レモンバターのソース

油と酸っぱいものは合う。ドレッシングしかり、マヨネーズしかり、レモンタルトしかり。これは私が大学時代に認知科学の研究をしていた際、大学教授から学んだ数少ない有用な学びの一つであった。油は旨味であり、旨味は酸味と合うのだ。とは言え、

A=B
B=C
よって、A=Cである。

といった単純なものではないので、上記の内容が全てに当てはまるという訳ではない。しかし、概念を抽象化することは料理にとっても、かなり応用が利くように思う。レモンバターのソースもその一つだ。

レモンバターのソースは、肉や魚のソテーに添えるソースである。これは私のオリジナルという訳ではなく、フレンチの世界ではブール・ノワゼット(ヘーゼルナッツ色のバター)と言われ、親しまれているソースだ。自分の思いついたことは、大抵他の誰かが思いついているものである。

最低限用意するのは、レモンとバター。
あれば、トマトやニンニク、ケッパー、オリーブなど、香りや酸味の強い野菜をみじん切りにして加えてもいい。

肉や魚に下味をつけ、粉をはたいてソテーしたら早速ソース作りに取り掛かろう。盛り付ける皿も、温めるために電気ケトルなどで湯を沸かしておく。冷たい皿にバターソースを盛ってしまうと、バターが固まり舌触りが悪くなってしまう。

小鍋にバターを三すくいほど落とし、火にかける。わっと泡が出てうっすら茶色くなったら、同量のレモンを絞って加え、みじん切りにした他の材料と絡める。
全体が温まったら完成だ。

ソテーに火を入れ、温めた皿に肉を盛ったらその上にスプーンでソースをかける。
皿の周りにもたらしておくと、大変見栄えが良い。

レモンバターソースは気分によってアレンジすると、その季節ごとに変わった味を楽しめる。バジルやパセリ、セロリを加えたらさわやかに。また、トマトと玉ねぎを少し長めに火入れしたら甘くなり、芳醇なソースになる。(これは牛肉とも合う)
ソテーする素材なら、タラやサーモン、はたまた白子にしてもまた美味い。

私のようなズボラ諸君は、ただ焼いた肉や魚にソースをかけるくらいでちょうど良い。驚くほど簡単で時間もかからないのに、お客にはご馳走だと思わせることができる。

手間のかからない料理でお客を満足させる時のポイントは、盛り付けるお皿の余白をフレンチよろしく、大きく取れる平べったくて大きい皿を用意することである。


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