段が目的になってしまっている)ケースが多いということです。

何のために「ブランドづくり」をするか? と問われれば、「企業の事業活動に貢献するため(いわゆる、儲けるため)」です。「ブランドづくり」は、「〇〇なブランド(妄想)を人の頭の中に作ることで、商品・サービスが売れる」ためにあるのです。

どんなブランドを構築するのか?

ブランドを層別に分けてみると、

知らない → 知っている → 嫌いではない → 何となく好き → 約束

となります。

・「知らない」:ブランドではない
・「知っている」:赤ちゃんブランド(知らないよりはマシ)
・「嫌いではない」:凡人ブランド(選択肢に入る)
・「何となく好き」:優秀なブランド(選択時に有利)
・「約束」:絶対選択してもらえる究極のブランド(スーパースターブランド)

ブランドの話をすると、Appleやスタバのようなスーパースターブランドを想像しますが、そこに至るブランドはレアです。そこを目指すべきじゃないと片山さんは言います。実務家として、目指すべきは「知っている」以上のブランドです。知られていなければ「知っている」を目指し、その上で、「嫌いではない」→「いいかも…」 というブランドを目指していきます。

ブランドづくり

消費者と、企業・商品のあらゆる接点から消費者の脳内に構築します。3つのメディア、「オウンドメディア(メーカーのホームページ、企業SNS、カタログ、商品パッケージ)」「アーンドメディア(記事、記事広告、レビューサイト、ソーシャルメディア)」「ペイドメディア(マス広告)」を使って、構築します。

何を消費者の脳内に作るか? と言えば、
①企業・商品・サービスの引き出し
②カテゴリーの引き出し
となります。

ダイキンさんの場合、思い出すきっかけ(CEP:カテゴリーエンドポイント)には、「エアコン」「節電」「換気」「ぴちょんくん」「空気」「温度・湿度」などがあります。そのために、例えば、屋外広告として、銀座などに気温と一緒に、ぴちょんくんの看板を出したりします。天気は調べるけど、温度をわざわざ調べる人は少ないので、街に温度が表示されていれば、かなり注目を集めるという手法です。

また、コロナ禍では、「換気」というワードで調べる人が増えた時、『空気で答えを出す会社』ダイキンさんとして、自社サイト内に「換気」に関するページを作成したそうです。これが「わかりやすい!」「実践的!」と評判を集めることに成功したと言います。

講義内で驚いたのは、エアコンの買い替えサイクルと、消費者の購入判断にかける時間の短さの話です。エアコンの買い替えサイクルは13年、そして、消費者が「暑い」「寒い」といった喫緊の課題を解決するためにエアコンの検討~購入にかける時間は、たったの7日間です。「そのうち客」でいる期間が13年、そして「いますぐ客」になって7日間で、購入が決定されるわけです。消費者に対して、13年をかけて、たった7日間に想起してもらうことがすべてになります。おそろしいですね…

と思いつつも、私が関わるBtoBのサイバーセキュリティの商材も、検討期間は場合によっては数ケ月と長いものがありますが、「そのうち客」である期間は、短いもので1年、長ければ10年はざらです。対岸の火事として、怖がってばかりもいられません。

感想

今までの講義でも似た話を何度も耳にしてきたはずですが(SUUMOさん)、ダイキンさんのエアコンの買い替えサイクルと、「いますぐ客」になってからの購入決断までの時間の短さにすごく驚きました。あらゆる場面で思い出してもらわないと、7日の検討期間で買ってもらえませんよね。でも、ダイキンさんの強みは、それが人々の毎日の生活内にあることです。タッチポイントは多いはずです。それに、今回は、講義の視聴者がイメージしやすいように、一般ユーザー向けの話でしたが、ダイキンさんの強さは、やはり業務用でしょう。ここで、一般とは違うアプローチがありそうです。BtoBの商材を扱う私も、その辺をもっと知りたいと思いました。紹介された片山さんの著書は必読です! 必ず読みます。

今日も、楽しく、刺激的な時間をありがとうございました!

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