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シェアリングエコノミーの特質と消費行動の変化

 子どものころから、2つ上の兄のお下がりばかり着たり(下着も全部!)、ほぼすべて中古品で暮らしてきた私は中古品にまったく抵抗感がありません。新品と同じ値段ではるかに良いものが買えて幸福、という人でした。良い物を長く使うのが好きなので、修理も大好き。逆に、すぐに売ったり捨てたりするのは大変苦手でした、、いや今でも苦手です。新品ばかりに馴れてる長男長女さんたちは、飽きたらすぐ捨てたり売ったりするのに抵抗ない傾向がありそうですが、実際はどうでしょうか?

 中古を意味する英語は、"second hand" すなわち誰か人手に渡っていたものを譲り受けて使う、というニュアンスです。和製英語では、リユース、リファッション などの新しい婉曲表現も生まれています。海外ではeBayが、個人間取引C2C (Consumer to Consumer取引;C2Cがいずれ誕生するだろうというネット黎明期の慶應SFCの國領二郎先生の驚異の未来予測が的中) のプラットフォーマーの地位を独占しましたが、国内では長いことヤフオクでした。近年、メルカリがこのC2Cの市場を広げ、各種婉曲表現も板についてきたようです。

 下記記事では、1920年代以来使われてきた購買行動のモデルAIDMA (Attention(注目)→ Interest(興味)→ Desire(欲求)→ Memory(記憶)→ Action(行動))が、EC&SNS時代のAISAS (2004年に電通が提唱: D以下がSearch(検索)→ Action(行動)→ Share(共有))を経て、SAUCEになったと、三菱総研さんがメルカリの研究結果に限定しながら主張しています:

Search(検索)
Action(行動)
USE(一時利用)
Share(再販売)
Evaluation(評価)

の頭文字5つを時間順に並べています。これに対し、

「あれ、Attentionがない? いまの消費者は興味関心持たずに買うの?」

「記事にある 高級品志向って本当? いくら高く売れるからといって差額はもっと大きい(マンションは買った翌日に1000万さがるように)のだから、好きでもない高級品買ってお金失うなんてただの馬鹿じゃない? そんな消費者が大多数って決めつけるなんて、酷い "上から目線"! 」

「取引相手への「評価」なんてほとんどオザナリ。実際は不満でも、お互い様なので「大変良い」に1秒でプルダウンして終わりで、真面目に文章書いている人なんて殆どいない。自分の商品への満足や、時には、不良品を叩き売ってせいせいした、という気持ちのほうが大事じゃない?」

 などなどツッコミどころはいくらでもあります。メルカリの仕組み、機能に名前をつけたのに近いならば、消費者や購買行動のモデル化とは程遠い話です。1番目のツッコミどころだけでも、アテンション無し?はなぜ? それが正しいとして、自分評価よりも、他人評価を気にして、リユース価値志向で新品を買うのだから新品の物販が株式市場と同様、美人コンテストみたいになっているということ? リアルショップの売り場をみても、商品の良しあしを実際に使った人のクチコミを熱心に読んで確かめてから買う人が増えているのだから、実態は正反対では? 

 実際、口コミから興味関心が生まれる事態は確実に増えているので、Reputation → Attention となり、AIDMAがRAIDMAになるのが本質では?とも思えます。

新著「AIに勝つ!」第5章では、AIに簡単に置き換わらない、多数の普通の人の現在の仕事の例として、アパレルショップのスタッフの業務を「待機」に始まり「お見送り」で終わる22フェーズに分けて図解しています。図5-5の右側を御覧ください:

今度は左側を見ていただくと、ネットショップでのオンライン購買とは違いますが(ラインに登録とかはされますし買った直後にネットに投稿する人もいますが)、リアルショップに訪れるときの顧客の認知プロセスが8段階に分解されています。自宅のワードローブを連想してコーディネートを考えたり、類似商品、競合商品と比較検討するあたりが、AIDMA, AISASよりも精密化されているといえるでしょう。学問的な裏付けのあるAIDMAの伝統の上に、AIADeCTAS : Attention, Interest, Association, Desire, Comparison, Trust, Action, Satisfaction (, Share / Socialize) ということで、最後のSを2つにした9文字もいいですね。

 皆さんは、どのモデルが科学的(認知心理学的に)正しそうに感じられますでしょうか?

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