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普遍的な“エモ”

『テート美術館展 光 - ターナー、印象派から現代へ』で観た、ジョン・ブレット『ドーセットシャーの崖から見るイギリス海峡』という絵があまりに美しくて見惚れた。

天から掛かるいくつかのエンジェル・ラダー(天使の梯子)。
光を受けて輝く水面、海のまだらな碧、蒼、青。
紛れもなく絵画なのだが、光の表現としては写真のごとく完璧だった。
やはり皆惹かれるのか、この絵の前には人だかりが出来ていた。

しかし人は何故、明るい日の(大凡は夏の)海に惹かれるのだろう。晴れた日の碧く輝き揺れる水面に、何故郷愁を煽られるのだろう。
あ、あれもそうだ。久石譲さんの「あの夏へ」や「Summer」。視覚だけでなく、耳から入る夏もまた然りなのかもしれない。
そして世代が違っても、所謂「エモい」と感じるものは変わらない気がする。生まれながらにして根っこにある本能がそう感じるのだろうか。
山の中で生まれ育っても、夏の海を見て「なんかエモ〜〜〜い!」と叫べるのだろうか。

海無し県の群馬に生まれ、夏の海も薄ら曇りのイメージが強い北海道で育った私でさえ「ああ、あの日にかえりたい」と思う郷愁を抱くのだから、無いとは言い切れない、かも。それが本能ならばなんだか恐ろしい。
まるで宇宙人にアブダクションされて、
「オマエハ ウミト アオト ナツノヒカリト ヒサイシジョウノセンリツニ キョウシュウヲ カンジルヨウニナルノダ」
とマイクロチップでも埋め込まれたような統一性。

いつかたくさんの人に声を掛け、「あなたは何に郷愁を感じますか?」とアンケートを取ってまとめてみたいものである。

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